クラスメイト♂の幼馴染♀を寝取ってやる
「今日も夫婦で仲良く登校かよ、まったく羨ましい限りだな」
幼馴染の女子と登校する横井達也がクラスメイトの男子たちに揶揄われ、茶化されながら教室の中に入ってきた。横井の少し後ろを歩いているのは彼の幼馴染である伊東ゆかり。
伊東はポッチャリ型で丸顔、背も低い。マスクを外さず前髪は目まで覆っているほど長くしており、男子たちからはブサイク女子と評価されている。
「まぁ家の前で毎朝ゆかりが待っているからな、仕方なく付き合ってるんだよ」
横井が幼馴染の伊東から迫られている風に言うと、伊東ゆかりは下を向いてしまって黙っている、というのが彼らのやり取りのデフォである。
俺は毎朝毎朝、彼らの様子を眺めて見ているが、高校二年の一月にもなって日々変わらぬ様子であった。これを幼稚園の頃から続けているのかもしれない。
「なんで一緒に居るんだろうな、あの二人」
横井の無碍な扱いに伊東がどうして耐えられるのか、俺は不思議に感じている。
【放課後】
「おう、横井、カラオケ行こうぜ!」
男子数人が集まって横井を誘っていた。
「いや、悪いんだけど、今日、俺の誕生日なんだわ」
「なんだよー、横井つきあい悪いな」
「違う、ゆかりが俺の誕生日パーティは二人で過ごそうと用意して待ってんだわ」
「また愛妻家かよ。いい加減尻に敷かれないようにするべきだろ」
何か横井がイベントに誘われる時、いつもは断らないのに、今回だけは誕生日を理由にして断っていた。
「定光寺貴子さんがカラオケに来るのに、残念だな」
「えっ、定光寺さんが、まじ? やっぱカラオケに行こうかな。いかん、行かねばならない病を患ったかもしれん」
「おう横井、行こうぜ。やっぱ横井も一端の男子だな」
「じゃ、俺すぐ行くわ。ゆかりに今日の誕生日会は中止ってラインしておくし」
定光寺貴子というのは高嶺の花と言われている可愛い女子だ。名前からは想像できないが庇護欲をそそられる小動物系女子で、告白もしょっちゅうされている学校の有名人。目がクリッとして大きく、笑顔が特に可愛いので男子のハートにストレート直球ど真ん中という小悪魔系でもある。
「待て、ゆかりちゃんに先に断ったら可哀想だろ、何も伝えずにカラオケに行くのがベストチョイスだぞ」
「それもそうか、やっぱラインすんのやめるわ。行こうぜ、みんな」
俺は耳を疑った。横井は非情ともいえるセリフを吐いて教室の後部出口から出て行った。その幼馴染ゆかりが前部入口の外からこのやり取りを聞いていたとは知らずに。
俺は席に座りながらこの光景を静かに見ていた。さすがにヤツの幼馴染に対する態度には憤慨した。伊東は今にも泣きそうな顔をしているぞ。彼女はあまりのショックなのだろうか、出入り口から離れて廊下の壁に立ちすくんでいる。深刻な顔をしながら俯き始めた。肩が震えているようだ。
そこで俺はすっと席を立ち、伊東の方へ歩き始めた。まぁ何をするでもなく、声でもかけてやるかという、お節介なだけだ。
教室前部の扉を開け廊下へ出た。伊東は出入り口から生徒が出てきたにもかかわらず下を向いたままだった。
「伊東……まだ帰らないのか?」
とりあえず話しかけてみる。だが無反応だった。
「おい、伊東……」
伊東は声にやっと反応し、上を向くとずるずると座り始めた。そして床に直接お尻をつき両膝を腕で抱いた。
顔を膝に埋める。
「ふぅー」
俺は溜息を吐きながら座る彼女の横の壁に立つ。
(立っているのも会話できないな。目線を合わせるか)
俺は彼女の横に座った。
「伊東……」
「ふぃ」
彼女はいきなり真横から名前を呼ばれ驚いたのか、涙に濡れる顔をあげた。
「大丈夫か、伊東。俺も聞いていたけど横井のヤツひどいな」
「あ、あ、あ、……小池くん」
声にならないようだった。可哀想にな。ちなみに小池というのが俺の名字だ。名は浩という。
「だ、大丈夫、ありがとう、小池くん」
「横井のヤツ、お前が優しいから調子に乗ってるんだ。たまには怒ってやれよ」
「ううん、私が悪いの。勝手にお誕生日パーティをしようって言ったから」
「何言ってるんだよ」
この伊東ゆかりという女子はマスクを常にしており、前髪が長いので目がよく分からない。みんなからはブサイク娘と弄られているが、一瞬だけ見えた涙に濡れる瞳は驚くほど綺麗だと思った。
しかたがないな……
◇
別の日
俺は授業をさぼって屋上に通じる階段の踊り場に上がってきた。すると先に女子が居ることに気づく。その女子は壁にもたれて泣いていた。まさかな? と思ったが、教室に伊東が居なかった事を思い出した。
「はぁー、伊東か? お前もサボリだったのか」
「こ、小池くん……」
急いで涙を制服の袖で拭く伊東。俺はゆっくりと彼女に近づく。
「また横井と喧嘩したのか? また酷いことを言われたのか?」
「ううん、私が悪いの。それじゃ……」
伊東はその場から離れて階段を降りようとする。俺は素早く彼女の左腕を掴み、優しく抱き寄せた。
「あっ……」
伊東の様子を見ると強い抵抗を見せなかった。これなら大丈夫だと判断して、右手で自分の胸に伊東の頭を、左手で彼女の背中を支えて抱擁する。
「だ、ダメです、たっくん以外の男の人に……止めて下さい」
「……いいから」
「いや、離してください。たっくんじゃないと嫌です」
「伊東、今お前を抱き締めているのは横井だ。横井だと想像してみろ」
「だめ、小池くんだもん、たっくんじゃない」
「たまには甘えろ。今は横井に甘えていると思え」
「そんな……、たっくんを裏切れない……」
「そのたっくんとやらは、お前がせっかく準備した誕生日パーティを断りもなく、ブッチしただろ?」
「だ、だって……わ、わたし……」
「いいから力を抜けよ。そんな授業をさぼって泣くほど辛い思いをし続けて何になる」
「うう……グスン……」
「人間ってな、いや、クラスメイトだってな、知り合いが悲しんでいたら慰めたくなるし、お前は普段からブサイク呼ばわりされてるだろ? そんなにブサイクでもないのにな」
「……(小池くん、今、私を慰めてくれているんだ)」
俺は彼女を抱き締めながら、優しく頭を撫で始めた。
「なでこ、なでこ、伊東はイイコ、いい子」
「わたし子供みたい……(クスッ」
「高校生だって子供だぞ。無理やり背伸びしても良いことなんかないぞ」
しばらく泣いていた伊東をあやして教室に戻った。
もちろん変なことはしていない。
◇
後日
おかしい……。俺は考えを巡らせていた。
伊東に声をかけようとしても避けられている……気がする。
あの日以来、俺は伊東を見るとドキドキしてしまう。
可愛く感じて仕方がない。
なんだろう? この新たなる経験したことがない感情は。
ガラッ
横井と伊東が教室に入ってきた。
クラスメイト達が声をかけ始める。
「おはよう横井、今日も伊東と夫婦で仲良く登校だな」
「お前ら、俺の事は放っておけよ。自分らも彼女でもガールフレンドでも作ればいいじゃないか」
「彼女なぁ、彼女かぁ、それなら合コンでも企画しないか?」
「朝っぱらから何を……! でも合コンか、いいなそれ。あ、ゆかりが嫉妬しそうなんで止めとくわ」
「……いいよ、たっくん、行ってきても」
「お、彼女から許可が出たぞ、良かったな横井!」
「ばかやろう、彼女なんかじゃないぞ、ただの幼馴染だ」
「……(たっくん)」
「でも、ゆかりが悲しむから合コンには行かないでおこうかな、な、ゆかり」
「……、うん」
また伊東のヤツ泣き出しそうだな。普通に『たっくん合コンなんて行かないでよ』って言えばいいのに。横井だって幼馴染と言いながら実際は二人とも付き合ってるんだろ? あの扱いはないわ。
それにしてもだ。伊東の様子が気になる。また授業をさぼって階段の踊り場で慰めてやるか。
(待てよ、どういうことだ、この俺がブサイクと評判の女子を気にしてしまうなんて。伊東とは少し慰めただけの関係だ。しかも彼氏持ちだぜ)
その日、伊東が教室から出てさぼって泣きに行くことはなかった。
いつでも追いかけられるよう心の準備をしていたのに。
(くそぉ、伊東が気になってしょうがないじゃないか!)
◇
【バレンタインデー】
教室で。
朝っぱらから女子達が想いを寄せる男子にチョコレートを渡している。
アオハルの大イベントだ。
「たっくん、これ、バレンタインのチョコレート。昨日、手作りしたんだよ」
「おう、ゆかり。毎年ありがとな。家で会う時に手渡ししてくれればいいのに、あ、一緒に登校してるんだから玄関で渡してくれれば良かったのにな。恥ずかしいだろ」
「お前ら、相変わらず夫婦でお熱いなぁ」
「手作りか、ブサイクな彼女からでも嬉しいもんだよな」
「……(今朝、教室で渡せって言ったのは、たっくんだよね?)」
その時、教室の前の出入り口から美し可愛い女子が入ってきた。定光寺貴子だ。
「横井君、バレンタインだね、これどうぞ。あ、念のため言っておくけど義理だからね!」
「えっ、あっ、ありがとう! 大切に食べるね! うわぁ、定光寺さんからチョコ貰えるだなんて、俺、とっても幸せだぁ~~!」
「うっひょー! 横井が定光寺さんからチョコ貰ったぞ!」
「羨ましいぞ、横井のばかやろう!」
「お前、伊東という彼女がいながら、定光寺さんまで、いつの間に!」
「そ、そんなんじゃねーよ、気のせいだろ、茶化すなバカ」
「ねぇ、定光寺さんは彼氏いるの? 好きな人は?」
「そうねぇ、ふふふ」
定光寺はチラっと横井の顔を見る。
「ははは……」(横井)
満更でもなく頬を右手の人差し指でポリポリとかく横井。
「横井~! モテる男はつらいのぉ~」
「バッ、バカ言うなよっ! 照れるじゃねーか」
誰が見ても横井が定光寺に惚れているのが分かるリアクションであった。
この光景。伊東は悲しいのか下を向いて涙をこらえていた。
どうして君はそんなに悲しい思いをしているのか。
彼女の手作りのチョコより、義理と宣言されたチョコを彼氏に喜ばれていいのか?
おい、伊東、怒ってもいいんだぞ? 怒れ。横井の頬を叩いてやれ。
伊東は下を向いたまま教室を出て行った。鞄を手に持ったまま。
(もう横井には任せられん。横井から伊東を奪ってやりたい。そうだ、寝取ってやる)
俺は伊東の後を追うように席を立って移動する。
なぜか俺の後ろ姿を、俺の背中を、愛しい人を見る瞳で追いかける定光寺。誰もその事に気づかなかった。
◇
【階段の踊り場】
「ぐすん、ぐすん、しくしく、しくしく……」
「ここにいたのか、伊東」
「小池くん……」
立ったまま泣いている伊東を見つけた。俺は静かに近寄り、優しく抱き寄せて頭を撫でる。彼女は抵抗しなかった。
「悲しかったな、伊東。でも今度は俺に甘えていいんだぞ」
ハンカチを出して涙をぬぐってあげながら、抱き締め続けた。
「うん」
「頭もなでようか?」
「ま、待って」
伊東は俺の胸を押してはなれた。少し寂しさを感じてしまった。
彼女は壁に立てかけていたカバンを取り、中から一つ可愛く包装されたものを取りだした。
「小池くん、いつも慰めてくれてありがとう。これ手作りだよ」
両手で包装された箱を持って俺の前に突き出す伊東。
「受け取ってください」
「手作りチョコレート! い、いいのか……俺なんかに」
コクリと頷く。そして頑張って笑顔を作る伊東。
「ありがとう、伊東」
またぐっと引き寄せて正面からぎゅっとした。その際、手作りチョコを落としてしまう伊東。いいんだよ、今は抱き締めるのが最優先だ。
「一分、一分間だけ抱き締め続けさせて欲しい。好きだよ、伊東」
耳元で小声で話す。こそばゆいのか、伊東は身体をねじってモジモジしている。驚くことに彼女からも腕を背中に回してきてくれた。
「小池くん、ありがとう。今日、放課後にわたしの家に来てくれないかな? あの、その、わたしの初めてを貰って欲しいの」
伊東が何を言っているのか分からなかった。
「うん? 初めてって横井とはしてないのか?」
「えっ!? ファーストキス……わたしの初めてを貰ってください」
「(な、なんだと……)」
抱き締めている時にそんなことを言われれば、家まで持たずにその場でキスをしてしまうだろう。俺は伊東のマスクを下にさげ、想像を絶する形のいい唇に感動しながらキスをした。
横井ではなく俺が伊東のファーストキスを奪ってしまった。
重なった唇には甘い香りと味がした。
伊東の形のいい口は柔らかくて気持ち良かった。
制服スカートの中に入っているシャツの裾をまくり上げ、シャツの中に手を忍ばせた。背中の肌やブラの紐が手に触れる。素肌のぬくもりが、すべすべの肌が心地よい。
「あ、だ、ダメ、これ以上はお家で、ね。続きはお家でお願いします……」
「ああ、ごめん。伊東の肌って、すべすべで感触が好いな」
「もう……」
唇を尖らせて拗ねた様子を見せる伊東。
「わたしの事ゆかりって呼んでください」
「ああ、分かった。ゆかり」
「うん、ひろくん、嬉しい」
なんと、横井から伊東を寝取る筈が、すでに俺に落ちてしまっていた伊東ゆかり。
「横井の事は良いのかい?」
「うん、たっくんとは、実はね……」
話によると、横井とは正式に付き合っているわけでなく、幼馴染として親から言われ寝坊の横井を朝起こすのと、迎えに行って毎日の登校が一緒だっただけで、マジで付き合っている彼氏彼女ではないのだという。
この日の放課後、俺は一緒にゆかりの自宅に帰った。横井とは同じ時間帯にならないよう、校舎裏や屋上へ上がる階段踊り場で時間を潰した。もちろん、何回もゆかりの可愛い唇を奪うキスをしていたので、あっという間に時間が過ぎていた。
キスの際、うっかり舌と舌が触れ合ってしまった。
「やんっ」
「ご、ごめん、つい舌を入れてしまったよ、オートマチックで無意識だった」
わけわからない言い訳をする俺。
ゆかりの顔は異常なほど赤く染まっていた。もちろん夕暮れで赤いわけではなくハッキリと認識できた。照れているんだな、初心で可愛い娘だ。
「へへ……」
「な、なに」
「何でもねーよ」
「もう……。ひろくんって、ちょっといじわる」
◇
ゆかりの自宅に入る直前、玄関で待っている時だった。
隣の二階の窓から目を見開く男子に気づいた。気づいてしまった。あれは奴だ。横井だ。俺の方を凝視していた。横井は何か信じられないものを見た感じで愕然とし、暫くの間、静止したままだった。
幼馴染だから隣の家だったのか。
(そうか、伊東のことが好きだったのか。そもそもマスクをしていない可愛い伊東ゆかりの素顔を知っているもんな、横井は)
一方、横井はこう考えていた。
ゆかりなんざ、定光寺貴子に比べればたいして美人でもない。へっ、貴子は学校を代表するマドンナなんだぞ。それに比べてゆかりなんて。幼馴染だから俺もわざわざ構ってやっていたんだ。
もう俺は定光寺にいくからな。早速、明日にはデートの約束でもするか。ゆかりが知ったら悔しがるだろうな。幼馴染としての立場に胡坐をかいて、俺を大切にしなかったのがお前の最大の選択ミスだわ。
定光寺と俺か……。高校全員の憧れの新しいカップル爆誕だな。文化祭でも夜のフォークダンスで踊り、みんなから「素晴らしいカップルね、憧れるわ~」、「なんで横井君が選んだのが定光寺さんなの? どうして私じゃないの?」なんて言われているのが耳に届くんだよな。
悪いけど、ゆかりなんか知らん。明日からは俺と貴子のカップル爆誕の瞬間をお披露目するぜ。
◇
ゆかりの自宅に連れられて来る前の事。実は俺に問題が持ち上がっていた。
カバンを持っていなかった俺は教室に戻った際、自分の机の中に豪華な包装された箱が入っていたのを見つけた。バレンタインだったもんな。どう見ても本命チョコだ。
「誰からかな……?」
その場で包装を開けるとメッセージカードが入っていた。予感はしていた。
『大好きな浩へ ちょっと! どうして直ぐに教室から出てっちゃうのよ! 直接渡せなかったから机の中に入れたわ。また抱いて欲しいの。抱き締めて欲しいじゃないわよ、抱いてね。もう放ったらかしなのはいつもだけど、浮気しちゃうよ? ちゃんと私を離さないでいてね。貴子』
定光寺貴子……。名前の印象と違って小柄な可愛い娘で学校のアイドルと言われている娘だ。
別に俺は高嶺の花と謳われる定光寺と付き合っているわけではない。
生徒会長という上級生である元彼氏に『いつまでヤラしてくれねーんだよ! 襲うぞコラ』とキスもさせないからと力づくで迫られていた校舎裏で、たまたまゴミ捨て当番で横を通り過ぎた俺が危機一髪から彼女を救ったのがキッカケなだけだ。
その後、恩義を感じたのか定光寺から何回もアプローチされ、彼女の自宅に誘われて一回してしまったのだ。
少し前、俺がうっかり『横井って奴が同じクラスにいるんだが、ヤツの幼馴染が可哀想でな。何かギャフンって言わせたい』と話してしまった。
多分だが、カラオケに行くという冒頭のイベントに定光寺貴子が参加したのは、それを意識していたからだろう。義理チョコも同じ狙いかも知れない。横井が定光寺を見る目は完全に惚れているもんな。
まさか定光寺が俺にぞっこんで、幼馴染の伊東まで俺に寝取られるなんて、横井の自業自得だな。
いやNTR(寝取り・寝取られ)じゃないBSS(僕が先に好きだったのに)か。
「ひろくん、何を考えているの?」
「横井の事」
「彼のことは話さないで。今は私の事だけ見て欲しいの」
横井、悪いな。お前が実は大好きな幼馴染、俺が今から美味しく頂きます。
その時、俺のスマホが震えた。発信元は……定光寺。
『ひろ~、家の側で待ってるからね! 早く逢いたいなぁ~♪』
ヤレヤレ、俺もクズ男にならないように気をつけないとな。
◇
【横井達也 side】
あの野郎! 小池浩とかいう陰キャの癖に俺のゆかりの家に入って行きやがった!
なぜだ、どこにヤツとゆかりの接点があったんだ!
頭がどうにかなってしまいそうだ。
ゆかりの笑顔。可愛いから俺がマスクを外すなと言っておいたのに、言いつけを破ってマスクを取ってやがった。小池の前で、だ。小池がゆかりに惚れちまうだろーが!
ああ、今は隣の家は誰もいなかった筈だ。親は早く帰って来いよ。このままじゃ、俺のゆかりの操が奪われてしまう。
くそっ! いくら俺が肉体関係を迫っても拒否続けるゆかり。そんなぽっと出の男に奪われるわけはないと信じているが、ちくしょー。
あ、二階の窓、ゆかりの部屋のカーテンが閉められたぞ。それじゃ見えないだろ、何やってんだ、ゆかり。他の男を部屋に連れ込むだなんてふしだらな女だな。
もう俺とは絶交だ! 今すぐ小池を追い出さないと絶交、早速Lineを送ってやる。
ふふ、メッセージを送ってやったぜ。すぐに自分の愚かな行動に愕然として泣きわめくんだろ、ゆかりよ。これが俺を裏切った罰だ。ざまぁみろ。
【次の日の教室】
「あ、定光寺さんだ」
「相変わらず可愛いなぁ」
「おい、横井に会いに来たってか、うらやまけしからん」
「横井にやったチョコは義理じゃなかったのか! 悔しすぎる」
「まぁまぁ、みんな、そんなに羨ましがるなよ。俺に会いに来たとは限らないだろ?」
(みんな、羨ましいだろ。俺に惚れてるんだぞ定光寺貴子はさ。ゆかりだっていつも嫉妬で死にそうだったんだぞ。ゆかりは今朝、俺の家の前で待ってなかったからな。多分、俺にフラれてショックで学校を休んだんだろう。ざまぁ)
ガラッ
なぜか定光寺は小池の方にまっすぐ歩いて行く。
定光寺貴子「ひろくんっ! ちょっと! 昨日は家の前で待ってたのに何処行ってたのよ」
小池浩「あ、ごめん、友達の所に泊まってた。ゲームやって寝落ちしていたわ」
定光寺「ひどいっ、私待ってたのに。でも、今日は身体、空けておいてね。約束よっ」
小池「ごめんな、埋め合わせは必ずするからさ」
な、なんだと……俺の天使(定光寺)がどうして小池なんかと親密に話をしているんだ?
それに、なんだ、恋人同士のような会話。俺の定光寺だぞ。
チョコくれたんじゃなかったのか。俺のこと好きじゃなかったのかよ。
それに小池が昨日泊まっただと……。友人の家に泊まったって言ってるが、間違いなくゆかりの家じゃないか。まさか、やったのか? しちゃったのか? 嘘だろ、ゆかり。俺と小さい頃に結婚すると言ってたじゃないか、この嘘つき女のゆかりめ。
ガラッ
丁度その時、ゆかりが入ってきた。前髪をあげてマスクをしていなかった。早速男子たちが食いつく。
「え、誰この可愛い娘」
「うちのクラスにこんな可愛い子いたっけ?」
「ばかやろう、ゆかりだよ(もうマスクも外したし仕方がないか)」
「「え~、お前の幼馴染の伊東かよ」」
「ふん、俺とゆかりは幼馴染だからな、お前ら、手を出すなよ」
勝ち誇った顔でゆかりの方を向いて挨拶をする。
「おい、おはよう、ゆかり」
ゆかりは俺の挨拶を無視して真っ直ぐに小池の方へ近づいていく。
Lineで振ったばかりなのにショックを受けていないようだ。なぜだ?
ゆかり「あ、ひろくん、おはよう~~。昨日はごめんね、でも一緒に登校したかったのに、どうして私が寝ている間に家から出ちゃったの? 目が覚めたら、ひろくんいなくて悲しかったんだから」
小池「ゆかり、おはよう。ごめんな、また埋め合わせをするから許してくれよ」
なんだ、こいつらの会話、まるでカップルじゃないか。
定光寺といい、ゆかりといい、何が起きているんだ?
おごり高ぶった男、横井達也は失恋というアオハル最大の危機に直面していた。
今までは何が起きても幼馴染の天使が傍にいた。
自分の今までの行動を反省できるのか、小池に対して逆恨みをしないのか、まだ誰にも分からない。
横井の心には徐々に失恋のショックが広がっていき、放心状態に陥って行く。もちろん、勉強も手につかず、ゆかりに対し何度も上から目線で復縁を申し入れ、結果、彼女からLineや通話をブロックされた。
嫌という程、喪失感を味わわされた。
一方の小池は、ただ救っただけの定光寺から好意を示され、どうして横井から寝取ろうとした自分がゆかりに好かれているのかすら、未だに分かってはいなかった。
寝取り間男ではなく、本当にモテる男というのは、そういうものかもしれない。
評価、ブックマークを頂き誠にありがとうございます!
久しぶりに(徹夜時に急に目覚めて)小説を書いてみたいと半年以上ぶりの完全新作でした。
R15削除ギリギリを狙っていたわけではないのです、R18ノクターン逝きはいやです神様と祈りながらいます。




