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話してこなかったお父さんの本音

 「突然どうしたの?」

はたと立ち止まり振り返ったお父さんはそう言いました。

「書斎にあった本にたまたま書いてあって......。」

「......そうか。もうじき話しておいた方が良いと感じていたし、

この機会に話してしまうとするか。」

......あれ、でたらめ言ったはずなのになぜか通用してしまいました。

本当にそんなものが書斎にあったのでしょうか。

...そんなことは置いといて、お父さんが椅子に座ったので反対側の椅子に私も腰かけました。

そうしてお父さんはゆっくりと話し始めました。


 外の風景が赤みを帯びるまで、お父さんの訪れた数々の町や雄大な自然について、

そしてこの村へ来た時のことや冒険の途中幾度となく会った羽帽子の商人のことなど、

多岐にわたる話を聞きました。

「でもなんでその話を私にしてくれなかったの?」

「これはお母さんと一緒に決めたことなんだが、お父さんが冒険者をやっていたという過去を

言ってしまうとリウビアの将来が制約されてしまうかもしれないと考えたからなんだ。

お父さん自身、子供の時に親の過去を知っていたせいか、それに見合うようなことをしなければいけないという義務感にさいなまれて自分のやりたいように行動できなかったんだよ。

だから、リウビアにはお父さんのことを話しておかないことで行動の幅を広げてあげたかったんだ。

お父さんのような思いをしてほしくなかったからね。

もちろん、お父さんがやっている農作は隠すことができなかったんだが......。

でも今となってはリウビアも将来のことについて自分で決められるようになっているし、

ちゃんと話しておこうと思っていたんだよ。」

「じゃあ、お父さんの農作を私が継がなければいけないとかは?」

「もちろん考えていないよ。だからリウビアが継がなくてもいいように、

今こうしていろんな人にやり方を説明してまわっているんだよ。」


 私は昨日の自分を思い出し反省しました。

私は本当は王立学校に行ってみたいんです。

だけれどもお父さんが汗水流して新しい方法を究める姿を近くから見てきて、どこかでお父さんと同じように生きなければと思っていたのです。

「...話は変わるんだけど、今日学校で校長先生から王立学校へ行かないかっていう打診を受けたの。

それで...私自身それはすごく面白そうだと思っているから行きたいって伝えてもいいかな?

数年はこの家から離れることになると思うけど......。

突然でごめんなさい。」

間髪入れずに後ろからお母さんが答えました。

「リウビアがやりたいと思うことなら何でもやればいいわよ。ね、お父さん?」

「もちろんだとも。お父さんたちもリウビアが成長することをいちばんにおもっているんだから一番に思っているんだから。」

「......お父さん、お母さんありがとう。」


 外は若干暗くなってはいたもののまだ夕飯まで時間があったので一度自分の部屋へと戻りました。

「リウビアよ。よかったではないか。」

「うわ、マートルさん聞こえてたんですか。」

机に置いていたマートルさんが突如として話しかけてきまいた。

満足感に浸っていた私を邪魔するように。

「うむ、しっかりとな。じゃが王立学校へ行くというのはいい経験になるじゃろう。」

「何せこの国で最も魔法が発達しておるじゃろうからの。」

「ええ、そうですね。...私も行くのがとても楽しみですよ。」

生まれてこのかた一度も都へ行ったことのない私は、

都という場所を考えうる限り最もにぎやかな場所として想像していました。

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