ぽよぽよぷるぷるぷにっぷに
「助けてくれてありがとう。君は優しい人だね。」
先ほどまで隅でプルプル震えていたスライムのようなモノは、身体を震わせながら美夜にお礼を言う。
「どういたしまして。お前の為じゃないけど。」
美夜の敵意に近い強い語感にまたスライムはプルプルと震えた。
「じゃあね。スライム。」
美夜は興味ないと言わんばかりに立ち上がると、後にしようと踵を返した。
「ぼく、ぽよぽよ。」
スライムの、とはいえ小さい声での自己紹介は美夜はおろか、この世界の誰の耳にも届かなかった。
引き続いて美夜は悪そうな人物を探そうと、夢世を歩いている。
この世界について、美夜には分かったことがあった。
ここはまず木々や蝶、太陽や月まで皆歌を歌うということ。
彼女ら(彼ら?)はオペラからジャズ、ポップスなどなどジャンルは問わず、状況に応じて楽しそうに歌っている。
そしてそれは、創世者であるヨミと変わった影響なのか、美夜の気分に合わせて変わることが多い。
次に、人間が居なく、その代わりありとあらゆる形状の生物がいるということ。
これはヨミ曰く、物理法則を気にする必要がない世界だから、魂の形に起因した形状の生物が誕生し、その結果法則性がなくなったとのことだ。
そして、それらが現世の人間を含む生物の対になっている夢世の生物らしい。
そして最後に、創世者は何でもできるが、それを実現をすることが非常に難しいこと。
どうやら自身の認識の上で、想像が現実の境界線を変えた場合にしか実現が不可能・・・つまり、ごく高い想像力と自身を絶対的に倒錯させる必要があるらしい。
例外として他者や現世と対になるものが存在しているモノには干渉ができない。
ヨミはこれについて「慣れれば簡単。」と言っていたが、どうしても現世で培ってきた"当たり前"が想像の邪魔をしてきて、難しすぎるものは実現させられそうにない。
少しの実験の結果、結局美夜が実現できることはせいぜい自身の形状の一部を変化させることと、自身が酷い目に遭うということだけだった。
「しかし意外と治安悪いな。」
美夜が森を歩いていると、木の陰でおそらく少年であろうグミのような生物が、同年齢程度のゼリーのような生物にイジメをしているのが見えた。
「・・・流石にアレじゃ、ねぇよな。」
美夜はまるでゴミ拾いをするかのようにグミ状生物の身体に弾丸を打ち込んだ。
ぷぐりゃと爆ぜたグミ状生物の身体の一部が美夜の通り道に飛び散る。
ぷちゅ、ぷちゅとそれを踏み越える美夜。
「あああああ、グミ汰!!」
美夜の後方で何故か泣き声をあげる、先ほどまでグミ状生物にいじめられていたゼリー状生物。
「なんでだよ。」
美夜は振り返りもせず呟くと、また歩みを進めた。
少しして、相変わらず美夜が悪人を探して歩いていると、どこかから怒声が飛んできた。
「おい話がちげぇぞ小僧。」
「ごめんなさい、絶対必ず来週までには払いますから!」
美夜は機関銃を構えて声のする方まで走っていく。
「どうしました?」
美夜が声の主達を覗き込む。
そこに居たのは、緑色の身体をした巨人と、スライムのようなポヨポヨとした生物だった。
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