送別会<con sentimento>
「ここがフェイトの家なんだ」
もう日も暮れる頃合いの中、フェイトはディーバを自宅へとエスコートしていた。
「姫には少々むさ苦しい場所かもしれませんが、何卒ご容赦の程を」
仰々しく頭が下げつつも、嫌みを感じさせないその響きはディーバにも心地よいものであった。
「別にいいわよ、私だってそんな貴賓で招かれたくはないし」
「左様でございますか。……それではお待たせ致しました、これより歌姫ディーバの送別会の会場へとご案内させていただきます」
家のドアを開き、ディーバを招き入れるとディーバもそれに倣って室内へと足を踏み入れる。
と
「「「「「ディーバ!退院&復帰おめでとう!!」」」」」」
パン!パパン!!
家で待っていた全ての人から盛大なクラッカーの祝砲により迎えられた。
「主役がいなきゃ始まらないんだから、ホラさっさと入った入った」
レイが明るく招きいれるが、それは友達としてのものだ。
さっきまで玄関で騎士とお姫様ごっこをしていた気分から、一転して非常に友好的だ。
「さ、姉さんの言うとおり、今日は新しい顔ぶれもいるんだからその紹介もしたいの。だから早く早く」
ピアがディーバの手を取ると、ディーバは後ろのフェイトを振り返りつつもなすがままに引っ張られて行った。
「さ、ディーバ。俺達からの祝福だよ」
フェイトもその祝福の輪に加わるべく、パーティー会場となった我が家へ足を踏み入れた。
「それじゃまずはグラスを持って、ノンアルコールのシャンパンだから大丈夫」
レイが手際よくその場にいる全員に飲み物の入ったグラスを配ると、視線でこちらに手番をくれた。
「あー、それじゃこれより、ディーバの退院おめでとうと、ディーバのこれからの活躍を祈っての送別会を始めたいと思います。……みんなグラスは行きわたってるな?--それじゃ、ディーバの幸せを願って、乾杯!!」
「「「「「「乾杯!!!!」」」」」」
皆を見渡して、そしてこちらを見つめた後ディーバも大きな声で応えた。
「乾杯っ!!」
テーブルの上を見てみると、ピザにパスタに唐揚げにポテト、それに口直しのシーザーサラダと生ハムとトマトのサラダ、果てはカボチャのポタージュまで用意されており、どれも量も十分に美味しそうに盛り付けられている。
そして、何故か違和感を放つケバブが一品。
ゲイトにリクエストしておいて、作ってもらったのだ。
最初から好きだったのかは分からないが、フェイトが初めてディーバに御馳走した思い出の一品であるため、絶対に外したくなかったのだ。
これだけの料理を1人で用意したゲイトの苦労はカナリのものだろうが、しかし料理を引き受けてくれて助かった。
今日の主役であるディーバはお誕生日席の上座に座り、その隣にフェイト、フェイトの正面にレイ。
レイの隣にはピア、リードと続き、フェイトの隣にはゲイト、アイリスだ。
決して狭くはない広間だが、7人も人がいれば手狭に感じてしまう程だ。
実際テーブルの端にある料理は、近い人に頼まないと届かない。
「ディーバ?何か欲しいものある?」
「それじゃ、生ハムとトマトと、ピザとポテトを頂戴」
「了解、アイリス、ポテトを取ってくれ。んでピザがこれで、ケバブもな」
「フェイト?ディーバはまだケバブを頼んでないわよ……ハイ、生ハムとトマトね」
「ありがと、レイ。ホントフェイトはお子様なんだから」
「なんだよー?なんだかんだ言ってケバブ取るなら今取ってもいいじゃないかー?」
「ふふっ、そうね。じゃあそのまま頂戴、フェイト」
「はいよっと、お待ちどうさま」
一応騎士としてのエスコートは外で二人きりの時だけにすることにした。
今は友達としてディーバに接した方が楽しいと思うし、他の皆にも今日だけの我がままということは内緒にしたいからだ。
「そうそう、初めに紹介したいんだけど、席の端っこに座っているあの金の髪の子がリード。あの時ディーバを助けるのに協力してくれて、リードの助けが無かったら本当に危なかった」
「そうなの?なんでフェイトはそんな大事な事を今まで言わないのよ……初めまして、私はディーバと申します。リードさんですね?私を助けるために協力してくれたとかで、本当にありがとうございました」
丁寧に頭を下げるディーバを特に意に介することなく、パスタをフォークに巻き付けながらリードが答える。
「リード・ロードです。気にしない、で。あなたのこと、嫌いじゃ、ない、し。後、リードで、構わない」
そしてまた黙々と、いやもしゃもしゃと食べ始めた。
そんな対応に、少し困った顔のディーバだったが何とか言葉を考えついて返す。
「よろしくね、リード」
まだ人を知っていくことを始めたばかりのディーバには、難易度の高いコミュニケーションだったかもしれない。
「まったく……それで反対側、こっちの鳶色の髪のが妹のアイリス。特に面識はないだろうけど、今日我が家を使うってことで同席させることにした。」
「あ、あの!は、初めまし、て!!えっと、えっと、あの……」
「落ち着いて、そんなに緊張しないで。私は「フェイト達の友達」のディーバなんだから」
朗らかに笑い、相手の緊張を解そうと気遣うディーバ。
--本当にいい方向に変化してくれた。なんだか感激で涙が出そうになるが、なんとか堪える。
「は、ハイッ!あ、アイリス・セーブです。い、以後、お見知りおきゃわょお!?」
結局緊張自体は解れず、最後なんか噛み過ぎて何を言っているのか分からなくなったが、どうにか自己紹介は済ませられたようだ。
「ほら、アイリスさんも、こっちのサラダとピザはどう?」
「はいっ!いただきままま、!?」
こんなに緊張したままなんて……少し可哀想になるが、まぁディーバが大人の対応をしてくれているから問題はないだろう。
初対面同士も、なんだかんだで打ち解けられそうな雰囲気だ。
「それで?ディーバは明日飛行機で発っちゃうんだっけ?」
レイが確認のためにディーバに質問している。
「そう、ごめんね。もっと長くいれれば良かったけれど、戻ると決めたなら早く戻った方がいいと思って」
「ディーバ行っちゃうんだね、寂しくなるよ」
ピアも切なそうな視線をディーバに送る。
「大丈夫だ、ディーバに会えなくなる訳じゃないんだろ?な、ディーバ?」
ゲイトがピアを慰めるようディーバに問いを繋げる。
「勿論、皆のこと忘れない。公演にも遊びに来て、皆なら名前を出せば楽屋まできてもらっても全然構わないから」
ニッコリと微笑み弱さを見せないディーバに、ピアも表情を戻す。
「絶対だよ?私行くからね」
「それじゃ私も行くわ」
「俺もだ!」
「わ、私もです!」
「……気が向いたら」
そんな皆の励ましや、友情の誓いは何よりも尊く、大切な絆であった。
きっと、ディーバも、俺達皆もこれから先にとても大切な宝物として心にあり続けるのだろう。
「フェイトは?」
ディーバから、意地悪げに問いかけられる。--そんなの、聞かれなくても分かってるくせに。
「勿論、行くさ。地球の反対側でも、地の果てでも」
「ありがと」
まるで恋人同士の約束のように甘い約束だったが、きっとディーバはそんな言葉が欲しかったのだろう。
その瞳にとても安心した表情が見えたので、フェイトも安心できた。
「まったく、ディーバ?」
ふと、レイがディーバの耳元で何かを囁いている。
「いいの?ディーバ、フェイトのこと好きなんでしょ?」
レイの鋭い指摘にディーバは思わず椅子から数cm飛びあがってしまう。
「な、なんでそれを!?」
ディーバは赤くなりながらも声を抑え、レイと秘密の相談をしている。
「見てれば分かるの、……それで、いいの?本当に?」
レイとしては好奇心で聞いているのではない。もしそれが単なる逃げであるのならば、良くはないと思い聞いているのだが、
「良くないけど、……いいの。フェイト、私が隣にいたらきっと苦しんじゃうから」
それはレイが指摘したかった逃げだった。
どれだけ明るく、気丈に振舞ってはいても、ディーバも傷付いているのだ。
「フェイトはきっとそんなに弱くはない、いつか--」
「ううん、フェイトは守れなかった責任をずっと、忘れない。これは心の問題なの、私じゃ彼の枷になってしまうから。--だから、フェイトの隣にいる人にはそんな枷を持たない人に居て欲しい。……レイは立候補しないの?」
「!!?」
ディーバからのまさかの切り返しにより、今度は赤面する手番が変わってしまった。
「レイ、なんだかんだでフェイトの事を凄くよく見ているよね?レイこそ本当は私が遠くに行けば恋敵が減るんじゃなくって?」
「い、いや、私は別にフェイトのことなんか……」
顔を赤くしながらも、視線が下に、床に吸い寄せられるように意識が思考の虚空に彷徨い始めてしまったレイに、ディーバはフォローに入る。
「あ、あれ?レイそんなに悩まなくても……ま、まあいいか。頑張って」
女子同士の密談が終わり、不審そうにずっと見つめていたフェイトは、先に顔を上げたディーバに質問することにした。
「ディーバ?何を話していたんだ?」
そんな無粋な問いかけは、当然の如く、
「無粋だよ?フェイト?」
氷柱のような視線とともに、一蹴された。
■■■■■■
送別会も中盤に差し掛かり、ここで復帰したレイから宣言があった。
「えーでは、ここでこれより歌姫として舞台に舞い戻るディーバに対して、私達から贈り物があります」
そういうと同時に、ピアが部屋の隅においてあった袋を取りに向かう。
……?なんだろう。結局教えてもらえなかったけれど?
ピアが袋を持ってきて、準備万端、というばかりにレイにアイコンタクトを送ると、
「じゃあ、どうぞ!」
ピアからディーバに袋が手渡された。
「開けてみて?」
ピアが先を急かすよう、それでいてディーバが喜んでくれるよう、祈りをこめた言葉で促す。
そんな嬉しい言葉をもらい、ディーバが袋から中身を取り出してみると----
桜色と若葉色の絶妙な取り合わせで編まれた、春の豊穣を表すようなフレアスカートと、体のラインを良く表すようで、上品さも忘れない白のトップスとジャケットだった。
「どう?私がスカートを見つけて、組み合わせはピアが大分頑張ってくれたの。……気にいってもらえるかな?」
ディーバは揃えられた服を見て、自分の目尻に涙が溜まっていく感覚が分かった。
「ありがとう。……あはは、なんだか涙もろくなっちゃってるな、--嬉しくて。----本当、……嬉しくて。ありがとう、レイ、ピア」
すっ、とフェイトはハンカチを差し出し、ディーバはハンカチを受け取り皆に涙を見せないよう後ろを振り向いて、涙を拭っていた。
しばらく後、涙を完全に拭ったディーバが改めてこちらに顔を向けた。
「ありがと、本当に嬉しい」
満面の笑みでレイとピアに応える。
「そんなに喜んでもらえたなら本望よ」
「ね、姉さんもすっごく頑張ったんだよ?お店たっくさん回って、ようやくこれ!って決めたんだから」
「ありがとう、大切にするね」
そしてディーバは一際大切に、もらった服を抱き締める。
「ディーバ、しわになっちゃうよ?」
フェイトが優しく指摘すると、あっ、という声と同時に力を緩める様が伺えた。
「本当喜んでもらえてよかった。ディーバ、今着てみたら?」
「そうそう、今着てみてよ~?絶対似合うから!」
レイとピアに押し切られるようにディーバは着替えを承諾する形となる。
「あ、じゃあ2階の私の部屋を使って。案内するね」
アイリスが役割を受け持ち、ディーバ達を案内する。
残ったフェイト達は若干手持ち無沙汰になりそうだったが、
「よし、丁度いいな。リード、ケーキ出してくれ」
「ハーイ」
おや?すっかり懐いた猫のようにゲイトの指示に従うリード。
知らぬ間にすっかり打ち解けたようだ。
「リードが手伝ってくれなきゃ危なかったぜ。料理が思ったより多くて手間が掛かってな、かといって女性陣は全滅だろ?そんな中リードはちゃんと料理が出来たんだよ」
「へぇ、そりゃ意外だな」
見た目からの話しだが、リードもとてもではないが料理が出来る印象ではない。
いい所の天才お嬢様、という風体なのでそう思ってしまったが現実は一味違うらしい。
「ゲイト、持ってきた」
お待ちかねのケーキを持ってきたということで、リードのテンションも少なからず上昇しているようだ。
「よし、んじゃ開けてくれ」
料理もそこそこに食べ終え、後はどれか大き目の更に纏めればケーキを置けるスペースが作れそうだったので、フェイトは片づけを担当した。
パカッ
箱を開け、ケーキを見つめるリード。
「…………美味しそう」
まるで涎をたらしそうな程、ケーキを穴があくまで羨ましそうに見つめるリード。
少々酷だが、あくまで主賓であるディーバが来ない内から手をつける訳にはいかない。
「んで、これが仕上げでっと」
ゲイトが自分の荷物からバーナーと、何やら透明のものを取りだした。
「こうバーナーで軽く炙ってやると、--ほら、美味しそうに見えるだろ?」
「ほんとだ……」
ゲイト、お前もしかしなくても騎士じゃなくて料理人を目指せばいいのでは?と本気で転職を勧めてしまいたくなる程、驚きの技術だ。
「んで、この飴細工は、フェイトが刺すか?」
手渡された透明なものは、どうやら飴細工らしい。
形は……桜の木と花びら?
「ディーバとの思い出を覚えているのは、レイやピア、フェイトだけじゃないってことだ」
あの日、五人で見た桜の景色は決して忘れない。
その気持ちを五人の誰もが持っていたようで、ディーバはその日の服に、レイとピアは新たに送った服に、ゲイトはケーキの細工にしてそれぞれ持ち寄ってくれた。
----本当に、掛け替えのない最高の友達だ。
「ああ、ありがとな、ゲイト」
「いいってことよ」
そして、フェイトは手渡された飴細工を、丁寧にケーキに刺し込み、風情を演出する。
しばらくすると、
「じゃじゃーん!姫のご入場でーす!!」
ピアの明るい声と同時に広間の扉が開かれ、新たな衣装に身を包んだディーバが入場してきた。
「これは……」
思わず言葉を飲み込んでしまう、そんな幻想的な光景だった。
今日着ていたシフォンワンピースも良く似合っていたが、今回のは更に格別だ。
年相応に引き締まったラインや、盛り上がるバストを際立たせる服に、妖精のようなスカートをふわりとたなびかせるようにクルリと回って魅せてくれるディーバは、まさに花の妖精とでも例えるべきものだった。
初めて出逢った頃に吸い込まれるように思えた銀の髪は、キラキラと光の欠片を降らし、妖精の衣装を一層華やかに色めき立てた。
「ディーバ、良く似合う」
「いや、フェイトの言葉を取ってなんだが、ディーバ凄くキレイだ」
「ありがと、フェイトは?私の騎士様?」
やっぱり、なんだかんだでフェイトの感想を一番に気にするディーバは、フェイトの感想を待った。
「あ、ああ。前のもとても良く似合っていたけど……今日のは別各だ、本当に妖精と見間違える程だ」
「やったね!」
「やった!!」
自分達の目論見が成功した姉妹も、喜んでいた。
そしてディーバは----
泣きそうな程の輝く笑顔で、こちらに微笑んでくれた。
「さって、姫も気合を入れてくれたが、俺達も負けてられない。さあ、テーブルをご覧あれ!腕を振るって作りあげた自慢のチョコレートケーキにございます」
ゲイトがたなびやかにテーブルを案内すると、そこには季節のフルーツで色めきたてられた、美味しそうなチョコレートケーキが鎮座していた。
そして、みるものを圧倒する桜の飴細工には、知らなかったディーバ、それにレイとピアとアイリスもビックリしていた。
「こ、これ本当にゲイトが……?」
もはや現実を直視出来ないとばかりに、涙目になったピアがゲイトに聞いてみるが、
「そうだぜ?大作を作る時間が欲しかったから買い出しを頼んでまで、時間を作ったんじゃないか?どうだ?」
ドヤ顔で宣言するゲイトだったが、グゥの音も出ない程完璧だったため誰一人とて茶化すことは出来なかった。
「それじゃ切って食べるか?」
ゲイトがそう提案し、リードの表情がパッと明るくなったのは目に見えて分かったが、我慢してもらおう。
「待った、俺からも、俺からもディーバに贈りたい物があるんだ」
明らかに落胆した表情を見せるリードだったが、心の中だけで謝っておくことにする。
何を見せてくれるの?と期待タップリの優しい瞳で射ぬかれては、フェイトも素直になるしかない。
自分の胸ポケットから、小さな箱を取り出すと、その小さな箱をディーバに差し出した。
「これを、ディーバ、君に贈るよ」
周囲の誰からも注目される中、ディーバは箱を受け取るとフェイトに目で問い掛ける。
(開けても?)(どうぞ)
そして、ディーバはゆっくりと箱を開けると----
宝石の女王とも呼ばれ、不滅の炎を表し、邪を払う宝石の中の宝石、--ルビーのペンダントがディーバに出逢う事を待ち焦がれていたように、赤く輝いていた。
「これって……」
フェイトを見つめると、彼は照れたように自分の前髪を触る。
「ディーバへの贈り物。どれにするか迷ったけど、あの日のワンピースにとても似合うように思えたから」
あの日の、パステルグリーンのシフォンワンピース。
つい先程まで着ていたあの服に、似合うアクセサリーを彼は探していてくれたのだ。
「それに、結果オーラだけどさ、ディーバの今の服にもきっと似合うと思う」
確かに、このルビーは小粒だし、白を基調としているこの首周りにはとても良く映えるだろう。
しかし、小粒とはいえルビーはルビーだ。学生の身分で買うには随分と高い買い物であっただろう。
「ディーバには紛い物は似合わない、俺からの餞別、--受け取ってくれるかな?」
----ダメだ、嬉しくて、嬉しすぎてまた泣いてしまいそうだ。
なんとか、なんとか我慢をして、涙を堪える。
「フェイト、付けてもらえる?」
きっと、フェイトはそこまでやりたいのだろう。渡しただけで満足する彼ではない。
こちらからそう言ってあげると、やっぱり--
フェイトはとても嬉しそうに頷き、私にフェイトと同じ「赤」の宝石、ルビーを付けてくれた。
フェイトがルビーのペンダントをディーバに付け終わると、誰から始まったか分からないが、拍手が二人を祝福し、暖かく包んでくれた。
そしてようやく拍手が止み、皆が落ち着いて席に戻るとリードが待ちかねたように、
「ケーキ!」
と叫び、皆の笑いを誘った。
ゲイトが早速八等分にして皆の分を切り分けると、皿にそれぞれよそっていく。
全員分配り終えると、リードが
「いただきます」
と、早々に宣言したので皆も早速食べ始めた。
チョコレートケーキは甘すぎず、かといってフルーツが適度に酸味と甘みを演出してくれ、とても美味しくいただけた。
リードは一番に完食すると、ディーバに、
「食べていい?」
と聞き、ディーバが喜んで頷くと2切れ目に突入しパクパクと食べ進めた。
ケーキを食べている間中、ディーバは頻りに自分の胸に輝くルビーに触れていたため、しまいにはレイから、
「ディーバ、嬉しいのは分かるけど、落ち着いて。ソワソワしすぎよ」
と窘められ、楽しかった送別会はやがて終わりへと近付いてきていた----