入城
さんさんと降り注ぐ光が食堂の中を満たしていました。
私たちは軽い朝食を済ませて宿を出ました。
「今日もよろしくお願いします」
御者の人にそう言って馬車は都へと向かい始めました。
〇
「リウビア!見えてきたよ!」
心地よい振動に寝かけていた私が目を開けると、
眼前にはうずたかく石を積みあげた城壁がありました。
石の細かな凹凸に光が当たってできた影がより一層の迫力を生み出しています。
「うわぁ......大きい......!」
思わず前のめりになった私を見てニアが笑っています。
そういえば......
私はふと思い出します。
私自身、数回だけ来たことがあるそうです。
が、まだ幼いころだったせいか、今見るこの光景ははっきり言って新鮮でしかありません。
手続きを済ませる間も私は延々と続く城壁に感心していましたが、
中へ入る許可を貰い、馬車を前へ進めている時には私の胸は高鳴っていました。
なんせこの国で最も絢爛豪華な場所を今から見られるのですから。
「おぉ......」
そうして中へ入ると、青空の中に櫛比した建物が現れました。
その中でも私たちの目を特に引いたのは三本の突出した建造物です。
真ん中のは十字架がてっぺんで輝いている辺り、教会でしょうかね。
あと二つは......よくわかりません。
「ニア、左右の高い建物って何なの?」
「ええっと左の方は王様の住んでる王宮で、
右はこれから私たちが通う王立学校と研究所が入ってる建物だったはずだよ」
ニアはなぜか誇らしげに私に説明します。
「へぇ......あれが王立学校なのかぁ......」
装飾が施されている絢爛豪華な王宮の建物とは違ってそれは質素な雰囲気を醸し出していました。
なんだか好感が持てます。
......それはさておき、
私たちが大通りの脇の店が並べている数々の珍しい品物に対して
あれはどう使うだのこれは誰が買うんだろうねと談笑しているうちに、
馬車は学校へと向かっていました。
〇
しばらくして、学校の手前で馬車はゆっくりと止まりました。
「よいしょっと。わざわざ乗せていただいてありがとうございます」
「いえいえ、お嬢様のご友人なのですから当たり前ですよ。」
「お嬢様も喜k、ちょっとお嬢様!自ら荷物をお持ちにならなくてもよろしいのですよ。
私がお持ちしますので。」
「いいの!私も自分で荷物くらいは持てるし」
重い荷物を持って中へ入ろうとするニアを御者の人が必死に制止しています。
「ふふっ」
学校の前でこんなやり取りをしているのを見ると少し心が和らぎます。
「リウビア~早く来てよ~」
「は~い、今行く」
どうやら荷物運びは最後までニアがしたようです。
燦燦と太陽が照らす中、私はニアの元へ急ぎました。




