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リウビアと共に旅する魔法の木  作者: 阿古久曽
木との最初の出会い
3/26

初めての学校へ行く

あれから10年の月日が流れました。

「いってきま~す」

「気をつけてね、いってらっしゃい」

澄んだ空気に響きわたる声を聞きながら

私は颯爽と走り出しました。


夏のカラッと乾いた風が小麦畑を撫でるたびに

一面青一色だった中に白い模様が浮かんで

さざ波が小麦畑を駆け抜けていきます。

そんな波を追って私は、学校に通う道すがら

学校に入ったばかりのことを思い出していました。


                     〇


2年前、15才になった私は村にある...と言っても1㎞くらい離れている

学校に通うためにお父さんと挨拶に行きました。

お父さんに連れられ始めて行った学校は

私の家と違って、木でなく赤や白の石で出来ていました。

正直、その時は無機的な雰囲気が嫌いでした。

...と言っても今は大好きですが。

もしかしたら石の持つ冷たさが

嫌いだったからかもしれません。

何はともあれ

お父さんと一緒に学校の中に入ると奥から

小綺麗で老練そうなおばあさんが出てきました。

「おはようございます。朝早くからどうもありがとうございます。

 どうぞこちらへ。」

そう言って私たちは応接室のような所に通されました。


 応接室の中は外見と違い落ち着いた色の木で構成されていました。

なかなかいいじゃない――なぜか上から目線で部屋を評価していると

「リウビア、いいよな?」

唐突にお父さんが聞いてきました。

まずい...何も聞いてなかった...

とりあえず首肯しておくことにしておきました。

「では、よろしくお願いします。」

「いえいえこちらこそ可愛い娘さんをお預かりできてうれしいです。」

まぁ学校に行く準備みたいなものだろうな...

その後の話からたぶんそうだろうと分かったので少しほっとしました。


 そんなこんなで私は正式に学校に行くことになりました。

翌日の朝、服装を整えゆっくりと家を出ました。

お母さんが私を不安にさせるようなことを

いろいろ吹き込んできたせいで私も心配しすぎてしまって

学校までの道のりはとてつもなく長く感じました。


 学校に着き、慣れない手つきで靴を脱ぎ

何度も確認してくしゃくしゃになった学校の地図を頼りに

教室にたどり着いた私はそっとドアを開きました。

中庭から差す日光で照らされた教室内は

想像よりも...というか完全に静まり返っていました。

 あれ...学校ってこんなものなのか?

そう思いながら机に張られた名札を手掛かりに、私はそっと席に着きました。

「...うん?」

席に座った私の足元に何か落ちています。

何だろうと思って拾ってみると誰かの名札でした。

「ニア...」

辺りを見ると前の席に名札がありませんでした。

その子もほかの子のように石のように動きません。

「...すいません。名札...これってあなたのですよね?」

「え?...あ、ありがとう。ごめんね、気づかなかった~。」

随分と軽いノリですね...。


 その子と少し談笑し、地獄のような気まずい空気を和らげていると、

昨日会った女性が入ってきました

「新入生の皆さん、おはようございます。

 この学校で校長を務めております、ニエベと申します。

 さて今日は初めての登校ということでこの学校について

 簡単な説明をさせてもらいますね。」

 あ...みんな新入生なのね...どうりでみんな静かだと思った。

「この学校は主に魔法と国語、数学と理科を教えています。

 魔法の先生は..........................................」

長々続く説明を聞いて、私の学校デビュー1日目はあっさりと終わりました。

心配しすぎたせいで疲労困憊ですが、まぁその心配が杞憂で終わっただけ

満足としましょう。


                     〇


昔...と言ってもたった2年前の思い出に耽っていると

気付けば、私はだだっ広い平野を抜けて

村の中心部に着いていました。


村の中心部には、いろいろな場所から集まった

色とりどりの服装の人たちがいて、その光景は

まるで世界の縮図のようです。

...私はこの光景がとっても好きです。私自身が冒険しているみたいなので。

 学校に行くためにはここを抜けなければならないので

通りぬけようと、私は無理矢理人を押し分けました。

「おはよう、リウビアちゃん。」

「おはようございます。」

私に向かって、挨拶をしてきた人がいます。

鳥の羽が刺さった帽子をかぶった彼は、お父さんが良く利用している商人です。

以前のジャガイモも、彼から買ったものでした。

「今日は遠くの海から面白い物が入ってきてるからお父さんに伝えといて!」

「わかりましたよ。帰ったら伝えておきます。」

それにしても、挨拶というのは不思議なものですね。

人と人を結びつけて、なおかつ自然と気分を良くしてくれるんですもの。


学校に着いた私は慣れた手付きでで自分のクラスに

行き、勢いよくドアを開けました。

「あ、リウビア、おはよう。」

「おはよう。」

前に座っているというニアと

挨拶を交わして、私は席に座ると

彼女は後ろを向いてきました。

「ねえねえ、今日はどうする?」

.........。

放課後のことについて話を膨らませて

心躍らせていると

一限目の先生が入ってきました。

さっと彼女が前をむくと同時に

熟れたリンゴのような色をした彼女の髪が

ふわっと揺れ、そこからスズランの香水の、甘い匂いが

私の肺に広がります。

さて、今日も頑張りましょう!


 一限目は魔法の授業です。

「魔法の源は、自然の持つエネルギー、“活力”です。

 ですから、無理矢理魔法を使おうとすると

 必ず失敗します。焦らずゆっくりと、

 自然に身を任せるようにするのがコツですよ。」

そう言っているのはエラン先生です。

「理論ばかりで実践が少なすぎる」と

一部の生徒からは文句が上がる人ですが

私を含め、みんなの魔法の精度が高いのは確実に

丁寧に仕組みから教えてくれる彼女のおかげです。


 一限目に、食べ物の鮮度を保つ魔法の仕組みを教えてもらい

外から教室へと歩いて戻っていると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえました。

振り返ると、同じクラスのレオンという名前の男の子...だったはず、がいました。

「今日の授業さぁ...全くわからないのだけど、どうやってすればいいんだ?」

「う~ん、先生の言う通りに、自分も自然の一部

 だと思えば、自分の中でピースがはまるようになって

 自然と出来るようになるとおもうけどなぁ。

 少なくとも私は、それで出来るようになったよ。」

「う~んわからん。単にお前が賢すぎるだけじゃ...。

 と言っても、前はリウビアのおかげで成長魔法が出来るようになったからなぁ。

 とりあえず、参考にしてみるよ。」

こんな風に私は、成績が一位だから、という理由で

質問を受けることがあるのです。


残りの授業も難なく...と言っても文字通り何もなかったというわけではなく

居眠りをした生徒に激怒した数学の先生が教室を出て

それを私が仲介したり...と言ったことがありましたが

一応は終えて、私はニアと一緒に帰路につきました。

「疲れた~。ほんっとうに厄介ごとを引き起こすやつがいて大変だよ。何とかしてほしいね。」

「アハハ...確かにね。ともかく、朝言った通り

 家にカバン置いたらリウビアの家に行けばいいよね?」

「うんいいよ。それじゃあ、また後でね。」

店が立ち並ぶ場所を抜けて、すこし歩いたところでニアと別れました。

 裕福な家に生まれたニアは、つい最近教えたかくれんぼが

たまたま好みに合ったようで、今日もいっしょに、私の家の裏にある森で遊ぶのです。


 家に着いて、お母さんからちょうど許可を得て外へ出たときに

向こうからニアが走ってくるのが見えました。

「ごめ~ん、待った?」

「ううん、全然。」

「良かった~。それで、どっちが鬼の役やる?」

「私はどっちでも良いけど...」

「じゃあ、じゃんけんで決めよっか。負けた方が鬼の役ね。」

ニアの言うがままに、私たちは「じゃーんけんぽん」と

手を出し合いました。

私はグー。

ニアはチョキ。

つまり私は隠れる役です。

「今から10秒数えるからその間に隠れてね。

 範囲は、この黒い木が生えてる場所ね。」

だいたい、50m×50mくらいの広さでしょうか。

とにかく、私はなるべく奥に向かって走り出しました

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