空を飛ぼう<オフレコ>
翌日、フェイトはディーバの部屋を訪ねていた。
あれから、一日はそっとしておこうと思いディーバが走り去ってから追う事は無かったが、今日は誓い通りディーバを支えようとやってきたのだが--
「ディーバ?いるなら返事をしてくれ。フェイトだ」
来る前にディーバの家があった場所も見て来ていたので、すれ違ったとは考えにくいのだが……
「こりゃ、本格的に嫌われたかな?」
無理やり中に入るのは騎士としての矜持に関わるので、そんな無礼な事はできない。
天照の岩戸が開くのを待つかのように、持久戦を覚悟しフェイトは昼過ぎまで扉の前で待ちぼうけていた。
「ぅ……ん~~~!!ん……?あれ?ここは、ホテル?」
一方ディーバはあれから死んだように眠り続けており、起きたのが昼過ぎだったのだ。
「なんか久しぶりに眠った気がする」
両親が死んだという訃報を受けてから飛んで帰ってきたのはいいが、それからは何をするでもなくただただ1日を無為に過ごし、何もしなかった。
自分が死にたいのか、生きたいのかも分からず、それでも空腹を満たすため食事を取っていた事は生に執着している事の証でもあったので、それも本当は煩わしかった。
睡眠も同じようなもので、眠いから寝るのではなくただ何となく夜は眠った方がいいと思ったから眠っただけ。
いっそ心が機械であれば、本当に楽になれるのに。
何度も願うよう思ったが、神様はそんな願いを受け入れてはくれなかった。
それにしては、今起きた瞬間の充実感は一週間以来だ。
心が壊れたと自覚してからは、感情というものが一切復活する気配をみせなかったのだが、案外現金なものだ。
でも--
「声……きっと出ていないんだろうな」
独り言の要領で口に出している言葉も、全てが耳に入ってこない。
自分の耳が壊れたのならば、遠くから聞こえる人々の喧騒も、町を立て直す工事の音も、13時を告げる13回の鐘の音も聞こえないのだから。
「13回……13時!?」
ディーバは心底ビックリしていた。今まで機械的に8時には起き、日課となってしまっていた自宅を見つめる事が、今日はすっかりと抜け落ちてしまっていたからだ。
「フェイト……?」
思えば昨日騎士と名乗る少年に会ってからだ。
混乱したのも、イライラしたのも、眠れたのも、今不安なのも。
昨日初めて出逢った時、騎士と名乗り知らない事を説明してくれた彼。
しかし実際彼はつまらない類の人間でしかなかった。
国王とすら間近で話せる自分と違って、騎士団というのはただ貴族になれなかった、生まれの差が生んだ限界に過ぎない。
そんな犬に近い身分で、夢も子供の頃のまま。フェイトの評価ランクはみるみる急降下していたのだ。
最初はマネージャーに近い位置だったものが、従僕の位置とディーバの中では格付けられていた。
それに不満が生まれ始め、自分の事を知りたい等とあまりにも度を超えた我が儘を言うのだから、それはもう苛立ちが募る。
そして、何故か話してあげる気分になって、話してあげていたというのにフェイトは感謝もせず、ずかずかと踏み入った話しを一方的にしてきて、しまいには口答え。
だけど、それに何かが抉られていくのが分かった。
機械になりかけていた私が話す言葉は、空虚なものに成り果てていて、今思い返せばとても陳腐だ。
国王と親しいからなんだと言うんだろう?何故私は自分の歌声の事を話さなかったのか?
そして、彼はついに触れていけないパンドラの箱に触れた----
結果は……
「疲れちゃった」
ただでさえ考えられる頭の状態ではないのに、膨大な幼い頃の記憶が溢れて纏める事も考える事もロクに適わず、ただただ混乱してしまって昨日は眠ってしまった。
疲れて眠る、それが健全な肉体、何気ない毎日そのものだった。
ただ眠るだけの日々に何の価値があるというのだろうか?それだけは、少なくとも理解できた。
「……とりあえず、何か食べようかな」
外に出て、パンでもかじってまた家を見に行こうと思い着替えも、化粧も、髪をとかすこともなく扉を開ける----
「おはよう、寝ぼすけお姫様」
そんな、軽口が外の光から聞こえた。
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扉が開くなり、フェイトは声を掛けた。
「おはよう、寝ぼすけお姫様」
ディーバは最初フェイトだと認識出来ていなかったようだが、認識した後は見なかったかのようにドアを再び閉じた。
「待て」
と思った瞬間、間一髪で足を挟み込み扉を閉じさせないようにする。
「何?」
明らかに不機嫌を滲ませた表情で睨んでくるが問題ない。
「昼食でも一緒にどう?上手いオニオンスープを出す店があるんだけど?」
そんな気安い誘いをディーバは一笑に付す。
「世界の歌姫相手にオニオンスープって……私は----」
そしてディーバはハッとなる。
世界の歌姫?それは後から呼ばれたものであって、私は、私は----
「とにかく、お腹減ったんだろ?スープって消化もいいし栄養もあるし、気分を落ち着かせるには一番なんだぜ?な、ディーバ、行こう?」
フェイトがお願いするようにディーバを拝むと、ディーバはまだうろたえていたが、やがて溜息を吐きだす。
「分かった、行きましょ」
「やりぃ!」
と、能天気な発言と子供みたいなはしゃぎ様が、いつの間にかディーバの日常に加わっていった。
「美味しいでしょ?」
「……うん」
フェイトの作戦は唯一つ。ディーバを支えるには少なくとも対等以上の立場でなくてはならないのだ。
ディーバは全て聞かされた通りの知識しかない、子供であるのだ。
自分より年上であろうと、精神面では大人の世界に早く上がりすぎたせいで、確固たる自分を持てずステージに立ち続け、間違いを指摘してくれる人もおらず、結果ディーバが歪む原因を作ってしまった。
ディーバが両親の事を乗り越えられる可能性があるとすれば、この一点に尽きる。
すなわち、ディーバの子供という殻をぶち破り、ディーバを大人にする。
……最もフェイト自身15歳なので何がどうすれば大人なのか分からないが、それでもディーバが自分で乗り越えられる強さを身に付けられたら、大人になったのではないかと思う。
そのためには、自分は型通りの騎士を演じていたのではディーバの心に届かないのではないかと思い、いっそ『友達』という立場になってみてはどうか思った。
もしかすると、ディーバは友達らしき友達もいなかったのではないかと思う。
本来ならば両親を失った状況で他に支えられるとすれば、近い肉親か、友達、恋人位なものだ。
だが、その存在があるならばとっくにディーバの心の頼りになっていただろうし、ディーバの近くにいるハズだ。
その姿がないからこそ、フェイトは仮説を立て、ディーバに『友達』というのを教える。
間違った事を肯定せず、本当の意味でディーバを助けられるという存在を。
そんな事を昨日のうちに決めたのだが、ディーバは訝しげな目でこちらを射抜いている。
どうやらスープを飲み終わり、小麦パンに山羊のチーズを乗せたものも食べ終えたようだ。
「そういえば、あなた学校は?」
と、ディーバに痛い所を突かれた。
正直意外だ、そんな所に気付くとは思わなかった。
「学校は、サボり。ディーバが心配だったから」
正直に告白する。実際サボったら後が怖いので、学校には行きたい所だったがディーバを放っておくわけにはいかない。
せめてディーバに回復の兆しが見えるまでは、学校に行かないつもりだ。
「そう」
と、そっけなく返された返事に昨日の事を思い出してしまうが、どうやらちょっとだけ違うみたいだ。
恥ずかしげに目線を外し、そっぽを向くディーバは心配されていることに嬉しさを感じたのかもしれない。
(素直じゃないんだから)
そう思いつつ、フェイトも自分の分の昼食を食べ終える事にした。
「これから行きたい所があるから、付き合ってくれないかな?」
フェイトの問いにディーバは敢えて興味なさそうに視線を外すが、慣れてしまえばなんてことはない。
照れ隠しだと思えば十分に可愛い範囲だ。
「んじゃ行くよ、リリアウト」
昨日と同じように飛行魔法を使い空へと飛びあがる。
昨日と違って、改めて地表を見て感動した様子が少しだけ伺えたが、今日の目的は--
「んじゃ行くよ?寒かったら言ってね?」
と前置きをし、まだ分かっていないディーバを空の散歩に連れ出した。
「------っ!!っ!!!----!!!!!!」
背中に掴まっているディーバから、何か文句らしき気配が聞こえる。
が、フェイトは全部無視して更に速度を上げる。
ちなみに上空に行きすぎると、速さがゆっくりした感じに見えてしまうため精々が5階建てビルの屋上の高さ位で飛行している。
それなのに速度は飛行機並というのだから、その速度を初めて経験するディーバからすればたまったものではないだろう。
二人分を風のバリアで丁寧に包む上に、高速で飛行するため空気の風切り音がとても煩く、例え集音に回せる魔力があったとしても意味をなさない。
結果としてディーバの声は全く聞こえていない。
だが、それでも速度を緩めることなく更に加速し空を突っ切る。
最初の頃こそ手で叩いてきたり、何かを叫ぼうとしていたようだったが、しばらくしたら抵抗を諦めた。
この風になるかのような散歩が果たして、ディーバの為になるのかと言われれば分からない。
でも、人間なんてちっぽけなものだ。
空を飛ぶ鳥になりたい。----そう願う人がいるように、人は地上に同じように生活し、同じような顔の人達に紛れ、同じような毎日を送っていれば心も縮こまってしまう。
それならいっそ、このどこまでも続く空の彼方を滑走し、空から見下ろして改めて分かる大地の大きさを認識すれば、自分がいかに小さいかを思い知れる。
フェイトもこの感覚が好きで、何度か同じように飛んでみてなんだか考える事がばからしくなった。
という実経験を兼ねてたからこそ、ディーバも同じように連れだしてみたのだ。
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本当に無茶苦茶だった。
行きたい場所があると行って飛んだのまではいい。昨日も経験したことだし。
でも、行きたい場所というのは恐らく空の事だったのだ。
フェイトは無遠慮に空を凄まじい速度で飛び始め、私は驚きでパニックを起こしかけた。
とりあえず降ろせと叩いてみたり、叫ぼうとしてみたり、地上が遠く意識も遠くなりかけたり。
でも、しばらくこんな無茶苦茶な状況が続くと、違和感があった。
風が少しヒンヤリと伝わってくるが、あくまでも自転車で風を切った時程だ。
それにもし、フェイトから手を離しても落ちる気がしない。……きっとどちらもフェイトの魔法なのだろう。
昨日はただギュッと掴まって目を瞑っているだけだったが、今日はこんな状況に晒され続けたせいか余裕がある。
よし……と思い、思い切って目をパチッと開くと----
ただ、ただ美しかった。
眼下に町は無く、ただただ緑の丘が広がり、果てしない草原がどこまでも続く。
空の先の太陽も、眩しいとは思うが見つめているとその大きさと輝きに目を奪われる。
だけど、それより何よりも、空を自分が飛んでいるんだと思うと心が浮き立つ。
飛行機を使ってこちらに戻ってきたときは、鉄の箱に運ばれているとしか思わなかったが、実際自分で空気に触れながら飛んでいると、本当に気持ちがいい。
有名な詩人が川の流れや、空模様を謳ったものが世の中にはいくつもあるが、そのどれもがきっとこんな気持ちを表せるものは、ない。
私は、今、飛んでいる。
難しい言葉は地上に全て置いてきて、私はただただ風を感じ風になる。
「気持ちいい」
それだけで言葉は足りた。
■■■■■■
背中にいるディーバがいつの間にか、手を大きく広げこの空を感じている事に気付いたフェイトはランダム飛行を止め、ただただ加速を突きつめて空を飛ぶ。
「ほら、こんなにも空は広くて気持ちいい。地上の悩みが悪い事とは言わないし、きっとそれも大事だけど、囚われて動けなくなることだけは間違いだって俺は思うから」
きっと聞こえないはずの声をフェイトは口に出し、ディーバのためだけに自由な空を飛行する--
やがて、ディーバが自分の肩を二度叩いた所でフェイトは空中で止まる事にする。
「ありがとう」
やっぱり集音しないと聞こえないので、今はその声が聞こえなかったが、唇の動きで気持ちも言葉も伝わる。
「こちらこそ」
やっと二人の心が擦れあった瞬間を、フェイトもディーバもきっと一生忘れない。
「じゃあ戻ろっか?結構遠くまで飛んじゃったから、戻るのも時間掛かるからさ。----!」
そこでフェイトはちょっとした悪戯心が芽生える。
「今度は、しっかり掴まってて?」
フェイトは意地悪な笑いを堪えて、ディーバにそう言うと、ディーバは首を傾げながらもフェイトにギュッと掴まる。
「行くよ?」
そしてフェイトは調子に乗って、ジェットコースターさながらに上下左右に振り回し、スクリューまでつけて飛びまわり続け、ついにディーバから拳骨を頂戴した。
「サイッテー!」
こうして、最後の最後に悪戯が過ぎたせいかディーバは地上に戻ってからも、フェイトに文句しか言ってこない。
「ゴメンゴメン」
と、もう何度目になるか分からない謝罪を口にしフェイトは頭を下げる。
最も二人共分かっていたのは、どちらも本気で怒っている訳でもないし、本気で謝っている訳でもないという事だ。
そこに存在しつつある、絆というものにお互いが照れつつ認め合っている--そんなくすぐったい感覚。
そんな感覚が悪くない、と思うからこそ二人は仲良く夕暮れの街を歩いているのだ。
「んーじゃああれ、買ってくれたら許す」
ディーバが提案したのは、ケバブの屋台だ。
実は昼食代もフェイトが出していたので、財布に不安が残るがそれでチャラにしてくれるというならば、断る選択は出来ない。
「ハイハイ、でもお金ないから一個だけね」
そして屋台のおじさんにケバブを注文し、待つ。
おじさんは手早く作り上げ、威勢良く「まいどっ!」と見送ってくれて何だか気分が良かった。
しかし、ほんのちょっとだけ目を離した隙に、ディーバは数人の男女に囲まれていた。
「ディーバさん!?会えて感激です!サイン下さいサイン!」
「ディーバさん体調悪かったんじゃないんですか?お体の調子が良くなかったら、公演よりも自分を優先して下さいね?」
「ディーバさん!でも次公演やるとしたら期待してますよ!復帰記念コンサートなんてすごいTV局の数が入りそうだし、俺らでもTVで見られますよ!」
「ディーバさん----」
一人一人に害意はない。でも、集団になれば善意が害意に変わってしまう事だってあるのだ。
現にディーバは困り果てている。
今ディーバが声を出せないと知られればどれだけの波紋を呼び、どれだけディーバに影響があるか計り知れない。
フェイトは急いで集団をかき分け、ディーバの口にケバブを突っ込む。
「--っ!!」
本日何度目になるだろう、ディーバの声にならない悲鳴を無視してフェイトは観客を追い返す。
「ディーバが体調不良なのは新聞の通りでーす!ファンならあんまり困らせずに、今日はもう道を開けて下さーい」
暗にこちらが困っていることをアピールすることで、ただのファンだった彼らはスミマセンと声を揃えて道を開けてくれる。
「ディーバ、行くぞ」
まるでマネージャーの真似ごとをしつつ、ファンの囲いから脱出して適度にこちらに向けられる好奇心の目を振り切るように、何度も道を曲がり、ようやく全ての目から逃れることに成功する。
問題があったのは、
「レディーの口に食べ物を突っ込むとかどんだけ失礼なのよ!あんた首にするわよ、首!」
と、ケバブを捨てるのも勿体なく、かといって自分の片手が塞がるのも嫌って、ついディーバの口に押し込んだのだが。
よく考えてみると、ディーバの手に持たせれば良かったのかもしれない。というか、途中から走る事になって、ディーバは口からケバブを取りだし手に持って走っていたし。
「ハァ……ホントあんたといると何もかもが無茶苦茶……」
「でも、楽しいだろ?」
そう純真な瞳でディーバを見つめると、ディーバも悔しそうに、そして恥ずかしそうにそっぽを向いて答える。
「楽しい……」
ようやくディーバから信頼を得られたのかもしれない。
一日の達成感と絆を得られた嬉しさに、フェイトは自然と笑顔をこぼした。
ディーバをホテルまで送り、自分は自宅に戻ると家の前に何やら人が待ち構えている。
「あれ?ゲイトにレイにピアじゃないか。どうしたんだ?ウチまで来て?っていうかどうやってここまで?」
何も知らないフェイトに次の瞬間容赦ない拳や蹴りや平手打ちが飛んできた。
「いってぇ!!?なんなんだよ!?急に!?」
フェイトは事情が全く飲み込めず、情けない声を出すが、三人の殺気は薄れることなく、尚濃く高まる。
「……待った、落ち着こう、っていうか落ち着いて下さいお願いします!事情を話してくれプリーズ!」
幾多の言葉を出してようやく届いたのか、拳を引っ込め代わり言葉を出してくれる。
「フェイト、あんた処罰は自分で受けるって言ったわよね?」
ん?と一瞬考えたが、それは昨日自分が町に連れだす口実として言ったことだった。
まさか----
「もしかして、先生に見つかった?」
「こってりしぼられた。フェイトにもメールを出したぞ、お前も来るようにって」
「えっ?」
と慌てて携帯を探すが、昨日から家に置きっぱなしだ。
「悪い、家に置きっぱなしで--」
「バカァ!!」
結局ピアから本日二度目の鉄拳をお見舞いされた。
ヒリヒリする頬をさすりながら、事情を聴くとどうやら今日フェイトが参加しなかった事で、すさまじいスパルタ訓練を受けたそうだ。
途中から洗礼の事を思い出したが、実際それに近い所だったらしい。
「って訳で明日絶対に、絶対に参加すること!!出ないと私達が--」
ピアが体を震わせて懇願する。
うん、確かにそんなしごき二日連続とか死んじゃうかもしれない。
そう思い、フェイトは首を……横に振った。
「悪い、ディーバの事が片付くまで俺学校に行かないから」
「うおい!?」
「ハァ!?」
「フェイト!?」
三人共さすがに明日はフェイトが学校に行くと思っていたようだが、フェイトが断るには理由がある。
「俺、ディーバを守るって決めたんだ。それには昨日今日だけじゃ足りない。いや、本当は何もかもが足りない!だからお願いだ!明日は俺と一緒に学校を休んで、ディーバに会ってくれ!」
この提案には三人は心底驚いた。
まさか説得した側が、説得に回られるとは予想だにしなかった事態だ。
レイが一応こちらに確認するように問う。
「私達がしごきを受けた事を悪いと思った前提で、言ってるのよね?」
「当たり前だ。俺一人が本来受ければ良かったものを、関係ないお前らに背負わせちゃって、本当に悪かった。だから今度こそ俺が処罰を全部引き受けるから、もう一度だけ力を貸してくれ!!」
言葉だけなら、まるでこれから世界を救いに行く勇者のようにも聞こえるが、実際は明日一緒にサボってくれという何とも低次元な叫びだった。
そんな提案に、ピアとゲイトは
「いいわよ」「いいぜ」
と、即答で返してくれた。
「な、なんで即答してんの!?」
一人取り残されたレイが二人を見つめ、助け舟を待つが二人は首を横に振るだけだった。
「レイ、フェイトは人を救おうとしているんだ。学校の一日二日、いや一週間休んだ所で人は救えない。フェイトの方がよっぽど見ている視野が広いんだ」
ゲイトが言葉にしたことにより、レイもフェイトの心意気を悟り、協力をすることにしぶしぶながら乗った。
「全く……本当にフェイトと会ってからなんかトラブルばっかり。--ちゃんと後で借りは返しなさいよ?」
「勿論だ!サンキュー、みんな!!」
フェイトは頼もしい友人をサボリに巻き込み、明日ディーバと会うことについて色々と四人で考えることにした------