だいすきっ!! 『お姉ちゃんズっ!!』
ゆあは里見家の「いぬ」です。里見家の人たちは皆ゆあに優しいです。そんな里見家の皆さんを、ゆあが紹介します。実はお兄、末っ子長男姉三人なんです。えっ? 何で今日はこんなことしてるのかって? ―――お兄が学校言ってる間は暇だからです。
だいすきっ!!
だいにわ 『お姉ちゃんズっ!!』
「今日のタモさんはキレがありませんねぇ・・・」
お昼ごはんの後。ゆあはたいてい居間でくつろいでます。テレビを見て暇つぶし。だけど、今日はちょっと違う日になりそうです。
「ゆあー。おいで、散歩連れてってあげるよ」
里見家次女のあひるちゃん。今日は大学はお休みのようです。私の首輪を持って笑顔で手招きします。
「うー・・・。すみません。遠慮します」
「なんで? いっつもお兄と行くときは嬉しそうにしてるじゃない・・・。ゆあ、お姉ちゃんのこと嫌い?」
「違いますっ! あの、お散歩はお兄も楽しみにしてくれてるから。だから、ゆあはお兄とお散歩に行きたいんです」
「あー・・・そういうことか。うん、分かった。―――えらいねー、ゆあちゃん。ホラ、お菓子あげる」
「いいんですかっ!?」
「お母さんと鷹子姉ちゃんには内緒だよ?」
わぁい、とゆあは大喜び。あひるちゃんはゆあの隣に座ってゆあの頭を撫でます。気持ちいいです。
「ゆあちゃんはかわいいねぇ・・・」
「よく言われます」
「―――少しは謙遜を覚えなさい」
それからしばらくあひるちゃんと一緒にテレビを見てますと、今度は長女、鷹子お姉さまがやってきます。
お姉さまは自宅警備員というお仕事をしています。すごく立派な名前のお仕事だからゆあは尊敬しているのですが、お兄はそんなにすごいもんじゃないよ、といつも言っています。
「よ、ゆあ。―――またテレビ見てるの?」
「このドラマおもしろいんですよ」
「あー、あたしゃドラマには興味ない。って、あひる、何でいるのよ」
「鷹子姉ちゃんこそ、いつまで家にいるのよ」
「―――それは今、関係ないんじゃないかしら?」
「あら、似たようなものじゃないのかしらね?」
鷹子お姉さまとあひるちゃんはあまり仲良しじゃない。いつもこうやってケンカしてます。お兄はアレはじゃれてるのと同じようなものだと言ってました。実は仲がいいのかな。
「私は年中自宅警備の任についているお姉さまと違って、忙しい身分ですから、たまの休校くらい家でくつろいだってばちは当たらないと思うけど? お姉さまはどうかしら? ただ家にいてごく潰しのすねかじり。恥ずかしい」
「う・・・言ったわね、この貧乳!」
「何よ! それこそ今関係ないじゃない!!」
「うるさい! 洗濯板みたいな胸してそれこそ恥ずかしいとは思わないの!?」
「うっさいわボケ! 大きなお世話!! 自分のこと棚に上げてよく言うわよ。鷹子姉ちゃんだって超極ド貧乳じゃない!!」
「私はあるわよ! 少なくとも十九にもなって、お店でサイズ測ってもらったらまだ早いなんて言われたあんたよりはマシね」
「う・・・うるさいうるさいうるさーい!! ゆあ~! 鷹子姉ちゃん酷いんだよ~!!」
あひるちゃんは泣きながらゆあに抱きつきます。しかしすぐに飛びのいて自分の手を見つめています。何かあったのかな。
「―――鷹子姉ちゃん・・・ゆあ、胸ある」
「―――マジ?」
そりゃあそうです。デミヒューマだもの。尻尾と耳以外は人間とおなじなのですから、おっぱいくらい人並みにあります。
「―――『いぬ』のくせに生意気な・・・」
「ゆあ、ちょっとお姉ちゃんに見せてみな・・・」
「な、なんかお花の名前が付きそうな展開!?」
ゆあはダッシュで逃げます。普通に走るよりも四速歩行の方が早いのは野良時代の名残です。そして身軽なのも野良の特徴。庭に向かってジャンプしてそのまま塀を飛び越えます。
「あ、危なかったぁ・・・」
「ゆあ、どうしたの?」
どきっとして振り返ると後ろには三女のすずめお姉ちゃん。お姉ちゃんはお兄と同じ高校生で、同じ学校に通ってます。
「鷹子お姉さまとあひるちゃんが、かくかくしかじかで」
「二人ともお母さんに似て胸無いからね。気にしてるんだ」
「ところで、お姉ちゃんは早帰りですか?」
「うーん、古典の授業やる気が出なくてね・・・」
「ダメですよ。お兄に怒られます」
「あの子のお説教なら聞き流してるからいいの。―――さ、帰ろっか、ゆあ。―――姉ちゃんには私がお説教してあげるから」
「助かります・・・」
そうして今、お姉さまとあひるちゃんはすずめお姉ちゃんからお説教を受けてます。
「まったく、重度愛好者じゃないんだからペットに悪戯するようなバカなことするんじゃないわよ。―――第一、二人ともケンカしすぎ。ゆあの教育上よくない真似は禁止よ。私がお兄に怒られるんだから」
二人のろくでもないことの苦情の窓口なんてごめんよ。すずめお姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんです。しかし、お母さんがパートから帰ってきたら立場は逆転です。今度はすずめお姉ちゃんが三人に叱られてます。
「これ以上サボったら単位取れなくて留年よ? 分かってるの?」
「お母さんだってこの間先生に呼ばれてもう大変だったんだから」
「すずめ、聞いてるの!? お兄を見習ってもう少しマジメに―――」
たんまりお説教された後、すずめお姉ちゃんはすっかりしょんぼりしてゆあに擦り寄ってきました。
「ゆあー・・・。ごめんね、ダメなお姉ちゃんばっかりで」
「そんなこと無いですよ。すずめお姉ちゃんはゆあにいろんなコト教えてくれますし、あひるちゃんはゆあにおやつくれます。鷹子お姉さまは自宅警備のお仕事を立派に務めてるから、お母さんが安心してパートに行けるんじゃないですか! お姉ちゃんたちはゆあにとって尊敬ですよ!」
「あたしだけジャンルちがくない!? ほめられてないし!」
「まあまあ、ほめ言葉として受け取っておきなさいよ」
「ゆあ・・・。―――ありがとね」
すずめお姉ちゃんはゆあを抱き寄せてにっこり笑顔。ゆあは幸せです。
「―――そんなことがあったんですよ」
ゆあはお兄が帰ってくるまでともくんに今日あったことをお話してます。日課というやつです。ともくんはいつも聞いてるのか聞いてないのか分からないですが、そこにいるんだからきっと聞いてくれてるんでしょう。お姉ちゃんたちは部屋の外で待ってます。
「ね、今度からともくんも一緒に遊ぼうよ。お姉ちゃんたち、仲良くしてくれるよ?」
「―――」
ともくんは答えません。いつもどおりゆあのことなんか相手にしてない様子です。でも、負けません。いつか必ずともくんを振り向かせて見せます!!
「―――ふむ・・・ところであひる姉ちゃん、ゆあの胸、どれくらいあったの?」
「結構大きかった。―――しかもブラしてた」
「マジで? もしかして私も負けてるかな―――ってあれ? 確か、ゆあの服って毎日お兄が着せてたよね・・・」
「・・・まさか、お兄が育てたんじゃ・・・・」
「よし、あとで問い詰めるか」
部屋の外から怪しげな作戦会議が聞こえてきます。また妙なことにならなければいいのですが・・・・。おしまい。
次回予告
「ゆあ、俺の彼女を紹介するよ」
「なっ、その子は・・・『かんがるー』っ!!」
嘘です。そんな次回は無いです。
お姉ちゃんズが末っ子のお兄のことをお兄って呼んでるのかは、どうやらお母さんがそう呼んでいたのが移ったらしいです。ゆあにも移ってますよ!
次回、『だいすきっ!!』は、
『はつたいけんっ!?』
な、なんか嫌な予感のタイトル・・・。
キズモノになっても見捨てないよね、お兄!?