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16話 人殺したち

 レベリングを終え学校に戻ってくると、シャワー室で汗を流す。

 先生曰く「功労者だから」と、一番先にシャワーを借りさせてもらっていた。冷たいが、さっぱりできるのはやはり心地良い。

 いや……そんな気持ちになってる暇なんてないか。

「すいません、上がりました」

「おお、おかえり穂村」

 体を拭き服を来て教室へと戻れば、全員が茣蓙の上でごろごろしていた。いや、飾さんだけは、端の方で体育座りをしているが。

 先生は立ち上がると、ガッツポーズをして温田くんに目配せをする。

「じゃあ次は俺な。じゃんけん勝ったし」

「神聖な勝負に文句つける人、今更いませんよ」

「ならいいが」

 俺は適当に窓際の椅子へ腰を下ろす。

 外はもう暗くなりかけている。朝方の曇り空が嘘のように、空には月と星が煌めいていた。

「ねえ」

 ぼーっと星を眺めていると、横から声をかけられる。

 飾さんだ。声で察したが、なぜだろう、そちらを見るのには少し勇気が必要だった。

 彼女と目が合う。さっき見た星のように、澄んだ瞳をしている。

「ちょっといい?」

「なにが?」

「着いてきて、ほしい。二人で話したいの」

 なにかあったのだろうか。そう思って、いや、あったかと思い返す。

 何の話だろう。責められるのだろうか。しょうがないかもしれない。だって俺が原因なのだから。

 反抗する気も起きず、俺は席を立つ。

「ああ、いいよ」

「じゃあ、こっち」

 井村さんと温田くんは、俺達をちらりと見ると視線をそらした。気づかないフリをしてくれているのか、見なかったことにしているのか。

 俺は飾さんの後ろをついて歩く。彼女は教室を出ると、次々と階段を上っていった。どこに向かっているのか検討もつかず、困惑しながらも足を動かす。

 そうして、見たことのない場所へと辿り着いた。

「ここは……」

 俺の先には上りの階段と、その先に重厚な鉄扉がある。片方の扉の取手には南京錠が引っかかっているが、役割を果たしてはいなさそうだ。

 彼女は階段を上がっていくと、扉に手をかける。半開きになった扉の隙間から星空が見えて、飾さんが上から俺を手招きした。

「屋上。ちょうどいいかなって」

 屋上か。それなりの期間をこの学校で過ごしているが、屋上に入るのは初めてだ。

 俺も階段を上り、二人で屋上へと入る。

 一気に、視界が開けた。

 コンクリート打ちっぱなしの地面。屋上を囲うように設置された鉄柵は空へと伸びていて、その先には一点の曇りもない星空が広がっている。半分欠けたような月は太陽のように眩く、月光を浴びた飾さんは屋上の中心まで歩くと振り返った。

「なにかするつもりでしょ」

 その目は、俺の内面を見透かすように俺を見つめる。

「なにかって?」

「分かんないから聞いてるんじゃない」

 彼女は肩をすくめた。

「けど、なんかしようとしてるのは分かる」

「それは……どうして?」

「様子がおかしい、っていうのはなんだろ、この状況じゃ当たり前だけど」

 一呼吸置いて、彼女は続ける。

「穂村くんはさ、私たちを助けてくれたじゃない。けど、それは学校に戻りたいから助けてって、私たちがお願いしたからだったでしょ」

「ああ」

「でも、今回は違う。ああやってみんなを助けてるけど、なんか……穂村くんに限って、それに意図がないとは思えない。そんな気がする」

 後ろ手に手を組んで、飾さんは軽く首をかしげてみせた。

「ねえ、何をしようとしてるの?」

「…………」

 どうやら、バレていたみたいだ。内心で呟く。

 頬をかきながら、どう話すべきかを思案した。彼女にはどう伝えればいいだろう。傷ついて、きっとまだ癒えていないだろう彼女に。

「しょうもないよ」

「いいから、聞かせて」

「……いや、なんて言うかな」

 けど、どうもこうもないか。大体取り繕ったって大した意味は無いんだ、もうこの際なんだからはっきり言ってしまった方がいい。

「出ていこうと思ってる」

 俺が頷くと、飾さんは目を丸くする。

 ずっと、考えていた。己のやるべきことを。やらなければいけないことを。

 俺はこのゲームをクリアしなければいけない。

 なぜなら、一度そう決めたから。そして、もう引けない位置にいるから。小日向さんという犠牲が出た。俺が踏み出したせいで、人が死んだ。

 だからもう、ここで終わるなんてできない。俺は次に進まなければいけない。

「出るって、ここを?」

「そうだ」

「なんで?」

 問われて、俺は理由を話す。

 そういえば、内に秘めていただけで話したことはなかったな。

「俺、このゲームをクリアしたいんだ。魔王を倒して、母さんを生き返らせたい」

 こうして決意を口にしたのは、初めてだ。

「そうだったんだ」

 納得したように、飾さんが呟く。

「私達を手伝ってくれたときも、なにか理由があるかもなって思ってたの。あれはそれの一環だったってことね」

「ああ」

「けど、なんで出ていくの? ここから出ていったら、ゲームがクリアできるの?」

 彼女の疑問は最もだ。

 このゲームのクリア、魔王を倒すにはどうすればいいのかは、未だはっきりとしていない。この状況を産んだ元凶である魔王からは特に説明をされていないし、システムの中を探してもそこら辺に言及しているものは特に無かった。

「クリアするために解決しなきゃいけない問題は、いくつもある」

「うん」

「そん中でも一番重要って言っても過言ではないのが、魔王の居場所。魔王がどこにいるか分からなければ、倒しに行くことも出来ない」

「そうね」

 俺の言葉に、飾さんは同意する。

「予想とかはついてるの?」

「少なくとも、ここらにはいないんじゃないかなとは思ってる」

 不確定な予測になってしまうが、そればかりはどうしようもない。割り切って、俺の考えを伝える。

「魔王って絶対強いだろ。けど、マッドベアを除けばここにいる敵はそれほど強くないし、なんならマッドベアですら、ゲーム全体で見たらそこまで高いレベルではないはずなんだ」

「え、うそ。そうなの?」

 マッドベアのレベルは23だった。今の俺からすれば高いレベルだ。けど、ゲームってもんは大抵上のレベルが存在する。

「ああ。もっと上のレベルの敵も多いはずだ。ゲーム全体を俯瞰してみたら、滅茶苦茶強い敵ってわけじゃあないと思う」

 基本的には、RPGであればどのゲームも99や100がマックスであることが多い。となれば、23という数値はそこまで大きくないと考えられる。

「で、続きだけど」

 一呼吸おいて、話を続ける。

「この世界は王道のRPG的なものになってると思うって、前に話しただろ」

 飾さんと小日向さんに出会った日のことだったか。初めてゴブリンと戦う前に、そんな話をした。

 覚えているようで、飾さんも首を縦に振る。

「うん」

「そういうRPGってさ、いろんな地域とか国を跨いで冒険するものも多いんだよ」

「そうなんだ」

「ああ。で、最初冒険するとこは大抵敵が弱い。それこそ、ここみたいに」

 ゲームの初めっから敵が強いと、みんな面白くなくてやめちゃうからな。大体はそういう風にできてる。

「けど、次、その次って進んでいくごとに、敵が強くなっていく」

「うん」

「どんどん強くなってく敵に合わせて、こっちもレベルを上げたりスキルを覚えたり、装備を整えたりして強くなっていく」

 王道。その単語まさに当てはまるような、メジャーなゲームデザインだ。

「それで、最終的に強くなったらラスボスと戦う」

 育ったキャラクターと強くなった装備、覚えたスキルをフル活用して最後の敵と戦う。

「ザ、王道って感じの進み方だよ」

 RPGの醍醐味とも言えるだろう。

「だから、基本的にはその地域に出てくる敵のレベルって大体同じくらいに作られてる。最初の方には弱い奴らがいるし、最後の方には強い敵がいる。そう考えると、レベルが低くて弱いこの場所に、強いはずの魔王がいるわけがない」

「なるほど……」

 納得できているっぽい飾さんは、顎に手を当てて声を漏らす。

 この説明で伝わっていればいいが。俺、こういうの下手くそだからなあ。

「で。さっきも言った通り、この世界は王道のRPG。ってなると、この設計がこの世界に適応されてるんじゃないかってと考えることができるだろ」

 俺が言うと、飾さんは深く頷いた。

「言わんとすることは分かったわ」

「ほんとか?」

「うん。要するに、魔王と戦いたいなら、その筋書き通りに進んでいけばいいってことでしょ」

 ずばり、彼女の意見は核心をついていた。

「そうだ」

「なるほどね。だから、ここから出ていって、どんどん強いとこに進んでいきたいってことか」

 俺の言いたいことは、どうやら完璧に理解しているみたいだ。

「ここを出て、どこに行くの?」

「とりあえず北の方に。ほら、ここ鹿児島だろ。これより下ってなると海越えて沖縄行くしか無いし、それは現実的じゃないから」

 きっと船とかまともに動かせないだろう。運転できる人を探す手間も出てくる。そんなことをするよりも、陸を伝って上に移動していくほうが効率的だ。

「北の方に行くと、敵が強くなってくってことよね」

「俺の予想だとな」

 直感的なゲームデザインだ。上に行けば行くほど、敵が強くなっていく。シンプルだが分かりやすい。なんなら、色々な人が生き残っている今の現状を考えると、それくらい分かりやすい設計になっていることには納得感がある。複雑だと、それに適応できる人が限られてくるから。

 だが、もしこれが当たっていれば、北海道とかは地獄になっているだろう。広大な大地にうじゃうじゃと化け物がいる様を想像すると、背筋に冷たい感覚が伝う。

 そこで生き残っている人たちはいるんだろうか。もし俺がその場にいたら……無理かもしれない。

「でもさ」

 納得していたはずの飾さんが、話を引き戻した。

「それが、みんなを助けてることにどう関係してくるの? もしかして、みんなを育てて仲間にして、連れて行くとか?」

 飾さんの言っていることはおかしくはない。なんなら真っ当なものにすら見える。

 だが、俺はそんなことをする気はなかった。

「いいや、単純に放置してられないからだよ。俺が教えたりしなかったら、それが原因でどこかで新たな犠牲が出るかもしれない。それは俺は嫌だ」

「ってことは、見捨てるわけにはいかないから、最低限育ててから出ていこうって思ってるってことなのね」

「そうだ。みんなが自力で生きていけるレベルにまで育てば、俺は行くよ」

 何もせずにここを発つのは、あまりにも責任感に欠けている。ほっといて進むほうが時間効率的には良いかもしれないが、人道的ではないだろう。

 俺は人を見捨てられる性格じゃない。何より、そんなことをしたら罪悪感で寝覚めが悪くなる。

 人が死ぬのは、二度とごめんだ。もうあの光景を見たくもないし、あの感情を知りたくもない。

「みんなを連れて行かないのはなんで? そっちのほうが、人が沢山いて戦いやすいと思うんだけど」

「俺の勝手に付き合わせるわけにはいかないだろ。上に行けば危険が伴う、そんなのを強制するとか無理だ」

 それに。

「それに、俺は格ゲーをやってきた人間だから。ソロプレイには慣れてるし、そっちのほうがいいのかもしれない」

 格ゲーってのは、一対一だ。俺と、対戦相手しかその場には居ない。その他の人間はそこに介入できない。

 そんな環境で生きてきたからか、一人で戦うことが多かった。それについては文句も不満もなにもない。性にもあっていたし。

 自分一人で一つのことを突き詰める。それは、案外楽しいしやりやすい。

「穂村くんって、責任感が強いのね。いい人だと思う」

 そんなことを、急に飾さんは口にする。

 俺はすぐに頭を振った。

「いやそんなことないよ。俺は……少なくともいい人ではない」

 いい人ってのはきっと、自分のせいで誰かを死なせることなんかしない。

 俺が今やっていることを善行と呼ぶ気はさらさらなかった。これは単に、やらなければいけないと思っただけの、端から見れば体裁のいいだけの、言わば偽善だ。

 小日向さんの死の上に、今俺は立っているのだから。

「俺は、みんなを死なせたくない。それだけだよ」

「……ええ」

 飾さんは、確かにその言葉に同意した。

「…………俺は」

 冷たい夜風が頬を撫でる。

 星空は今も曖昧な光を、この大地に届けている。さらさらと、飾さんの髪も揺れていた。

「俺は、こう思ってる」

 この言葉を口にするのは、勇気が必要だった。

 けど、言わなければいけない。

「死んだ小日向さんに報いるためにも、やらなきゃいけないことをしないとって」

 飾さんははっと目を見開いた。

「俺は小日向さんを守りきれなかった。人殺しも同然だ。俺が二人を連れてきたんだから。だからこそ、もう止まっていられない。犠牲が出たのに走るのをやめるなんて、そんなのが一番終わってる」

 彼女は噛みしめるように漏らす。ふるふると、毛先が横に揺れた。

「それは……違うわ」

 俺はただ黙って続きを待った。

 苦しそうに、中々でてこない言葉を、飾さんは紡いでいく。

「穂村くんは私達の願いを聞いて、手伝ってくれた。家まで貸してくれて、怪我しそうになってまで戦ってくれた」

 彼女の視線が、俺をはっきりと捉える。思わず顔を反らしてしまいそうなほどに、彼女は痛々しい表情を浮かべていた。

「私は何もできなかった。あの戦いの中で、離れて見ていることしかできなかった。気がついたら、つむぎが死んじゃってた」

「……」

 飾さんは拳を握りしめた。目が震えて、一筋の涙がこぼれ落ちる。

「穂村くんが自分のことを人殺しだって言うのなら、私も同じ人殺しよ」

「……それは」

「私はつむぎの親友なのに。後ろで見てただけで、なんにもできなかった。レベリングの時だって、ついて回っただけだった。ただ装備を作るだけで他には何もできなかった」

 防壁を突破した洪水のように、感情が勢いよく溢れ出す。

「私が戦えたら。違う職業だったら。スキルをなにか持っていたら。レベルがもっと高かったら。せめて、役立たずなりに肉壁にでもなれたら、つむぎは死ななかったのに」

 揺れる瞳から溢れて止まらない涙が、何粒も何粒も、飾さんの頬を伝って地面へ落ちていく。

「急に世界が変になって、友達も家族も全員居なくなって、残ったのはつむぎだけだったのに。私の、一番大事な人だったのに。私は、私は」

「飾さん、落ち着いて」

 俺は駆け寄って、けど、それ以上は何もできなかった。

 どうすればいいか分からずオロオロしていると、飾さんは両手で俺の両肩を掴んでくる。

「ねえ、穂村くん。私も連れてって」

「え?」

「私も、つむぎに報いなきゃいけない。死んだってだけで終わりにしたくない。つむぎの死を無駄にしたくない」

 言葉は、半分涙に溶けていた。

「泣いて終わりたくない」

「飾さん……」

 泣き腫らした目で、飾さんは俺に訴える。

「ねえ、魔王を倒したら、誰かを生き返らせられるんでしょ」

「あ、ああ」

「私も、つむぎを生き返らせたい。それで謝りたい。だから一緒に行きたいの、穂村くん」

 その言葉の意味を、飾さんは理解しているのだろうか。

 魔王はこう言っていた。魔王を倒せば、誰か一人を無条件で生き返らせることができるアイテムを入手できると。

 それは要するに、生き返れるのは一人だけだってことだ。俺が母さんを生き返らせたいと思うのなら、他の人が誰かを生き返らせることはできない。

「それは、飾さん」

「分かってる。あいつが言ってたのも、ちゃんと覚えてる。穂村くんがお母さんを生き返らせたいなら、私はきっと無理かもしれない。けど無理よ、諦められないわ」

 それを分かった上で言ってるのか。それがどういうことなのかも、きちんと理解しているのか。

 もしそうなれば、俺は飾さんと敵対する時が来ることになる。アイテムを巡って、二人で争う時が必ず訪れる。だがきっと飾さんが望むのはそんなものではないだろう。俺もそれだけはやりたくない。

 気持ちは分かるが、動機が矛盾している。

 彼女は落涙する。現実を受け止めて、それでも抑えきれなかった感情が冷たいコンクリートに染みを作る。

「無理だとしたら、ならせめて、穂村くんが冒険するその手伝いがしたい。つむぎがあの時していたみたいに、私も一緒に戦いたい」

 泣き腫らして赤くなった目が、ふと和らぐ。

「知ってる? つむぎって優しいの」

「ああ、それは今まででよく伝わってきてたよ」

「つむぎはね、きっとこういうとき、こう言うはず。私も手伝うよって」

 そのセリフを聞いて、俺も、きっとそうだろうなと思ってしまった。

 そうか。飾さんは、小日向さんの意思を継ぎたいんだ。死んでしまった小日向さんと共に、まだ歩いていたいんだ。

 その先に待っているのが、厳しい現実だとしても。

「飾さん」

 いや、或いは。

 それが彼女なりの弔いなのかもしれない。そうすることで、段々と死が受け入れられるのかもしれない。

 大切な親友がいなくなった。それを、ここで黙って抱えているのは、きっとあまりにも苦しいはずだから。

「……分かった」

 思わず、頷いてしまった。

 それを否定できなかった。だって、俺もそうだから。

 母さんの死を信じられないから、俺は魔王を倒し、生き返らせようとしている。

 本質は多分、そこまで変わらない。

「ほんとに?」

「ああ。一緒に行こう。ただ……」

 言葉が喉につっかえた。けど、勢いでそれを吐き出す。

「……ただ、もし魔王を倒せたら、その時はちゃんと話し合おう。一緒に旅をするなら、俺達は対等なはずだろ」

 きっとこの言葉は、口にしないほうが良かったんだろう。だってそうすれば、飾さんは俺が母さんを生き返らせる時に何の障壁にもならない。ただ俺を助けてくれてるだけの、いい人でしかない。

 けど、黙っていられなかった。だって無理だ、こんなにも罪悪感にかられて泣いている人を前にして、俺はその人を利用するだけで終わりにはできない。

 母さんはそんなことを俺に教えていない。もしそうして生き返らせれば、俺を怒鳴るだろう。なぜその時に、こう言わなかったのかと。

 俺達は、同じだ。

 死んだ人に縛られている。あの時からずっと、対等の立場だ。

 それに。

「だから、そういうことで頼むよ」

 俺は母さんを生き返らせたいと言った。今でもそう思っている。

 けれど、今の俺が母さんを生き返らせるべきなのかは、その権利があるのかはよく分からない。俺の隣に立ち、そこで死んだ小日向さんを生き返らせるべきなんじゃないかと、本当ならそうすべきでないのかと、俺は俺を疑っている。

 だからこそ、それで構わない。もし話し合った結果やはり小日向さんを生き返らせることになったら、それは、きっとそれが正しいのだと思うから。

「穂村くん」

 飾さんはしゃくり上げるように泣き始める。声を上げて、慟哭する。

 俺はただその横で、慰めるように背中を撫で続けた。

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