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お父さんの友人:エステベスト

 「それで、何の話だった?」

教室に入るとすぐにニアが聞いてきました。

まだ、私が怒られたと思っているようです。

「全然面白くないよ。

王立学校に行かないかいって聞かれただけだもの。」

「えぇ~!すごく良かったじゃん。絶対行くべきだよ。」

「そうかな~。」

ニアにそのように言われても、私はいまだに心を決めきれません。

何故なのか。

それは私が一番よくわかっています。


            ○


両親に話を聞くために、私は一直線に家へと帰っています。

...“行っていいのか”という質問には多分二人とも二つ返事で了承してくれるでしょう。

けれども、私は二人の本心を聞いてみたいのです。

私が王立学校へ行ってしまえば、当分帰ってくることはないでしょう。

二人はそれをどう思うのか。

そして、私には将来何をしてほしいと思っているのか......。

そうして覚悟を決めて家へ帰って中に入ると、

目の前の机には筋肉ムキムキの見たことのない男が座っていました。

「た、ただいま。」

男の奥からお父さんがひょっこり顔を出します。

「おぉ、リウビアおかえり。」

「この人はお父さんの昔からの友人、エステベストだ。

 いつもは旅をしていて久しぶりにここの近くに来て寄ってきたそうだ。」

「こんにちは。」

「こんにちは。リウビアちゃん。

いや~、それにしても君のお父さんには昔よくお世話になったものですよ。」

「へぇ~そうなんですか?」

言うことが思いつかず、助けを求めるようにお父さんの方に目をやると

お父さんはわざとなのか私を見ずに、エステベストさんの方を向いてこう言いました。

「俺の自慢の畑を見てくれないか。ちょうど青々とした葉を精一杯広げているだろうよ。」

話の腰を折られたエステベストさんは、少し不満そうにしながら上げていった右手を下ろし、

お父さんに連れられていきました。

 一部始終をぽかんと眺めていた私がお母さんの方を向くと、

ばつが悪そうに、食器を洗うのを止めていた手をまたせわしなく動かし始めるのでした。

あからさまに何かを隠そうとする動きに私は疎外感を覚えるのでした。


 しばらくして夕飯が始まりました。

どこからともなく持ってきた切り株にエステベストさんは腰掛け

お母さんの手料理をとても美味しそうに食べています。

ついさきほどまでの話はなかったかのように

いくら私が話を誘導しても不自然に別の話題に変えてしまい、いっこうに話す気配がありません。

......いったい何なのでしょう、

私に期待させておいて大事なところは話そうとはしない。

半殺しにでもあったような気分です。

そんな気分であったのにもかかわらず、その夜はすぐに眠りに落ちてしまいました。


 次の日の早朝、エステベストさんは、次の予定までに時間もないから、という理由で

出発するそうです。

餞別の品を渡し、家族総出でエステベストさんを見送りました。

「ありがとうございました。」

「エスこそ、また遊びに来いよ~。」

 ひと段落ついて一度自分の部屋に戻ると、

部屋に入ってすぐにあるカーペットの下に何か挟まっていました。

拾い上げると......それは一通の手紙でした。

その中身を端から端まで読み切った今の私は、

あまりの衝撃に手が震えてしまうのを止めることができないのでした、

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