4.覚醒
そう言って彼女は手を掲げる。すると次の瞬間、俺の手の中に一本の長剣が現れる。
「...これは貴方と共に成長する武器です。現状でも持っているだけで貴方の能力を少し引き上げてくれます」
「そしてもうひとつ。貴方の証の力を引き出した事で、異能力、と呼ばれるスキルとも、魔術とも。また技能とも違うものが貴方に宿りました。こちらもまた成長するようです」
「……要するにこの世界で生き残るための力が手に入った、ってことで間違いないんだろうな?」
「はい。ただ、異能に関しては私にも良くわからず...御自身で確認してください」「わかった。後は……何かあるか?」
「いえ、特には。...貴方のような善良な人が適合者で良かったです。...では、彼の世界をお願いします」
彼女はこちらを見て微笑みながら言った。「気に食わねぇが仕方ねェ。どっちにしろやるっきゃねェならやるだけだ。」
「はい。……それでは、ご武運を」
そう言われた直後、目の前の景色が変わった。……森の中だ。辺りを見回す。
「...この武器の性能でも確認するとすっか」
長剣を軽く振るう。軽く、非常に扱いやすい。とはいえ俺に剣術の心得なぞないので素人の主観に過ぎんが....それでも充分過ぎる性能だと言える。
「……次は、異能か」
頭の中で念じる。発動させるには言葉が必要らしい。
「『ステータス』」
俺が呟くと、脳内に文字が浮かぶ。
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名前:金慧 礼二
種族:人
JOB:英雄候補
Lv.1
HP:230/230
MP:182/182
STR:57
DEX:50
AGI:72
VIT:52
INT:61
MND:85
スキル:『正拳Lv1』
魔術:無し
技能:『快足Lv1』
異能:『英雄旅程・黄金航路(Lv1.Rank:EX)』
称号 :<証を持つ者><刃の保有者>
保有:英雄の証 無銘の長剣
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「……『英雄旅程・黄金航路』。コイツが俺の異能、ってヤツか」
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・『英雄旅程・黄金航路』
Lv:1
Rank:EX
使用者の成長に応じて進化し続ける、黄金の軌跡を辿る道標。それはいずれ英雄へ至る者の旅路。
効果:全熟練度の蓄積速度向上・獲得経験値上昇・成長力向上・魔術適性向上
状態:発動中
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「....ぶっ壊れとかそういうレベルじゃないが...戦闘にゃ使えそうにねェな」
「取り敢えずは、この森を抜けるのが先決か」
そう言って歩き出す。暫く歩くと、人型で緑色の肌をした複数体の影が俺を取り囲んでいる事に気付いた。
「....こんなテンプレ通りのゴブリン、ってヤツも居るんだな。...しかし、急に出てくる奴の強さが落ちたのはなんでだ...?」
剣を引き抜き、臨戦態勢を取る。奴らは一斉に襲いかかって来るが...遅い。Lv1にしては破格であろうステータスを持つ俺にとっては亀の歩みにも同等だった。とはいえ戦闘経験のない俺はそれにすら剣を当てるのに手間取る。しばらく戦闘を継続して何とか闘えるようになった頃にようやくゴブリンは全滅した。




