天才料理令息の友人。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第七弾!
僕の名前はルイス。
紆余曲折あって料理学校に通う貴族令息だ。
けど僕は現在、料理はともかく、友人を多く作れずにいた。
原因は分かってる。
僕の年齢が在学生の中では最年少で、そして僕の耳が、みんなと違い尖っているからだ。
「ルイスはどんな創作料理作ったんだ?」
そんな僕に出来た友人は、たった一人。
同じ貴族令息で、趣味である冒険にかまけたせいで出席日数が足りず、何度も留年してるクラークさんだ。
「東亞合衆国の肉じゃがの具を色々変えて作った料理だよ。クラークさんは?」
「俺はこの前の冒険で採れた色んな野草混ぜて作った特性スパイスのカレーを作ったぜ!」
料理学校には様々な科目がある。
既存料理系統の科目だけじゃない。
その既存料理とは別に、創作料理という科目があり……現在僕らはそれを受けている。
そして僕は、その創作料理において、一度もクラークさんに勝てていない。
その他の科目においては彼に勝っているけれど……この科目だけはダメだ。
僕は僕で美味しい料理を作れるけど、クラークさんはそんな、美味しいだけじゃない料理や奇抜な料理……冒険料理と言ってもいい料理を作り、そしてその個性が担当教師に評価されてるのだ。今回クラークさんが作ったカレーも絶対そんな感じに違いない。
「では次はルイス君の肉じゃがを。ふむ、なかなか素朴な……む、これはヒメジロタケノコ……良いアクセントだ。君は将来良いお嫁さんになれます。保証します」
担当教師のネルス先生が高評価をくれた……けど僕、男ですけど!?
「次はクラーク君のカレーを……むっ! このクセのあるニオイ……これまた面白そうですね……ッ! い、いったい何を入れたんですクラーク君」
「?? ベルパの実と、ケケットの実と、あとは名前知らない野草数種類かな?」
こ、これまた冒険したねクラークさん!?
「……あ、味は良いです。が、今回ばかりは一位をあげられません」
「えっ!? なんでだ先生!?」
えっ!? ま、まさかの二位!?
僕としては嬉しいけど……なんで二位?
「このカレーに使った野草……アレルゲンが含まれてます。料理人ならアレルゲンがある事を前もって、メニュー表などで教えねばなりません。しかしそれを怠ったため二位です」
「マジかぁ! でも、次は負けねぇからなルイス!」
そして彼は、悔しそうな顔をしてから、僕に笑顔を向けてくれた。
僕は彼の、そんなところが好きだ。
そんな彼と友人になれて僕は……改めて良かったと思った。
それから僕は、創作料理でクラークさんに勝てていない。
どうやら思っていたよりも、僕に負けたのが悔しかったらしい。