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騎士学校の俺と俺だけの姫様  作者: スピキュール
校内大会 騎士姫参上
26/58

騎士姫の実力

 「え、えと、はい。俺がフェイトです」


 突如の来訪に心底驚いてしまったが、あまり待たせても失礼になるためフェイトは早々に意識を戻して反応した。


 「そう、君がフェイト君ね。ちょっと話があるから廊下に出てもらっていいかな?」


 騎士姫相手に呼び出しをされるなんて聞いてないぞ。フェイトは来訪客のアマリリスが何の用で来たのか皆目見当が付かず、正直言うと困っていた。


 呼び出しの内容が良いものであってくれればいい、とはあくまでフェイトの願望であって現実はそう甘くはないだろう。


 少々ビクビクしながら廊下に出ると、アマリリス先輩に見咎められた。




 「ああ、すまないな。驚かせてしまったようだな。確かに下級生が上級生から呼び出しを受ける等気分の良いものではないだろう、申し訳ない」


 いきなりこちらの心情を察せられて、しまいには謝られては男子としても騎士としても立つ瀬がない。


 「い、いえいえ。俺が戸惑ったのが悪いんですからアマリリス先輩は気にしないで下さい。っとと、それで御用件の程はいかが致しましたか?」


 フェイトとしては、目上を敬うのは当然だったが、アマリリスはそれが気に入らなかったらしい。


 「そんなに委縮しないでくれ、敬語はなしで結構だ」


 片手で制されてしまったので、ならばと思い敬語は抜きにする。


 「ではアマリリス先輩。して用件の程は?」


 アマリリスがコクンと頷くと、用件を切り出す。


 「実は私とチームを組み、チーム戦に出て欲しいと思ってな」


 朝の来訪もビックリだったが、この提案も同じくらいビックリだ。


 騎士姫といえばチームを今まで組んだことがなく、更には個人戦も圧勝。


 とてもじゃないが、1年生のひよっこ、しかも初対面を誘う人柄にも見えない。


 「……理由を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 「敬語が抜けきっていないな……、まあいい。実際の所フェイト君とは初対面であるし、チームを組む理由は私の方には見つからない、ここまでは共通の見解でいいかな?」


 「?」


 しかしフェイトはクエスチョンマークが頭に浮かんでしまう。


 理由がアマリリス先輩にもないなら尚更何故自分。


 「順を追って説明する。実はクロ先輩という双剣部の5年生がいらっしゃるんだが、先輩とは去年も校内大会で当たった仲でな。先輩が今年卒業ということで、その前になんとしてでも手合わせしたいとの事で、先日私の元を訪れられたのだ。その際話題に昇ったのが、……フェイト君、キミだ」




 実際の所フェイトは入学早々から目立ち過ぎていたため、こうして上級生からマークされることは想定の範囲内ではあった。


 最も、校内最強の布陣を謳われる二人にマークされているとは思わなかったが。


 この間のギルバード先生との対決も影響の内かな?


 そんな事を考えつつも、アマリリス先輩の話を聞く。


 「個人戦においても、チーム戦においても君の存在はハッキリ言ってイレギュラーだ。全く展開が読めない。もし私かクロ先輩どちらかが君に負けてしまえばクロ先輩から御所望頂いた、再戦が叶わないことになってしまう。

 そこで、だ。君が個人戦で勝ち上がる事は想定で、負ける事も計算には入れよう。だが、チーム戦で私と君が組めば確実にクロ先輩とは対戦出来る。……つまりはそういう話しだ」




 長い説明を経てようやくフェイトにも理解できた。


 個人戦でどちらかの先輩が負けてしまう事は、個人戦である以上フェイトを咎める事は筋違いである。


 ただ、チーム戦であれば、アマリリスとフェイトが組むことにより、どこでクロ先輩と当たるか分からないが、恐らくどちらのチームも負け知らずなので最遅でも決勝で会えるだろう。


 そうなれば、クロ先輩とアマリリス先輩は邪魔抜きで決闘出来るのだ。


 「すまないな、君の事情も鑑みずに。ただ、見返りが必要ならばいくらでも出すつもりだ。ある程度無茶な願いでも構わない」


 おや?いつの間にか物凄い破格の待遇になってきたぞ?


 「それに君が先にチームを組んでいて、どうしても無理というならば、勿論無理強いはしない。あくまで君と私は対等な立場での提案として見て、考えてほしい。どうだろう?時間が必要ならば改めて出直すが」


 少々思案に耽りたい所だが、先輩の時間を奪う訳にもいかず、


 「すみません、改めてお返事の方をさせていただきたいのです。チームの仲間もおりますので、まず彼らの相談した後に、改めて俺の方から先輩へお返事に参ります」


 妥当な提案でさり気なく矛先を逸らすフェイトに、アマリリスは苦笑で答える。


 「そうか、失礼、邪魔をしたな。--では今日でも明日でも構わない、私のトレーニングルームに来てくれ。場所はD館4階、401だ。では、またな」


 颯爽と去り際も弁えるアマリリス先輩は、とても大人びて見え、憧れの騎士としてフェイトの瞳に映る事となる。





 「で、さっきのアマリリス先輩の話はなんだよ?」


 教室に戻るや否や、クラス中から取り囲まれるが質問するのは友達であるゲイトやピアが、優先権を行使する。


 「ああ、チーム戦でチームを組まないか、との話だった」


 「ハッ??」


 圧倒的沈黙に教室中が包まれてしまったため、嘆息した息を何とか飲み込み話しを続けることにする。


 「アマリリス先輩はクロ先輩と校内戦で対決したいらしい。そのためには俺がイレギュラーらしくてな。だから俺とチームを組めばどんなに遅くとも、決勝でクロ先輩と戦える舞台が整うってことだ」


 あー、とようやく得心するクラスメイト達。


 「フェイト、でもそれってさ、アマリリス先輩からの提案なのかな?」


 何故かそんな質問を発するのはピアだった。



 「ん?なんで?」

 

 「ん~なんでっていうか、アマリリス先輩ってそういう裏で糸引く感じに見えないからさ。それにクロ先輩に所望されたって言ったでしょ?でもクロ先輩もそういうの考えるタイプじゃないからさ」


 ピアが言いたい事は分かる。確かにアマリリス先輩も自分で考えた提案、というよりは伝え聞いた事をこちらに聞かせた感がある。


 ただ、それはクロ先輩である可能性が非常に高いが、部活でクロ先輩をよく知るピアが違うというのならばそれも違うのかもしれない。


 「まあ、実際誰が考えたかってのはどうでもいいかもだけど、なんとなしにマキ先輩辺りが考えていそうだな、って」


 「マキ先輩?」


 クロ先輩と双璧を為す双剣使いで、クロ先輩のチームメイトだ。


 「ほら、マキ先輩ってクロ先輩と親友だし、もしかしたら決闘したがっているのを知って、こうやって作戦を立てたのかも」


 「うーん」


 そうである可能性も指摘は出来るが、実際の所この作戦に乗った所で誰もデメリットは無い気がする。


 いや、当たらないはずのチーム戦でアマリリス先輩と当たったチームはデメリットしかないけど。


 そんな思考を纏める時間もなく、教室には主たる筋肉質の厳めしい中年男性であるギルバードが入室する。


 「ほら、なんのイベントか知らんが皆席に着け。本日の連絡事項は先週も言った通りチーム戦の申し込みだ、明後日までだから登録するなら早めにな」


 以上だ、と、簡素なHRが終わり皆それぞれの訓練のため散り散りになる。


 「……しゃあない、ゲイト、ピア、放課後会おう」


 「了解っと」


 「それじゃ姉さんに宜しくね」


 喧騒な朝もこうして終わり、フェイト達は訓練へと向かった。





 「アマリリス先輩が?…………ふーん、へぇ、なるほどね。面白そうじゃない」


 レイともすぐに合流し、同じトレーニングメニューをこなしつつも朝に遭った出来事の顛末を話す。


 「そういうこと、ゲイトとピアにはどうするか考えてもらってる最中だけど、今日の放課後には纏めておきたいんだ。--それでレイはどうかなって?」


 伺うよう隣を覗き込むフェイトに、レイは呆れ顔で返す。


 「いいも何も……フェイト、あんた騎士姫とも知り合いになりたいって言ってたじゃない。私達は放っておいて決めても良かったのに」


 嘆息混じりに返す言葉には、棘よりもひたすらに呆れしか混じっていない。


 「でもチームメイトだろ?」


 納得出来ないので食い下がるが、レイは憐れむような目でこちらを射る。


 「断ったらあんたが目茶苦茶凹むでしょうが!!目に見えて捨てられた犬みたいに落ち込むのが分かるの!ゲイトもピアもそれが分かるから、まず断らないわよ……」


 そう、実際聞いているのは最早形式だけというか、ポーズに等しい事をフェイトをよく知るこの三人は理解している。


 断ったらフェイトの落ち込みは、下手したら登校拒否にまで陥るかもしれない。



 どれだけ姫好きなのか…………




 そんな怨年が籠ったせいか、視線にやおら冷ややかなものを感じると、形勢不利とみたかフェイトは目を逸らす。


 「い、いやあ、でも本当に嫌なら俺も断るし----」


 「じゃ、断って。私今のメンバーで出たいから」


 驚く程早くこちらに振り返り、目をウルウルさせながら子犬のように見捨てないで、と懇願する瞳に、やはりレイはため息しか出なかった。


 「ほらね……、嘘よ嘘。実際アマリリス先輩が傍にいるなら盗めるものは星の数ほどあるでしょうし、私達の成長にも良いわ」


 「本当?」


 何故かまだ涙目なフェイトに、思わずウッと不覚ながらトキメいてしまうレイ。


 こう、子犬のような瞳は母性本能をくすぐるのだ。恋愛ではなくとも、女性として守りたくなってしまう。


 「本当、本当、放課後皆で行ってアマリリス先輩を迎えましょ」


 「やったあー!!」


 無邪気に喜ぶフェイトに、ハァッ、とため息が出るレイ。


 フェイトに甘いのは、自分の欠点かもしれない。


 まだフェイトを見つめる瞳が恋だと知らないレイは、フェイトの潤んだ瞳や、無邪気に喜ぶ姿を一人占め出来た喜びに、ぼんやりとしか気付いていなかった----





 放課後、待ち合わせた校門にてゲイトとピアについてアマリリス先輩をチームに迎え入れるか質問すると、即答だった。


 「「断っても、フェイトが無理やり入れるだろ(でしょ)」」


 すべもなく言い切られてしまい、奇しくもレイの予言は成就した。


 とはいえ、これでメンバー全員の了解が得られたため早速アマリリス先輩のトレーニングルームへと報告にいく。


 「D館4階って言ってたな」


 校舎はA~Dまでの4つとホール、校庭、体育館、仮眠所、その他部室毎の練習場といった具合に分かれているのだが、校舎はA~D毎に役割が違う。


 A館は普段HRに使われる教室であり、校長室、職員室等もここにある。


 B館は筋力や体力といった面を伸ばすための施設館である。


 C館は技術や反射神経等を伸ばす、色々な道具が置いてある施設館である。


 そしてD館は、実践演習を積むためだけの施設である。


 機械人形や、先生方等がこの館を使って生徒を鍛えるのである。



 しかし、自室のトレーニングルームがD館にあるということは、その他の施設はアマリリス先輩に取って殆ど用が無いものなのだろう。


 ……先生しか相手が出来ない、それが生徒としてどれだけ並はずれているのかを改めて確認出来る。

 

 あの学年最強の一角である、クロ先輩すら寄せ付けない強さ。--それをもうすぐ知れるのだ。


 「ごめん下さい」


 そして、規則正しいノックと同時に声を掛け、フェイトはアマリリス先輩のトレーニングルームに入った。



■■■■■■




 そこは----


 何もない、ただ白だけが広がる世界で、まるでここだけが世界が見捨てられたのではないかと錯覚してしまった。


 ものは一つもなく、足跡すら残っていない静謐な白き棺桶。……そう例えられてもおかしくない、異質な部屋だった。


 その中央に座禅を組み、瞑想に耽っている緋色髪の女性こそ、この部屋の主たるアマリリス先輩だった。


 しかし、これだけの広い白しかない空間に、燃えるように映える緋色の髪の女性が鎮座していると、まるで捉えられた姫のようだ。


 様々な感想を想いに抱きながら、改めて部屋の中央に鎮座するアマリリス先輩に声をかける。


 「瞑想中の所申し訳ありません、今朝お会いしたフェイト・セーブです。アマリリス先輩、今朝のお返事に参りました」


 しばらくすると、声が届いたのか部屋の中央に佇むアマリリスは立ち上がり、こちらを見る。


 そして、一瞬緋色の存在がブレかのように見えると、すぐ目の前に緋色の流麗な髪筋がなびくよう揺れる。


 ……えっ?




 「!?」


 余りの事に驚き、フェイトは距離を空けるため後方へと素早くバックステップ。


 そして危機意識が告げるままに自己加速魔法と、牽制の炎の魔法を組みあげ同時にこの世に顕現させる----


 「!?しまった!!」


 自己加速魔法はともかく、余りに驚いたせいで炎の魔法まで放ってしまった。


 大きさは--まずい!一番後ろにいたピアに当たってしまう!!


 自分の硬直もあったはずだが、無視出来るよう頭の命令神経を駆使して反射を抑え込む。


 そして自ら放った火を自分で掴み取ろうと前へ、跳ぼうとした瞬間、


 炎は白い陶器のような手で払われ、幽鬼のようこちらに実体が見えないまま近づくソレに----



 ポンッ



 と頭を撫でられた。




 「……??えっ?」


 フェイトはようやく冷静になってきた頭で、今回の事全てを理解出来た。


 実際の所、全部がフェイトの暴走だったのだ。


 部屋の中央にいたアマリリスは、こちらを待たせないよう20m近い距離を一瞬で寄ってくれたのだが、それに過剰反応を示したフェイトが魔法を暴発。

 

 それを見て反応したアマリリスが、ピアに当たりそうな炎を察知したため素手で薙ぎ消し、そのままフェイトを抑えつけるため頭と体を抱きしめるよう抱えこんだのだ。



 抱きしめられたと気付いたのは、頭に乗せられた手が一番最初で驚いただけで、その後手と体が動かないよう固定するために直ぐ抱きしめたのだ。


 「あ、あの……すみませんでした!!先輩に対してなんて事を……」


 しかし、驚いたとはここまで過剰反応してしまったのはフェイトのミスだ。


 何たる非礼をしてしまったのだろう。もう死んで詫びたい位だ。


 そんなフェイトの言葉に、理性が戻ったのが分かるや否や、アマリリスはフェイトから体を離しこちらを覗きこむように瞳を近づける。



 --なんだろう?このブラウンの瞳、とても優しくて、見ているだけで安心できる。



 まるで大地そのものに抱かれているような浮遊感、そんな夢心地はアマリリスの言葉で現実に引き戻される。


 「ごめんね、驚かせるつもりはなかったんだけど、君は想像以上に実戦慣れしているんだね。……私だって1年生の時はそうだったから」


 ----??なんだろう、一瞬母なる大地の様な瞳に、天の嘆きの雫が零れたよう揺れたが、切り替わりが速すぎて気のせいだった気がする。


 「よしよし」


 そうして何故か子供のように頭を撫でられる。


 ……あ、なんか気持ちいい。


 この先輩の前では、なんだか自分も子供に返ったように思えてしまう。




 ----って!今は友達と来てるんだった!!まずピアに謝らなきゃ!


 「っとと、先輩すみません、ピア、ごめん、大丈夫だった?」


 撫でられるのを止めてもらうと、ピアに駆け寄り無事を確認し謝罪する。


 「えっ……あ、う、うん。……フェイト?今何があったの?」


 はぐらかせる場面でもないので、フェイトは正直に言う事にした。




 「……そうだったの、私は……正直後ろで魔法が放たれた場面を見てないからなんとも言えないけど、無事だしいいよ、謝らなくも」


 「ほんっとごめん!!」


 フェイトがひたすらにピアに謝っているが、この三人は説明されてようやく事情が呑み込めたのだ。


 「ごめんね、驚かせるつもりじゃなかったんだけど、フェイト君が想像以上に強かったみたいで、変に刺激しちゃったの」


 アマリリスも一緒に謝ってくれるものだから、むしろ三人は委縮するばかりだった。


 ……ようやく、皆が落ち着いた所で話が戻る。


 「それにしてもフェイト君本当にすごいね、1年生所か同学年でもさっきの動きに硬直せず動ける人は少ないのに」


 言外に反応できなかったピア達への慰めが入っていることに、皆気付いてはいるがどうにも言葉通りに受け取れない。


 同学年のフェイトは、きっちり反応しているのだ。


 「でも俺は暴走しちゃったんだ、ピアに当たるのが判らずに魔法を撃つなんて、初歩中の初歩を守れてないんだから」


 「私は褒めてるんだから卑屈にならないの」


 そう言われて、この話題も終わりだ、ということが雰囲気で分かる。


 ……しかし、初級魔法とはいえフェイトの魔力で編まれた炎を素手で霧散させ、自己加速魔法を掛けたフェイトに知覚させるよりも早く抱きしめる、という離れ業を見せたアマリリスのレベルは、桁違いだった。





 「まあまあそれはそれとして、フェイト君達が来たってことは今朝の返事でしょ?どう?」


 興味半分、にこちらに問い掛けるアマリリスを前にやはりこの提案が、アマリリスのものでないことを悟る。


 とはいえ、返事に変わりはない。


 「ええ、仲間とも相談した結果アマリリス先輩は是非チームに入って欲しいとの事でしたので、その御報告に」


 「ううんと、君のチームはこの四人でいいのかな?なら私が入って丁度五人だね」


 そう、丁度規定人数の五人であるため調整いらずで加えることが出来たのは幸いだった。


 「それじゃ宜しくね、フェイト君。それと皆さん」


 そう呼ばれ、今まで名乗っていないことを思い出した三人は口早に自己紹介をする。


 「失礼致しました!私はレイ・ハルト、騎士剣使いです」


 「同じくピア・ハルトです。レイとは姉妹で、私は双剣使いです」


 「私はゲイト・ユン。ランス使いでございます」


 「あはは、そんなに固くならなくていいよ。私はアマリリス・ノア・ルーンハイツ。クレイモアと、盾を組み合わせた剣士だね、よろしく」


 どうにか、自己紹介も終わりこれでチームとしてやっていけそうだ。




 「それじゃあ今日はチーム戦について考えよっか?何か考えや意見があったらどうぞ」


 「では、陣形について。特攻を得意とするピアが前衛、中盤の守りを固める中衛がアマリリス先輩とゲイト、後衛については俺とレイが受け持つ1-2-2を提案します」


 「ふむふむ、よく練られた陣形だね。見た所これなら相性よく動けそう、ゲイト君は防御向きって解釈でいいのかな?」


 「はい、未だ技術面ではフェイト達の足元にも及ばないため、ランスを用いて壁として--」


 「ダメ」



 ゲイトの言葉途中で強制的に切るアマリリス。……?何がダメなのだろうか?



 「何がダメなのかは宿題。--ただパラディンを目指している私から言わせてもらえば、ゲイト君は考えを改めない限りどんな騎士にもなれない」




 これには誰もが言葉を飲み、緊張に包まれた。


 未だ15歳、これからの成長幅もあるがまだまだ未来を望める年齢でもあるゲイトに対して放たれた言葉は、全ての否定だった。


 「意地悪で言ってるわけじゃないよ、ゲイト君のためを思って言ってるの。……考えてくれると、嬉しい」


 「…………肝に銘じておきます」


 しかし、ゲイトは見るからにショックを隠せていなさそうだ。


 とはいえ宿題、とも言われているのだから本当におせっかいでも意地悪でもなく、純粋なアドバイスなのだろう。


 それが分かるからこそ、誰も何も言わない。


 「ごめんね、ちょっと空気を悪くしちゃったかな。……今日はこれで解散しようか、これが私の連絡先、代表のフェイト君に渡しておくから君が皆に伝えておいてね」


 パンっと軽く手を鳴らし、切り上げると再び部屋の中央へと戻るアマリリス。


 それを合図にフェイト達は退席を余儀なくされた。


 ----一体この底が知れない実力者は、本当に味方として見てもいいのだろうか?



 そんな累積する不安を胸に、週明け初日の学校は暮れていく----

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