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騎士学校の俺と俺だけの姫様  作者: スピキュール
校内大会 騎士姫参上
27/58

特訓

 翌日もフェイト達はアマリリスの部屋を訪れると、昨日と変わらぬ風景が映し出されていた。

 ただただ白き部屋。白というのは元来清浄を意味し、邪を払う意味合いを持つが、これだけ白しか無ければむしろ死後の世界を連想させてしまう。

 部屋の中央にて瞑想しているアマリリスは昨日同様、こちらに気付いた様子はなく、ただただ無心に瞑想を続けている。


 「失礼します、アマリリス先輩。本日は二点、お願いしたいことがありまして訪ねさせて頂きました」


 フェイトが昨日同様に声を掛け、アマリリスがこちらに気付く。

 ただ、今日はゆっくりと普通に歩いてこちらに近づいてきたため、昨日引き起こした事をまだ引きずっているのだろう。


 「フェイト君達か、いや二日続けて私の部屋を訪れる者は久しくいなくてな。それで、どうしたんだ?」


 アマリリスが疑問を投げかけると、フェイトは用件を切り出す。


 「先輩、チーム戦参加の締め切りは今日なので、メンバーとして登録に行っていただかないと、参加すらできません」


 ちょっと困り顔で答える後輩に、アマリリスは正直に答えた。


 「いや、すまない。言い訳にしかならないが、チーム戦に出た事はなくてエントリーの方法が判らなかったんだ」


 まあ、これは予想通りの範疇なのでさして気にすることでもない。


 「そんな訳でお時間を頂いても?」


 「ああ、構わない。して、もう一点とは?」


 フェイトは皆を見て頷き、アマリリスに話してみる。


 「アマリリス先輩、チーム戦までの間だけでいいんです。俺達に稽古をつけていただけないでしょうか?」


 「稽古を?」




 アマリリスが不思議がったのは、何故自分が選ばれたのだろう、という単純な疑問だった。

 普段のトレーニングは教師が毎日考え抜き、各生徒毎に組まれた特別メニューだ。

 放課後の部活こそ個人の自由に訓練出来るが、アマリリスの戦闘スタイルはフェイト達の誰とも被らない。

 実戦にしても、正直な所避けられている自分よりはもっと適正な相手がいるはず。


 「私達は、アマリリス先輩から盗みたいんです。ナイツォブラウンドの頂点に君臨するアマリリス先輩ですから、他のどんな先輩よりも学べる事が多いと思うんです」


 レイは勝ち気に迫るが、アマリリスはイマイチ乗り気ではない。


 「しかしな、レイ君は騎士剣ならばエンドルフィ先輩や、ピア君ならクロ先輩と同じスタイルで格上の先輩がいるだろうに」


 「先輩、確か昨日の朝言って下さいましたよね?出来る範囲でなら見返りを下さるって。それ、この稽古でお願いします」


 「う、ウム?」


 確かに自分はそう言ったが、まさかキチンと覚えて言質を捕られるとは思わなかった。


 「お願いします、俺、アマリリス先輩に言われた意味、考えましたけどまだ掴めていないんです。もしかしたら、先輩と稽古を積む内に見えてくるかもしれないって思って。--だから、お願いします!!」


 ゲイトからも熱烈なコールを受け、どうやら籠絡されかかったようだ。

仮にも昨日アドバイスをしておきながら、ここで放っておくとなれば後味が悪いのだろう。


 「師匠!」


 「師匠!!」


 「師匠!!!」


 ゲイトが言い始め、ピア、レイと悪乗り(?)を始めてしまえば、もう止まらない。


 「わ、分かった。私も何も嫌とは言っていない。……ただ、私は実戦訓練しか教えられないぞ?それでいいのか?」


 「勿論です、宜しくお願いします!!」


 若干困った風な表情を繕えないまま、押し切られたアマリリスだったが、やるとなれば話は別だ。


 「よし、登録が終わったら直ぐに稽古に入ろう。場所はここの二つ隣、403教室で行うぞ」


 「「「「ハイッ!!!」」」」


 気勢の良い、四人の声が綺麗に重なった。





 「えーっと、えーーーーー、アマリリス?本当に良いの?」


 チーム戦申込を受け付けしていたのは、4年生だったらしく、アマリリスは何度も確認の念を押された。


 「ああ、間違いない。私はこの子達とチームを組んで、今度の校内戦に参加する」


 受付は渋々、と言った様子だったがなんとかエントリーは終了した。

 今までアマリリス先輩は、誰に誘われてもチームを組まなかったみたいで、それが噂の新入生と組むのだから、それは色々な勘ぐりが生まれるだろう。


 「さあ、早速稽古だ」


 そんな様子を露知らず宣言するものだから、受付の4年生はもう口をアングリと開けてしまい、明日には全校の噂になりそうだ。



 そんな余談を挟みつつ、403室に移動すると、


 「うっお!?すげえガーデニング」


 室内なのに、岩もヤシの木も、流れる川も橋も、自分より背の高い草原も、そして太陽を思わす強いライトまで完備され、まるで本当に屋外にいるようだ。


 「ここでは実戦的な屋外演習を積める。隣の405は悪天候想定だから、泥や沼でぬかるんでいるぞ」

 

 「あれ?405室ですか?」


 フェイトがふと疑問に思い、口に出してみると、


 「404っていうのは、4という数字が縁起が悪いからよ。一種のゲン担ぎみたいなものね、別に一室本当に空ける訳ではないから、気分の問題よ」


 「へえ」


 博識なレイが答えてくれたので、疑問には納得できた。

 そんな微笑ましい様子を見ながら、アマリリスは補足を出す。


 「ちなみにA館がアルファベットで識別されているのは、欧州のデザイナーが設計したからだ。一方こちらのD館は、後付けの館でな。設計したのが東洋の人だったため、呼び方がA館とD館で異なるんだ」


 「へえ」


 相槌を打つことで精一杯のフェイトだったが、ゲイトもピアも素知らぬ顔で頷いている辺り知らない仲間だろう。


 「さて、話は逸れたがまずは実戦だ。4対1でいいから掛かってきなさい。私はこの場から一切動かないので」


 アマリリスが現在装備しているのは、実戦用のクレイモアでもシールドでもなく、練習用の木刀と木盾だ。

 ちなみに、フェイトはホークルを失って以来また剣無しで登校している。

 ----今週末、校内大会前には愛剣が戻ってくると両親から聞かされているので、それまでの辛抱だ。


 「さ、始めようか。休憩は無し、私に一撃加えるまで時間無制限で、開始!」


 そして、誰も予想だにしなかったスパルタ訓練がここに始まった----





 始めの内こそ、一歩も動かないアマリリス相手になんとかなるだろうと、誰もが踏んでいたのだが。

 ところがどっこい、それでも尚驚異的な強さだったのだ。

 四方向から同時に攻撃を仕掛けようが、アッサリといなし、捌き、弾く。

 時間差で挑もうものならば、確実に盾でガードされた後、剣で打たれるので非常に痛い。

 実戦なら即死は間違いないので、その点では木刀に感謝したいのだが……

 この圧倒的な強さは、ギルバードを容易に連想させる。

 あの時は確か魔法を使ってしまったため、ギルバードは動き結局統制が取れずにアルテマ・ライフを放つという未曽有の大失敗を犯してしまった。

 しかし、始まってから2時間が経つが未だに有効打の一つとして通らないのはどうしてか?

 これは自分たちの技術がどうとかではなく、これこそ自分達が学ばなければならない、実戦においての勘なのだ。

 アマリリスはただ立って待ち構えているようだが、実際獣が爪と牙を研ぎ澄ませて待ち構えていると言っても過言ではない。

 そんな中に飛び込むのだ、罠があって当然だし相手にとって有利な位置でもあるため、本当はもっと警戒しなくてはならなかったのだ。

 ただ闇雲に四人同時に掛かったとしても、アマリリスには予想の範囲内。

 一撃だけでも通すならば、その予想を裏切らなくてはならないのだ。

 考えろ……考えて、なんとかアマリリスの上を行くのだ。


 「--休憩?皆シンキングタイムに入っちゃって……それじゃ練習にならないでしょ?実戦ではそれを動きながら、強いていうならば死との鍔迫り合いの中考えなくてはならない。

 それが判らない甘ちゃんには、少しばかりお仕置きが必要ね」




 ポイッ、とやおら木刀をその場で放り投げると、アマリリスは盾だけとなった身でこちらに突っ込んできた。


 「迅い!?」


 初日に見せた恐るべき体裁き程ではないが、普通にメンバー最速のピアよりも圧倒的に迅い。

 一番近くにいたピアが狙われ、ピアもなんとか反応して双剣を前で交差して衝撃を受け止めようとするが--


 「無駄」


 ピアが持つ愛剣の双剣ですら、ただの木の盾からくる衝撃を受け流せず、大きく後ろに弾き飛ばされる。

 金属の剣よりも、木の盾の方が強い。

 こんな常識を覆すデタラメに出逢うのは、もう何度目だろう?


 「ピア君は、スピードこそいいが、思考瞬発力、反射神経がまだ足りない。短所を補うことも重要だが、自分より格上に挑むのならば、まず長所を伸ばすことだ。長所の方が伸び代が良いし、成長も早い」


 倒れたまま動けないピアに向かいアドバイスを出すと、次の標的を見定めたらしい。


 (来るっ!)


 次に近かったフェイトが標的となり、アマリリスが即座に体裁きだけで肉薄する。

 だが、その迅さはさきのピア用とは違い、初日に見せたものと同じ、瞬間移動にさえ見える程の迅さで迫られた。


 (迅過ぎる!?なんとか回避を--)


 とっさに盾のコースを予測し、回避行動を描き、行動に移すが----

 盾は鈍器として用いられることはなく、ピアの時同様突進のまま跳ね飛ばす装甲車の如き使い方をして、突進された。


 「ぐうぉ!!」


 体裁きだけで回避しようとしミスしたツケか、踏ん張ることも出来ず無様に跳ね飛ばされ、アッサリ気絶してしまう。


 「あれ?気絶しちゃったかな?無理に避けようとするから……誰か後で伝えておいてくれる?フェイト君の弱点は----」


 薄れいく中聞こえたアマリリス先輩の声は、闇に混じる意識の中で聞き取るには遠く、フェイトの意識はそこでプッツリと途切れてしまった。





 「気が付いた?」


 ハッ、と目を覚ますと、そこは白く清潔な部屋。

 自分に掛けられているシーツ等を考えると、保険室か?


 「あれ?稽古は?」


 起きて直ぐ、回りを見渡してみるが、アマリリス先輩の姿は見当たらない。


 「先輩なら帰ったよ。ピアもゲイトも帰した」


 答えてくれるのは、優しい顔のレイ。彼女はフェイトの側にずっといてくれたのだ。


 「帰した?なんで?」


 「なんでってのは、フェイトがずっと気絶してたから、今何時だと思う?」


 「何時って……?」


 練習前に時計を外したので時刻は分からない。室内にも時計はないため、確認のしようがない。


 「正解は、夜中の1時」


 「夜の……1時!?」


 嘘だろうとレイを見つめてみるが、首を横に振られるだけだ。


 「フェイト気絶してずっと目を覚まさないんだもん。私達は気絶しなかったから、その後もずっと稽古だったのよ」


 それはなんとも申し訳なかった。稽古開始が18時、気絶したのがおよそ20時だとして、そこから5時間は三人で稽古だったのだ。


 「実際は22時で切り上げ、2時間気絶してる誰かさんがいたから先輩も心配になって途中で切り上げたの。それで先輩も実家から来ている以上帰らないと、家の人の心配が掛かるからって事で0時には帰ったわ」


 「そうか……」


 皆には悪い事をした。

 そんな落ち込むフェイトを励ますように、ほんのちょっとだけ微笑んで暖かく言葉を掛ける。


 「本当はアマリリス先輩、残ってくれるって言ったの。でも家の人の心配~って言うのは私が説得した台詞。0時まで説得に掛かっちゃったから、先輩もゲイトもピアも帰ったのはつい1時間前の話。それまでは、皆フェイトが起きないって心配してたんだよ?」


 2時間経っても目を覚まさないフェイトを心配して、皆深夜まで残っていてくれたのだ。

 ……2時間放って置かれた事には、言及しないでおこう。特に後遺症もなさそうだし。


 「やっぱり悪かったな、皆を説得してくれたのもレイだし、こうして結局俺が起きるまでずっと側にいてくれたのもレイなんだろ?ありがとう」


 「どういたしまして」


 真摯なお礼に対しても軽く返してのけるレイ。

 誰にも頼られがちなレイでもあるが、殊更フェイトの前では特に気丈に振舞っていたいのだろう。




 「んで、結果は聞いていいのか?」


 稽古の結果が気になったため、レイに聞いてみると、

 

 「結果は一撃ね」


 「すごいじゃないか!!」

 

 あの先輩相手に、人数が減った上で一撃を通したとなれば、著しい進歩だ。

 ……しかし、興奮するフェイトとは裏腹にレイの表情は重い。


 「最後はね、先輩素手だったんだ。木の盾すら放り出して、素手だけで30分近く捌かれたの」


 「……」


 これには、フェイトも沈黙する他無かった。

 今日はフェイト以外誰もが自分の武器、真剣を持ちこんだ上での訓練であったのに、木の盾すら突破できず、最後には慣れていないだろう素手で相手されたのだ。

 ギルバードみたいに素手が本職の相手ならともかく、同じ騎士として武具を纏い戦う騎士相手に、武器を持って相手の無為無手を相手せざるを得ないのは、かなりの屈辱だ。

 そんな悲しそうなレイの表情を見るのは、フェイトも辛く無理にでも気分を転換させる。


 「大丈夫だ、俺達一日あのアマリリス先輩に稽古を付けてもらったんだ。……きっとどんなトレーニングよりも血となり肉となる。明日勝てなくても、もっと学べばいい。

 だって相手は4年生なんだから、最初から勝とうって方が間違ってるんだ、な?」


 フェイトの逃げとも正論とも取れる口上に、レイは乗りたくなった。


 「そう……だね、負けて当然なんだから」


 「そうそう、で、学んだことを見せてやればいい。明日中にでも、先輩の素手を突破して、木盾すら突破したら先輩きっと驚くぜ」


 「そうね、面白そう」


 フェイトの前向きな考えに引っ張られるよう、レイも笑顔を見せ、ついにはバカ話だけで夜を明かしてしまうのだった----



■■■■■■




 「おはよう、調子はどうだ?」


 朝一番に保健室に駆けつけてくれたのは、アマリリス先輩だった。


 「--それでな、あの岩を利用して不意打ちを仕掛けるのは?」


 「石礫の弾丸?ピア辺りにやらせればいいかも」


 「もしくはこれだ、扉の上に黒板消しを仕掛けて先輩がドアを開いた瞬間、落ちて一撃取ったあー!なんて」


 「ならない」


 ビクゥ!!


 保健室で話し込んでいた二人はアマリリスの入室に気付く事無く会話していたため、今噂していた当の本人から声を掛けられれば、それはそれはビックリしただろう。


 「お、おおお、おはようございます!」


 「せ、せせせ、先輩!?」


 「やれやれ、二人で仲良く夜明かしはいいが、今日も稽古は付けるぞ?寝ておかないと後が辛いかもな」


 そして、微笑みながら保健室から出ていくアマリリス。


 ピシャ


 「……」

 

 なんだろう?この感覚?

 ----ああ、いつ以来だったかな?こんな人との触れ合いを見たのは。




 いつからか、アマリリスは孤独となり、孤高を貫かなくてはならなくなった。

 試合で無敗、教師すら時に負かすアマリリスは学校でも持て余され気味で、話相手といえば先生位なものだった。

 クラスメイトにも、自室を与えられた頃から会わなくなり人と会話する事が極端に減った。

 先日クロ先輩と話した事だって、生徒と話したと分類するならばいつ以来だろう、と記憶している。

 私を尊敬している後輩も、崇拝している生徒もありがたいものだ。

 だが、同時に畏怖されていることも自覚している。こうして校内戦等行事の度に、誰かと関わり話をするが、それ以外で部屋を訪れる者は皆無に近い。

 崇拝されているため、会い辛い、それならば我慢出来る。いや、自分から壁を壊しにいける。

 畏怖されているため、会うのが怖い。……それならば、会わない方がいいと思ってしまう。

 


 そして私は毎日、あの白い部屋で同じように座禅を組み、同じように瞑想をする。

 正直なところ、肉体的なトレーニングはあまり必要ではなく、成長しきってしまったためこれからはもう心を鍛え、研ぎ澄ます他訓練がないのだ。

 そんな研鑽とも言える、退屈な毎日だったが今年はクロ先輩が部屋を訪れてくれて、随分と変化した。

 まだまだ見ていて危なっかしい1年生達。

 その中で特に光る原石のフェイト。

 でも、その才は早く一人前の宝石になろうと、粗く削ってしまっている。

 今はもっと大事に磨いて、極力才を削らずに、美しく磨きあげることが大切なのだ。




 昨日は思いの外熱が入ってしまったが、彼は側にいる彼女のおかげで無事のようだ。

 そんな支えを持つフェイトが羨ましいと思う。

 自分は強さを手に入れる事はできたが、パートナーだけは得られることが出来なかった。

 将来私は王に仕えるのか、それとも姫に仕えるの、それとも----

 道は未だ決まっていないが、願うならばパラディンでありたいと願う。

 聖騎士でありたいと願うのが、私の夢なのだから----





 「よし、今日も始めようか」


 昨日と同じ訓練だが、今日は皆の顔向きが違う。

 皆いいように研ぎ澄まされ、気迫が伝わる。……昨日とは心構えからまず違うという事か。


 「面白い」

 

 まずは昨日最低ラインまで下げた素手から開始する事にする。

 すると----


 「はぁっ!!!」


 裂昂の気迫と共に振り抜かれる一閃は、昨日には感じなかった迅さと煌きがある。


 私はフェイトの木刀は何とか左手だけで対処すると、次は右方向からレイの騎士剣が迫る。


 「ふっ!」


 勢いこそあるが、踏み込みが浅い。


 昨日だけ見る限り、レイにしては珍しい間合いだし、ミスだ。


 ……いや、違う。レイはこんなミスはしない。--ならば


 「やぁっ!!」


 ガガガガガ


 背後から迫りくる音は、恐らく岩を削って打ち出した石礫。

 そういえば今朝そんな事を言っていた気がする。

 ----そうなれば、正体はピアか。そもそも残っているゲイトのランスではこんな真似は出来ない。

 とはいえ、石礫ともなれば素手で防ぐのは困難。一撃も受けたくないのならば、


 「はっ!!」


 生命エネルギーである、<ロア>を一瞬だけ解放し身を包む。

 これにより、石礫は<ロア>により放出されたエネルギー壁を突破しきれずにそこで止まる。

 だが、尚食い下がるのがゲイト。

 ピアの援護により必中を期待していたランスが、私に迫るが石礫を手を使わず捌いた事によりフェイトを捌いた左手が動く。

 そしてランスを捌いて、此度の攻防も一段落……

 そう、油断してしまった。

 さっき私が思ったのは、妙に浅い踏み込みのレイ。

 もしそれが、左右から挟撃するためにわざと離脱を早くする策だったら?



 そう思った直後に訪れたのは、剣の投擲だった。

 フェイトとレイ、左右同時の投擲により一歩も動かないハンデを背負った私は途端に不利となる。

 今ゲイトに使った左手はまだ抜けない。となると右手だけで捌かなくてはならないが、捌くなら真剣のレイの騎士剣だ。

 そこまで考え終えると、アマリリスは観念して右手でレイの騎士剣を払い落し、左腕に木刀の一撃をもらった。




 「そこまで、参ったね。昨日は30分掛かったのに、今日は1分足らずか、この成長にはさすがの私も舌を巻くな」


 教え子が自分の技術を吸い、学んでくれる嬉しさはまた格別だと、この時アマリリスは思った。

 たった一日だが、この子達は頭を使い私を出し抜く算段を企て、実際にやってのけた。


 「素手じゃ勝てないわね、盾追加で行くわよ」


 そして仕切り直して、直後----

 四人が一斉に盾を構える左手に集中してきたのだ。


 (左方向に四人、捌きやすくていいけれど、先の今。----狙いは何?)


 先陣のピア、ゲイト、レイが立て続けに攻撃を繰り出すが、規則性は見出せない。

 次に仕掛けれくるフェイトは何を狙うか----

 そしてアマリリスは、この学校に入って始めて驚くこととなる。



 フェイトの繰り出した一閃は、木製の剣と木製の盾、どちらもが砕けるという事実上年下にアマリリスの鉄壁を誇った防御が突破された瞬間だった----

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