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下界の神様奮闘記  作者: LUCA
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番外編・神様とクリスマス①

「神山さん! クリスマスですねーっ!」


 日本という国は、つくづく不思議だなと思う。


 宗教について寛容な日本人は、年末にかけて通常クリスマスや初詣といった行事を行う。そうでなくても、たとえば合格祈願や安産祈願など、何かに付けて神社にお参りに行ったと思ったら、次は教会を使って結婚式を行う。


 そんな日本人に「宗教は何ですか」と聞けば、「無宗教」だと答える人が多い。無宗教にもかかわらず、各宗教にまつわる行事を楽しんでいるのだ。


 俺が現在居候している鳥居家も同じ。どうせみんな無宗教で、特に何も考えずにクリスマスを楽しむのだろう。


 俺は一応、元ではあるが神様である。崇められる存在なのだ。腐っても一応神様であるのだから、そんな無宗教同然で各宗教にまつわる行事を楽しんでいる日本人に対してお説教をしてあげなくては。元神様としての面目が立たないというものだ。


 まぁ、神様は神様でも、俺は人間界である下界にいろいろとちょっかいを出す「区域担当神」である。仏教やキリスト教などと違い、区域担当神にまつわる教えや行事なんかは特に何もありはしないから、決して偉そうには言えないんだけどね……。


 そんなことを考えている時、先程の凪沙ちゃんの発言である。もうすぐクリスマスですね。たしかに俺にそう言ってきた。これは良きタイミングだ。いつもお世話になっているからこそ、凪沙ちゃん、ひいては鳥居家のためにも、ここは一つ心を鬼にしてお説教をしてあげようではないか。元神様のプライドにかけて__。


「あの、凪沙ちゃん。クリスマスなんだけど、凪沙ちゃんの宗教はそもそも……」


「いやー、やっぱりこう、クリスマスってテンション上がりますよね! 今年もこの季節が来たか! と。クリスマスソングが街に流れ始めるだけで、世間がそのムード一色になるっていうのも凄いですよね! クリスマスパワー恐るべし! もはや世界全体をあげた一大イベントですよ! お祭りですよ!」


「あ、あの……、凪沙ちゃん……。クリスマスはイエスが……」


「そもそも、最近は日本人は無宗教だからクリスマスをするのはおかしいっていう発想自体が薄れてきています。なんなら、キリスト教国でも全くイエスについて考えもせずクリスマスを祝う人もたくさんいます。逆にクリスマスを楽しむことで、キリスト教以外の人や無宗教の人でも、イエスについて考える良いきっかけにもなりますね。だから、結局はクリスマスはみんなで楽しむのが1番です! 楽しんだもん勝ちです! そんなクリスマスが今年もやって来ましたね!」


「う、うん……!」


 凪沙ちゃんにお説教しようとしていた自分が馬鹿だった。なんだこのめちゃくちゃしっかりとした考えは。逆にお説教されてしまった気分だ……。


 しかし、俺は神様である。元だけど。だからクリスマスを純粋に楽しむわけにはいかない。鳥居家および日本中がクリスマスを楽しんでも、俺はなるべく関わらないようにしよう。それが、せめてもの元神様のプライドである。ごめんよ凪沙ちゃん。俺はクリスマスを楽しむわけには__。


「街をあげてのクリスマスイベントに、私たち鳥居家も参加することになりました! 私たちは飲食店としてフードを提供したり、他の方たちと協力してお菓子などを配ったりするんです! もちろん、神山さんも参加してくれますよね! なんたって、クリスマスですからね!」


「も、もちろん……!」


 断る隙さえも与えてくれなかった。


「では、準備が出来たら行きましょうか。イベントは近くの商店街で行われるので」


 俺は断る間もなく、そそくさと支度をした。こうなると仕方がない。楽しむふりをしてクリスマスを凌ぐしかないか。


 準備が終わり、俺は鳥居家と共に商店街へ向かった。そこでは、既に各店舗がクリスマスにちなんだ飾り付けやフードの振る舞い、お菓子や風船の配布などを行っていた。


「いやー、盛り上がっていますね! 私たちも負けていられません! 準備しますよー!」 


 鳥居家も準備を始める。一番張り切っているのは凪沙ちゃんで、お父さんとお母さんもそれに追随している。

 晴人くんはといえば、一緒に付いてきた彼女の美鈴ちゃんとなにやら談笑している。こんなところでもリア充を見せつけやがって。正直羨ましいけど。


「神山さんはみんなにお菓子を配りましょう。さぁ、これを着るのです!」


「こ、これは……?」


「サンタさんの衣装です!」


「…………」


 サンタさんとは、「立派な口ひげを蓄えたちょっと小太りの、プレゼントを配る奇抜な衣装を着たおじさん」である。もう一度確認すると、サンタさんはおじさんである。そして、俺もおじさんである。おじさんがおじさんの格好をさせられたのである。具体的には、普通のおじさんが奇抜な衣装を着て、奇抜なおじさんになったのである。


「だっせー。おっさんがおっさんの格好してるよ。神山さん、似合ってるから普段着にしたら?」


 晴人くん。気にしてることをずばずは言うんじゃないよ。君もおじさんになったら分かるから覚悟しとけよ。


 お父さんとお母さんは、フードの提供をするべく調理を始めた。妙に似合うトナカイの被り物をした凪沙ちゃんは接客とお菓子配り、晴人くんと美鈴ちゃんはそれぞれのお手伝いをしている。


 そして、サンタの格好をした俺は、その奇抜さにまんまと釣られてやって来た子供たちに、お菓子というプレゼントを配っている。

 凪沙ちゃんからの司令で、配る際には必ず「メリークリスマス」と言わなければならなかった。しかも、サンタのおじさんっぽい口調でだ。こうなりゃヤケクソだこのやろう。


 しかし、俺がどんなにやっつけでサンタを演じても、子供たちは喜んでやって来てくれた。一部生意気な奴もいたが、

子供たちは純粋にクリスマスを楽しんでいる。それを見ている親など周りの大人もニコニコしながら楽しんでいる。

 もしかすると、現代ではこれがクリスマスのあるべき姿なのかもしれない。さっきまで神やら宗教やら言っていた自分が少し恥ずかしくなった。


 そんな事を考えながらお菓子を配っていると、一人の少女が俺の元へやってきた。


「サンタさん、サンタさん。私、欲しいプレゼントがあるの」


「なんだい? サンタのおじさんに言ってごらん」


「私ね、クリスマスに降る雪が見たいの」


「こ、こら! ひなの! サンタさんに言っても無理なものは無理なの! 本当にごめんなさいね、この子ったら。今日は雪の予報だったんだけど、外れちゃってがっかりしてるの」


 雪か……。いくらサンタさんでも、自然を相手にしたプレゼントを用意するのは難しいだろう。普通のサンタならば、である。今少女の目の前にいるのは、普通のサンタではない。元神様という経歴のあるサンタである。天界では気まぐれで下界の天候を操っていたものだ。もしかすると、今でもなんとか雪を降らせられるかもしれない。


 ここは俺の能力を使う時ではなかろうか? 

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