炎魔法、有効;奥術魔法、有効
冥冥の中、カンジは自分が落下しているような感覚を覚えたが、高空から落ちる時のような無重力感はなかった。周囲の視界が徐々にクリアになってくると、彼は本能的に両手で頭を抱え、膝を抱えて衝撃を和らげる姿勢を取った。なぜなら、まるで流星のような速度でバル族の首領ヴィロアンの宮殿の屋根に落ちるかのように感じたからだ。
だが、突然カンジの足元に支えが感じられ、目を開けると、彼はさっきの戦場に立っていることに気づいた。しかも、立っている位置は寸分違わず、意識的に屋根を見上げたが、どこにも穴が開いている痕跡はなかった。つまり、宮殿の屋根を突き抜けたが、破壊はしていなかったのだ。
もしかして、造物主はより高次元から自分を送り返したのか?
それは驚異的だった。しかし、本当の驚きはこれからだった。
周囲の時間が、止まっているかのようだった。
目の前に広がる光景は、カンジが小隊を率いてヴィロアンを暗殺しようとする戦闘の真っ只中で、全ての仲間が戦闘の姿勢を崩さず、一切動かないまま凍りついていた。ヴィロアンが放った火炎魔法「彗星」や、その魔法で吹き飛ばされた瓦礫の破片までも、空中で静止していたのだ。
これが「時間停止」と呼ばれるものだろうか?
おそらくこれは、造物主の配慮によるものだった。人が転送される過程は、意識と肉体が一時的に分離するものであり、転送が完了した後、それらが再び融合する。その副作用で数秒から数分間、記憶喪失や鈍さを感じることがある。人それぞれ体質が異なるため、その鈍さの持続時間も異なるのだ。カンジも例外ではなかった。もし彼がそのまま激戦の中に放り込まれていたら、その数秒の遅れが命取りになっただろう。それを防ぐために、造物主は時間を止めたに違いない。
ならば、この空中に止まっている「彗星」を使って、造物主がくれた神剣「斬光」を試してみよう!実は、剣を手に入れたその瞬間から、カンジは「魔法を断ち切る」という概念が一体どういうものか、ずっと想像していた。聞いたこともないその考えは、まるで火を剣で切ったり、風を斬ったりするような、無形のものを有形の剣でどうやって二つにするのかという疑問だった。
カンジは呪文を唱えて斬光を抜き、彗星に向かってごく普通の戦闘スキル「斬撃」を繰り出した。その瞬間、時間は一気に動き出し、火焰で構成された巨大な火球は異常なまでの尾を引いて飛行方向を変えた。まるで風船が破れ、空中を不規則に飛び回るように。
「これが『魔法を断つ』ということか!」カンジは悟った。これは断ち切るのではなく、むしろ「漏らす」といった方が正しい。しかもその効果は遠距離まで及び、まるで遠距離魔法として使えるようだ。まるで水袋を投げつけ、それが空中で破れ、水が全て漏れ出すように。無重力になった袋が人にぶつかっても、もちろん大きなダメージはないだろう。
「ストームスラッシュ!」そう考えると、カンジは「彗星」に向かって剣を振り、次に「ストームスラッシュ」を繰り出した。この技は斬撃の究極進化系で、瞬時に複数の斬撃を加えるものだった。見ると、巨大な暗赤色の魔法は、まるで失敗した花火のように魔法の火花を飛ばしながら、徐々に小さくなり、カンジの目の前で完全に消えてしまった。
晦暗の心・斬光の剣。火炎魔法に対して、有効。
「これはまさに神器だ!」カンジは自分でつぶやくほど感動していた。すべての魔法攻撃が、この剣の前では失敗した花火のようになる。もはや魔法シールドや抵抗強化も不要だ。目を閉じたまま突っ込んで斬りつければいい。魔法シールドも魔法の一部であり、斬光の剣に破壊される範囲に含まれるはずだ。狂戦士として、物理ダメージが最も高い職業である自分が、魔法シールドを無効化した敵の肉体に斬撃を加えたら、それはもう、スイカを切るようなものだろう。
精神支配魔法は、失敗率が高めの暗黒系魔法だ。この種の魔法は「彗星」のように目に見える光の球があるわけではない。カンジは、この無形の魔法に対して「斬光」が効果を持つかどうかは分からなかった。まだ試す機会がなかったからだ。しかも、試すとしても他の誰かにやらせるしかない。なぜなら、狂戦士はこの種の魔法に対して生まれつき免疫があるからだ。
「裏切り者!」アイシーは叫び、彼女の周囲にはすでに暗紫色の光焰が立ち上っていた。「なぜ私たちを裏切ったの?なぜ国王を裏切ったの?なぜ自分の種族を裏切ったの?」
「私は強制的に召喚されたんだ。ヴィロアンを暗殺するのは、私を家に帰すための条件にすぎない。それは契約ではなく、やむを得ない取引だった!」カンジは声を張り上げた。「私はこの世界に属していないし、誰も裏切っていない。ただ、帰るための新しい方法を見つけただけなんだ!」
「そういうことか……」カンジの長い説明は、アイシーに十分な詠唱時間を与えてしまった。「奥義:ホライゾン・ストーム!」
魔法使いアイシー・フィル・モリネは、借金で首が回らない没落貴族の家庭に生まれた。家族の膨大な支出を維持するため、彼女の父親は彼女を公爵の後継者に嫁がせようとしたこともあった。その後継者は、結婚時にはまだお金を持っていなかったが、将来公爵の称号と財産を全て相続する予定の人物だった。当時のアイシーはまだ6歳で、後継者はすでに30歳を過ぎていた。彼はすでに二度の結婚をしていたが、二人とも亡くなっていた。特に一人の妻は体中に青あざを残して亡くなり、暴力を受けたことが明らかだったが、教会の結論は「悪魔に取り憑かれた」としていた。その悪魔とは、教義に従えば、現在の敵であるバル族の首領ヴィロアンを指す。
結局、その後継者はアイシーの成長を待ちきれず、別の人と結婚したが、アイシー自身は父親が自分を年長の男性に嫁がせようとするのを止める唯一の方法は、いつか勇士の側近となり、国王に仕えて王室の莫大な報奨を得て、父の借金を返済することだと理解していた。そのために、彼女は常人には想像もつかないほどの努力を重ね、数々の選抜を経てついに選ばれた。彼女を戦いに駆り立てる動機は、教会が宣伝する信仰や光といった崇高な理由ではなく、純粋に利益だった。だからこそ、カンジは10年間の協力を経ても、彼女を完全に信頼できなかった。利益のために戦う人間に、命を預けるのは難しいのだ。たとえば、今目の前で繰り広げられている状況のように。敵にも使ったことのない究極奥義の魔法攻撃を、数分前までは仲間だった者に向けて繰り出している。10年の友情も、まるで紙のように簡単に切り捨てられた。その理由は、種族の裏切りや名誉の喪失といった高尚なものではなく、カンジの突然の反抗で彼女の借金返済の機会が断たれたからであろう。
アイシーが発動した奥義魔法に対し、カンジは簡単に「ストームスラッシュ」を繰り出し、見事に迎え撃った。数えきれないほどの奥術爆裂弾が宮殿の天井に向かって飛んでいったが、流星のごとく一瞬で消え去り、一つも地面に届かなかった。
「ホライゾン・ストーム」は広範囲に渡る奥術魔法攻撃であり、「彗星」のような単体攻撃魔法とは根本的に異なる。まず、範囲が広く、数が多い。彗星は一つしかないが、ホライゾン・ストームは次々と空に咲く。次に、弾道が複雑でまったく予測不能だ。彗星は一直線だが、ホライゾン・ストームは無数の奥術魔法弾が無作為に放たれ、軌道も不規則な放物線を描く。そして、持続時間も長い。彗星は一瞬で終わるが、ホライゾン・ストームは長時間続く。
しかし、それでも、カンジは全てを数回の「ストームスラッシュ」で中空で打ち消してしまった。
晦暗の心・斬光の剣。奥術魔法に対して、有効。広範囲攻撃に対しても、有効。




