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地雷系美人と冬季と前世の徳について。

PM20:30


息を切らしながら、冬季はとぼとぼと会社近くを歩いていた。


先ほどの状況はもしかすると夢だったのではと、

強めに耳たぶを引っ張ってみたがちゃんと痛い。


れいと桐島を被写体に写真を撮ったことも、

桐島が不安そうに話をしてくれたことも、

2人が笑いかけてくれたことも、すべて現実だったらしい。


(・・・・前世でどんな徳を積めばこんなことになるんだ?)


走って疲れたせいか、思ったより冷静に前世の徳について思いを馳せる冬季。


前世の徳に思いを馳せたところで残してきた仕事は消化されないので、

ひとまず会社最寄りのコンビニへ入り、

ある意味おなか一杯の中食べられそうなものを探すことにした。


「あれ?冬季ー?」


聞き覚えるある声にぱっと顔を上げる。


入口すぐの雑誌売り場の向こうから、

黒いロングヘアをくりくりに巻いた女の子が小さく手を振る。


「るい・・・」


コンビニで声をかけてきたのは、

冬季の大学からの友人、平田るいだった。


黒いロングヘアをくりくりに巻き、

まつエクでわさわさにしたまつ毛は濃いのに可愛さが勝る地雷メイクに馴染んで

大人の地雷系女子という言葉がよく似合う。


「どしたの、なんかしゅんとしてるね」


アパレル店員のるいはいつもオシャレな恰好をしている。

今日はアイボリーのふわっとしたブラウスにレザーのミニスカートを合わせて、

上に白いふわふわのコートを羽織っている。

足元は黒のデニール薄目のタイツにショート丈のブーツ。


そんな可愛いの塊が冬季を見つめて首をかしげている。


「るいさん・・・ちょっと会社まで来てくれない?」

「え、なになに、怖いんだけど」

「ここでは到底話せないんだけど、どう考えてもるいに話したいことがある」

「なにそれめちゃくちゃ楽しそう。いいの?部外者入っても」

「ほんとはダメだけど今日は良いの。私が許す」

「3年目どんな権力あんのよ~、とりま夜ごはん買ってもよろしい?」


どんな話が聞けるのがるんるんのるいと共に夜ご飯を調達し、

コンビニを出て会社へと足を向ける。


「ていうか今日も残業?」

「うん、明日休みだし終わらせたい事務処理あってさ」

「あんたねー過労でいつか死ぬよ?死んだらゆっくんにも会えなくなるんだからね」


ゆっくんとは、桐島ゆきのニックネームであり、ファンが呼ぶ名前である。


実はスウィートリチアを冬季に布教したのは、るいだった。

るいはデビュー前からスウィートリチアを推すいわるゆ“古参ファン”であり、

大学1年生の時から冬季へ布教を続け、ついにデビュー直前で取り込みに成功したのである。


「・・・だったらもう死んでもいいのかもしれない」

「は?え、大丈夫?仕事でなんか辛いことあったの・・・?」

「・・・とりあえず会社に入ろう、話はそれからだ」

「なんなのその成金みたいな言い方」


会社に到着し、鍵を開けてるいを中へ通す。

暖房はつけたまま出ていたため、部屋の中は暖かく、

すっかり寒さを忘れていた冬季もその温度にほっとした。


「こちらどうぞ」


倉持の椅子を近くへ引っ張り、るいにすすめる。

るいはコートを脱いで背もたれにかけ、コンビニの袋を机にながら腰を下ろした。


「それで?到底外では話せない超面白い話とは?」


ぱちぱちのお目目が期待をふんだんに込めてこちらを見る。

冬季は一つため息をついてから、先ほどの出来事を記憶にある限り話した。

もちろん事務処理は再開し、手は淡々とキーボードを打ち、口では動揺しながら。


「はー・・・・どんな徳積んだらそんなことになんの?」

「奇遇だね、私も自分の前世に思いを馳せてた」


スウィートリチアももちろん一般市民と同じ暮らしをしているため、

街中で見かけてもおかしいことではない。

ただ売れっ子アイドルなだけあり、出没情報が勝手に共有されていたとしても

アイドルの公式側は硬く彼らのプライベートを守っている。

そのため冬季もるいも一度も彼らを見かけたことはなく、

桐島たちに会えるまでは死ねないねとよく言っていた。


るいは静かに話を聞きながら、終始目をぱちくりさせ驚きを隠せないようだった。

ただるいのすごいところは、驚く話を聞いてもレスポンスが冷静なところだ。

冬季の話に羨むわけでもなく、ただ静かに前世の徳について触れてくるあたり

彼女は人生3回目なのではと思える。


「で?冬季がしゅんとしてる理由はファンばれしたこと?

それとも勢い任せに告白しちゃったこと?」

「うーん・・・全部やっちゃったーってしょげてたけど、

なにより桐島くんのことが心配になっちゃったかな・・・」

「あんたはほんとに桐島くんが好きだねぇ。

でも最後ちゃんと笑ってたんでしょ?」

「うん、あんまり覚えてないけど、れいくんとにこにこしてた気はする」

「だったら、我々ファンはもう心配も詮索もするべきじゃないんじゃない?

テレビの前で見守って、これからのリチアを推していくしかない」


古参ファンのわりに推し活への価値観がからっとしているるい。

その考えに冬季もぐちゃぐちゃしていた頭がすこしすっとしていく。


「・・・そうだよね!変わらず桐島くんを推すだけが私の役目だよね!」

「そうそう、余計な心配と詮索が一番彼らの足枷よ!

・・・ところで、その撮った写真・・・見せてくれたりする?」

「・・・見るだけだよ?」


スマホの画面をるいに見せる。

と、同時にぴこんと通知バーが上部から顔を出した。


「え、ちょっとまってよ」

「え、なに?違う写真だった?」


るいに向けていた画面を自分の方に戻すと、

通知バーの表示に思わず顔を近づけた。


【<ファンクラブ情報>クリスマスライブ緊急開催!__】


突然のライブ告知に、冬季とるいは顔を見合わせた。


「「____え~~~~?!」」






こんにちは、向井です。

やっぱり投稿が空いてしまいました・・・。

仕事から帰ると死んだように眠るのはいい加減やめたい。


5話目にしてるいちゃんが登場しました、お気に入りのキャラクターなんです。

おめめくりくり、黒髪ふわふわ地雷系女子、超好き。ほんとにいるかな?そんな人。


東京行ったら会えるかなー・・・


それではまた次話で、宜しくお願いします。

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