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夢世



美夜は魂のまま夢の世界をぷかぷかと漂っていた。



魂には聴覚や触覚、視覚など全ての感覚がない。



それがゆっくり休む時間としてはちょうどよかった。




ただ一つ、美夜には問題があった。



それは・・・



「美夜、私だよー。大丈夫か。生きてるか。」



聞こえるのだ。



「なんであんたの声は聞こえるの。私の身体で元の世界に向かったんじゃないわけ?」



「あれ、その感じだとまだぷかぷかと漂ってるね?その世界は貴女の世界だ。貴女は眠くならないし、貴女の気分を害する存在はその世界には一つもないよ。」



「それは身体を貸す前に聞いた。ただ、心地がいいんだこの状態は。まぁしばらくしたら遊んでみるよ。」



「うん、それがいい。」



「で、なんであんたの声は聞こえるわけ?」



「不満なのかしら。美夜の魂と身体を完全に隔離することも出来なくはないけど、そうしちゃうと二度と戻れないのよ。だから紐のように細い状態で繋がっているわ。その結果、私の魂と美夜の魂のほんの一部が重なり合うことになっているの。」



「でもほんの一部なんだろ。その割には鮮明にお前の声とか感情が入ってくるんだけど。」



「ほんの少しって言ったって、魂だよ?魂がどれだけ重厚なエネルギーか分かってないね。」



「まぁいいや。正直眠気も完全になくなっちゃったし、お前の事聞かせてよ。」



ヨミは待ってましたと言わんばかりに口を開く。



「私の名前はヨミです。貴女の(つい)であり、なんとその世界を構築した者なのです。」



ふーん、と美夜は返答した。




「・・・それだけなの?」



「んー・・・色々気にはなるけど難しそうだし面倒くさい。とりあえずこの世界のことだけ教えてくれればいいわ。」



何ができるのかとか、と美夜は付け加えた。



「その世界は夢世と呼ばれている世界で、現世と対になる場所だよ。」



そうしてヨミは続け様に言う。



「あ、貴女は(つい)について最低限は知る必要がある。だから今から説明するわ。」



美夜は静かに聞いている。



「まず、前提として全てのモノは0に辿り着こうとする力があるの。そうでないと無数に増え続けてしまうからね。これは自然の摂理だと思って貰えればいい。」



美夜は未だ一言も口を開かない。



ヨミは続けて語る。



「つまり1と-1ってこと。で、この反する箇所の事を"(つい)"と呼ぶわ。」



美夜が欠伸をしたのが伝わる。



「現世や当の本人からはそれらの対・・・要するに夢世やその人の対は観測できない分、人間には浸透していない知識なんだけど。」



美夜がウトウトしながら口を開いた。



「つまり鏡合わせみたいなことね。」



ヨミはそれを肯定する。



「鏡合わせとは言っても、それぞれが抱える総エネルギー量とそのベクトルだけだけどね。」



「あー、つまり完全に同じ動きをしてるわけじゃないってことね。お前、伝え方下手すぎるよ。」



説明してやってるのになんて事を・・・と若干思いながらもヨミは説明を続けた。



「動きだけじゃなくて姿形や時間なんかも変わってくるわ。」



「ふーん。私とヨミあまり似てないもんね。かと言って真逆ってほどでもないし。ばらつきはあるってことね。」



「そういうこと。」





数秒の沈黙の後、美夜は焦ったそうに口を開いた。



「で、この世界では私は何ができるわけ。」



「この世界の創造者なんだ。なんでもできるよ。」



美夜の左腕が機関銃に変形するのが伝わる。



「へぇ、すご。」



ドガガガと指のような形状の弾丸をばら撒かせながら美夜は呟いた。



「乙女心皆無だね、貴女は・・・」



「そりゃそ、でしょ。」



気だるそうに話したかと思ったら、今度は少し語感を弾ませながらヨミに尋ねた。



「ねぇ、こっちの人間を殺したらどうなるの?」



ヨミは答える。



「エネルギーの均衡が取れなくなって膨張するよ。」



「んー、焦ったいな。エネルギーが膨張するとどうなるのよ。」



「そりゃ入れ物は爆ぜるに決まってるだろう。で、エネルギーが街に漏れ出して他者又は世界のエネルギーに蓄積される。ちなみにそうしてエネルギーが蓄積されていくと・・・」



美夜はヨミの話を聞いてさえいないように話に割り込んだ。



(むご)ったらしく死ぬってことね。」



途中まで意図が読めなかったヨミは戸惑いながら肯定した。



ヨミは美夜が注意事項を確認したのだと思ったのだ。



しかしヨミは美夜の口角が不敵に上がったのを感じると、すぐに美夜の心中が分かった。



ヨミが呆れながら美夜に言う。



「あー。・・・やり過ぎるなよ。」




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