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リウビアと共に旅する魔法の木  作者: 阿古久曽
17歳になった私と“木”との再会
10/26

新たなる魔法と謎の多い父

「その魔法とはどんな魔法なんですか?」

「その魔法とはな.....................」

とっても長くなるし無駄話も多いので割愛します。


                     〇


 その話を聞き終わるころには肌で感じられるほど気温が低くなっていました。

マートルさん曰く、その魔法というのは隠密術のことのようです。

人間、というかすべての生き物は常に活力を吸収しているのと同時に一部を放出してしまっているそうで、魔法使用時にそれが顕著になるんだそうです。

――知らなかった。

それで隠密術というのは、

姿を隠す魔法、

魔法使用時の活力放出量を減らす魔法、

日常での活力放出量を減らす魔法、

これら3つの総称だそうで、特に3つ目はマートルさん...というか植物が常に使っていて、

かつ一番簡単なものだそうで、シールドを習得した私にぴったりらしいです。

これで王女様が仮に監視していたとしても問題ないでしょう...。

「ひっくしゅん」

こんなところに長居しては風邪をひいてしまいます。

腕を組みながら、私たちは足早に家へと帰りました。

 

 夜、ベッドの中で今にも眠ろうとしていた時、

暗闇からマートルさんがぼそっと呟いている声がはっきりと聞こえました。

「リウビアなら、おそらく数日で体得できてしまうじゃろうな...。それに...」

自分の能力がマートルさんに認められているようでとても嬉しくて

つい頬が緩んでしまいました。

が、無意識のうちに表情を隠そうとゴソッと体を傾け

顔が見えないようにしつつ寝たふりをしたのでした。


                     〇


 朝、いつものように下へ降りると、なぜか普段はいないお父さんがいました。

「あれ、お父さん。いつもより遅いじゃないの。どうしたの?」

お父さんは顎が外れそうなほど大きく口を開けて食パンをかじっています。

「......今日は畑仕事は休もうと思ってな。ちょっと都に用事があるんだよ。」

「用事って何なの?ちょっとだけでも教えてくれない?お父さんが都で具体的にしていることについて、私、ほとんど知らないんだもの。」

ちょっと考えた後、お父さんはさも重要でもないことを言うかのように妙に明るくしゃべるのでした。

「特段すごいことをやってるなんてことはないさ。うちの畑で育てた小麦の値段を

商人と相談して決めたり、お父さんの経験を必要としている人たちに説明しているくらいだよ。」


 お父さんについては、さっきも言った通りよく知らないのです。

お父さんは普通の人よりも遅い31歳でお母さんと結婚し、その2年後に私が生まれ、

結婚した後は5㎢ほどの敷地で小麦や大麦などを使った三圃式という画期的な方法

を皆に先駆けて適用し独自の改良を重ねて、

今ではお父さんに農業の基本を聞きに来る人もいるほど有名になったのです。

......私がお父さんについて知っているのはたったこれだけです。

ここまででも十分お腹いっぱいになるほど面白い内容が詰め込まれているので、

私はこれまで気にも留めませんでしたし、

お父さんも結婚以前のことはあまり話したがらないので深くは聞いてきたことはありませんでした。


 なので、今回はたまたま答えてくれそうな雰囲気がしたので

思い切ってお父さんに昔のことについて聞いてみたのです。

......これはお父さんの癖なのですが、例えば、お父さんにやってほしいことを頼むと、

他人との衝突はなるべく避けたいというお父さんの優しい気質も起因してか、

特に拒否したいという気持ちがあるときは、はっきりと言い切ることはしないのです。

そのため、お父さんと一緒にいるときに気分を害されることなどはほとんどありませんが

後々わだかまりが残ったりスッキリとした気分になっていないことがよくあるのです。


 今回も残念なことに例にもれずあいまいな返答でした。

「う~ん。そんなに面白いことでもないしなぁ。

ちょっとじゃあ、考えておくから今度また面白い話をもってきたときに一緒に話すよ。」

こう言うときはだいたい話してはくれません。

今の私は気になったことがあればとことん突き止めないと気が済まない性分なので

これについては自分一人でコソコソ調べてみようかなと思うのでした。



 この時の私は少し感じていました。

お父さんの過去と私の人生は、太刀で切っても切れないほど

深く結びついていることに。

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