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リウビアと共に旅する魔法の木  作者: 阿古久曽
17歳になった私と“木”との再会
6/26

計画始動

 部屋に差し込む日光で私は目を覚ましました。

「う~~ん。」

私はベッドから起き上がって、思いっきり背伸びをします。

お母さんが、下で食器を並べている音が聞こえてきます。

机の上を見て、マートルさんが確かにいることを見て

夢でなかったことにほっと一息ついてから、着替えるためにベッドから下りました。

「リウビアよ、おはよう。」

「うわっ!びっくりした。起きているなら言ってくださいよ。

動かない分、ただでさえ分かりにくいので。」

キッとマートルさんを睨んで言いました。

...本当に心臓に悪いですからね。

空色のブラウスに白のスカートを合わせ、一階へ下りました。

こんがりと焼いたパンの匂いが鼻に広がります。

「お母さん、おはよう!」

「リウビア、おはよう。パンできてるわよ。」

「それでは、いただきます。」

半熟の目玉焼きを乗せた、焼きたてのパンは至高です。

...異論は認めますが。

ともかく、贅沢な朝食をいただいた私は、カバンの中にマートルさんを忍ばせて家を出ました。

「いってきま~す。」

無限に広がる蒼い空へ目線を上げ

学校に向かって、勢いよく走りだしました...が

「リウビア~お弁当忘れてるよ~。」

おっとっと。

駆けだした足を止めると、カバンの中で「イテっ」という声が聞こえたような気がしましたが

今は特に気にする必要もありません。

お母さんからお弁当を受け取って、次こそ学校に向かって駆けだしました。


学校での私はいつもと何ら変わりありません。

なぜなら、活力を多く使えるようになっても、賢くなるわけではありませんし、

魔法の授業で、変に活力を使わないよう、マートルさんに釘を刺されていましたので。

つまり、私“たち”の計画は放課後から始まるわけです。


                     〇


 お弁当を食べてやる気に満ち溢れている私は、

食後の授業を終えると、ニアとお母さんに断って

色とりどりのガーベラが咲く草原へと行きました。


 たくさんの宝石に囲まれる中、

私は人が周りにいないことを確認してから、カバンからマートルさんを取り出しました。

「それで、何を教えてくれるんですか?」

右手にマートルさんを握った私は、はやる気持ちを抑えてそう聞きました。

「それでは、シールドの張り方を教えてやるとするかのぉ。」

シールドですか...とっても面白そうですね!

「それでどうやるんですか?」

マートルさんは、少し溜めた後もったいぶったように話しました。

「お腹に力を入れ、分厚い板のようなものを意識しながら、右手で円を描くんじゃ。」

「こうですか?」

よくわからないまま、私は取り敢えずお腹に力をギュっと入れて、

枝を持った右手で円を描いてみました。

......まるで何も起きません。

サッと吹いた風が、まるで私をあざ笑っているように私の髪を乱しました。

「...失敗じゃな。」


 ――1時間、いや2時間ほど経った頃でしょうか。

ついさきほどまであったやる気は消え失せましたが、

心を落ち着かせるために、私は一度深呼吸をし、木版を彫刻刀で彫るように

じっくりと空気に円の形を刻み付けました。

ちょうど一周したころに、私の右腕が何かに引き寄せられるように

ぐぐぐっと動いたかと思えば、私の目の前にギザギザの、歪なレンズのようなものが現れました。

近くにあるガーベラが小さく見えるので

どうやら真ん中がへこんでいるようです。

「やっっっった~。」

私は少し赤みを帯びた空にこぶしを突き上げました。

「成功じゃな。」

その声を聴きながら、しだいに空気に溶けゆく物体を静かに見守りました...。

こうして、マートルさんによる私の強化計画初日は、一日目としては上出来の結果で終わりました。

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