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リウビアと共に旅する魔法の木  作者: 阿古久曽
木との最初の出会い
2/26

運命の枝との邂逅

次の日、畑に行くお父さんと同じタイミングに家を出て

私は昨日自分が寝ていた場所へと向かいました。



 頭の上に太陽が昇った時分に一人の少女が森を出ました。

...眩しそうに太陽を遮る左手の逆側...彼女の右手には

大事そうに一本の枝が抱えられています。


                     〇


 ―――数時間前、私の足は自然と昨日の場所に向かうことができました。

本当に幻だったかのように、昨日木を見た場所にはぽっかりと、何もない空間が広がっています。

何か痕跡でもないかと落ち葉をひっくり返したり、木に登ったりしましたが、

何一つ見つけることはできず

落胆して踵を返そうとしたとき

私の視界を白い何かが横切りました。

振り返ると、定めだったのでしょうか。

太い幹を持った木の裏に半分土に埋まる形で純白の枝が残されているのです。

......。

ゴクリと唾を飲み込みます。

実を言うと、私も疑っていたんです。

あのきれいな木は私の幻想に違いない...内心思っていたので、あの姿は私の胸の奥にそっとしまっておくつもりでした。

けれども、本当に見つけることができるなんて...

刺激でもして消えてしまっては元も子もないので、慎重に枝のところへ歩いて

私は大事なものを拾うようにそっと枝を引き抜いて手に取り、付いた土を払いました。


 私の手にピッタリとあうその枝は

手触りも滑らかで、形もきれいに整えられていて

...おまけに私に力を分けてくれていると感じるほど何か強いものを持っていました。


 森を出て家に帰ると

お母さんは出かけていて家には誰もいませんでした。

静まりかえった部屋を横切ってミシミシときしむ階段を上がります。

どこに飾ろうかを考えた挙句

勉強机の一番下にある引き出しにしまうことにしました。

どうしてしまうのか?

...それは...その枝は飾るためじゃなく

またいつか使うためにあるような気がしたからです。


 お母さんが帰ってこないとお昼ご飯も食べられない...

なので、私は家の周りで花を集めることにしました。

食卓に飾るためです。

家の周りには主にキク科の...恋占いに使えそうな白やピンクの花びらの

花が咲き乱れています。

持っていた麻紐で摘んだ花を束ねていると

山菜が入ったかごを持ったお母さんが森から出てきました。

「あら?リウビア、

 探してたものは見つかった?」

「う~ん、花は見つからなかったけど代わりに良い物見つけたの。」

「何を見つけたの?」

「夕飯の時に見せてあげる!」

「あら、そう。それじゃあ楽しみにしてるわ。」


 お昼に小さいパンを食べた後

午後は草むらに入って虫と戯れました。

足で草をなでると驚いたバッタやハエトリグモが

ピョンピョンと飛び出てきて、それを捕まえて

手のひらに乗せてじっくり観察...というようなことをしていると

気付けば向こうからお父さんが帰ってきました。

すでに日も傾いています。

手に乗せていたくもを雑に逃がして

お父さんに抱きつくと

畑仕事を終えた服についた土の、太陽の栄養を溜め込んだような匂いが

心地よく感じられました。

「...ただいま。」

土のついた手で頭をなでられても私にとっては全く気になりません。

だってお父さんについた土は全く汚くないのですから。

「おかえりなさい。早くご飯にしよ。」

お父さんの手を引いて家へ行き

木製のドアを思いっきり開けました。

「ただいま!」

「おかえり。リウビア、パパ。もうご飯できたわよ。」


冷たい水で手を洗って

みんなが食卓についたところで夕食を始めました。

「「「いただきます」」」

お母さんがとってきた山菜(主につくしなど)が入った

スープやパンを食べて夕食を満喫したころに

私は枝のことを思い出しました。

「あ!忘れてた!見せるものがあったんだった。」


 どたどたと階段を駆け上り

急いで机から枝を取り出し持って行きす。

「じゃじゃーん。すっごくきれいでしょ~。

 これが昨日言ってたやつだよ。」

「うわっ。すごいきれいだね、お父さんもこんなの見たことないなぁ。

 それにリウビアのために作られたような大きさじゃないか。」

「あら、リウビアに似合うくらい白いわね。良いじゃない。」

お父さんもお母さんも気鋭な枝に興味津々だったので私も調子に乗り

この枝について熱弁をふるってしまいました。


 そのあと、私はこの枝を引き出しに丁寧にしまってから

お母さんの手伝いをしたりお父さんと遊んだりと一日を限界まで満喫した後

毛布にくるまり泥のように眠りました。

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