時は歩んでいる
追うもの
長く、長く
もうずっと背を追っていた。
随分前方に見える背中を追って。
少し揺らいで見えるその背中は変わらない。
振り返ることも、歩みを止めることもせず、ずっと前に在る。
追いつきたくて、距離を縮めたくて、
焦っても、走っても、
縮まらない。
逆に、離されているかのような感覚。
急に止まった。
あの変わらない背が。
止まったのを機に、さらに歩みを速める。
今まで、たったの一度も近づけなかった背が、すぐ傍に。
でも、知ってしまった。
歯車が壊れたことを。
背は歩みを止めたのではなかった。
待っていたのでもなく、ただ壊れていた。
ガラクタとなり、ポンコツとなり、そこに在った。
目標を失った。
指標を失った。
背中を見て、追っていた世界は明るかった。
そして明確だった。
これから広がる世界は暗く、不安定。
導なく、どこに行くのかわからない道のり。
自分はどこへ行くのだろう。
自分が歩く道は、わからない。
どこかへ繋がる道なのに、一歩手前がすでに崖のような奇妙な不安さがある。
自分は追うものから彷徨うものへと
この時確かに変化が訪れた。
変わらない背から、変わりある未来へと。