台風の過ぎにし青空
外へ出ました。
だだっ広い青空が目に飛び込んできます。
涼しげな風に揺られる大麦の上を、二匹のモンシロチョウがあわただしくじゃれあい
奥でさざめく若木から小鳥が数匹飛び立っていきます。
それに驚いたのか深紅のゼラニウムにとまっていた一匹のカラスアゲハも
大きな羽をぎこちなく羽ばたかせてよろよろ逃げています。
そんな平和な光景を見ながら私は今、学校へと続く道を闊歩しています。
学校に着いたらすぐに校長先生のところへ行き、
彼女に対して私が王立学校へ行く旨を伝えなければなりません。
しばらく少し早めに歩き学校へ向かっていると、
正面右奥からニアが歩いてきているのが見えました。
見えてすぐに私はニアのもとへ走って駆け寄りました。
「お~い、ニア~」
ニアもこちらに気づいて手を振ってくれます。
「おはよう~。」
「おはよう、リウビア。」
合流した私は話をつなげるためにとっさに思い付いた言葉を口にしました。
「...今日もいい天気だね。」
事実、太陽の光は私たちを優しく包み、日常を鮮やかに色づけています。
ニアはふと青空を仰ぎ見て
「うん、そうだね。...そういえば、昨日の話どうなったの?王立学校へ行くかどうか。」
そう聞きました。
「お父さんもお母さんも了承してくれたし、私行くことに決めたの。」
「そうなんだ。......実はね、私もお父さんに王立学校行かないかって言われてるの。
で、私行くかどうか悩んでたんだけど、リウビアが行くんだったら私も行こうかな。」
にっこりとほほ笑んでニアは言います。
......そういえば、ニアの家はこの辺りでも指折りの名家だったことを忘れていました。
「ほんと!?二人で一緒に行けるなんて最高じゃな
「じゃあ、今の学校を卒業しても一緒だね。改めてよろしく。」
「うん、こちらこそよろしく。」
太陽に照らされ明るくはじけるニアの笑顔につい私の頬も緩み、
しまいには笑ってしまいました。
「どうしたの?」
「ううん、いや何も。」
「う~ん?何か隠してるな~その言い方は。」
後ろを追い掛けてくるニアから逃げながら
私たちはほぼ同時に門をくぐりました。
学校へ着いてすぐに校長先生に行くことを話して、
王立学校へ行く正式な許可をもらうことができました。
校長室を出た私は安堵のため息をつきました。
――今、私の前には王立学校へ行くという確かな道がある。
そこで私は今よりもっともっと成長して......。
成長して...何かすごいことを成し遂げよう。
一瞬何かが胸に引っかかった心持ちがしました。
漠然とした何かはまだ生まれたての、しかし確実に私の心に根を広げ始めていました。




