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避けられぬ道

「......リウビア。リウビア!」

うん...何だろう?

「リウビア、起きて!」

ゆっくりと目を開くと、私の体をゆするニアがそこにいました。

「...あれ、ここどこ?もう都に着いたの?」

「もうっ!都には二日がかりで行くからここは中継地点。さっき言ったでしょ。」

......そういえばそんなことをニアが言っていたような。

目をこすりながらぼんやりと思い出しました。

「もう宿は決めてあるから行きましょ。」

突如、ニアが暗闇へ向かって駆けだします。

「ちょっと。待って~」

置いて行かれまいと私も急いでニアの後を追います。

走るうちに目が暗闇に慣れてきて、町の様子が次第に見えてきました。

奥に見える山との距離からしてそんなに大きい街ではないようです。

「ちょっとちょっと。走るの速すぎるよ。」

ようやくニアも歩を緩めてくれました。

「はぁ...はぁ...それで...その宿屋っていうのは...どこにあるの?」

息も切れ切れに言葉を紡ぎます。

「これだよ」

ニアはそう言って右の方を指差しました。

右を向くと、確かにぼんやりと大きなものがあります。

近づいてみると、それがいかにも高級そうなレンガ造りの宿屋であることが分かりました。

「何から何まで本当にありがとね。ニアには感謝してもしきれないよ。」

「ううん、そんなことないよ。いつもの恩返しだと思って。」

「さあ、リウビア。中に入りましょ。」


豪勢な食事をいただき、この付近で湧き出る温泉に入らせていただきました。

「ふぁああ、気持ちよかった。」

部屋に戻って寝巻に着替える準備をします。

――まさか私に一部屋用意してくれてるなんて思わなかったなぁ。

あ、そういえば......

私は部屋に入ってすぐのところに置いてあるカバンのもとへと歩きます。

そして、一本の美しい枝を取り出します。

「マートルさん、もう行きますか?」

「......おや、リウビアよ。ここはどこじゃ。」

「......はぁ。」

やれやれと首を振ります。

「都に行く途中の宿ですよ。」

「それで、特訓。した方が良いんじゃないですか?」

「おぉ、そうじゃったな。それでは行くかのぉ。」

「......行くのは私ですけどね。」


 一応こっそりと外へ出ます。

もう日も暮れて、頼れる光は何一つありません。

「はっ」

枝...というか杖に力を籠めます。

杖の先にポッと灯りが点きます。

灯りを頼りに山の方へと向かって歩き出します。

「リウビア、山にはケモノがおらんことは確認しておいたから安心しなされ。」

「ありがとうございます、マートルさん。」

無事山に着いた私たちは山肌に倒れている木に腰掛けて精神を集中させます。

......あれ。

何かがおかしいような。

夜だから?そんな感じなんかじゃない。

気持ちが昂るようなそんな何かを感じます。

「リウビア。誰かが山頂からこちらへ向かってきておるぞ。」

マートルさんのその声を聞いたのは、ちょうどそんなことを考えていた時でした。

私はいつでも自分を守れるようにさっと身構えました。

「相手は人間じゃぞ。こちらからは変に絡まないほうが良い。」

確かに......。

そう言って後ずさりしようとしたその時でした。

まだ10歳にも満たない子供が見えたのは。


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