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99.聖魔大戦③



「はぁ……はぁ……」


 『終焉の魔王』と『希望の勇者』の戦いは終幕を迎える。

 勇者が覚醒しても戦いの中で強さを身につけているカインによって戦いは互角となっていたが、勇者の急成長に押されて徐々に劣勢になっていった。


 両者とも確実に疲労している。

 二千年前のような迫力は乏しいが、確かに聖魔大戦は行われている。

 魔族、いや自分のために力をふるう者と人類のために戦う者。


 もう勝敗は決まっていると言っても過言ではない。


「君達はもう休んで、あとは俺が……」


 しっかりと立ち上がり、『終焉の魔王』カインに近づく。


「ぐッ……いいぜ。そんなに死にたいなら、葬ってやるよ!!!」


 魔王が手にするものはもう一つの魔王の証である《魔剣ディザスター》だ。

 禍々しい色と終焉の力が漏れ出している。


「あぁぁぁぁぁッ!!!」


「うぉぉぉぉぉッ!!!」


 二人が同時に走り出し、己の武器を振るう。

 漆黒と光が共鳴するように強い衝撃が生じる。

 光速の剣撃に対抗する。


 しかしお互いの力はお互いの弱点だ。

 もう感覚に近い動作で相手に剣撃を浴びせ、繰り返される。

 お互い引くわけがない。


 だがきっかけがなければ無理に近いが、もう自分しかいない。

 『終焉の魔王』は披露を感じているこの機を逃すわけにはいかない。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ――――」


 魔剣に『終焉』の力を込め、全力で振るった。

 その初めは一閃となり、広がるそれは黒い一線。

 物体は全て切断される。


 問答無用であり、最後の一撃だ。


「がッ……ふ」


 だが、勇者はそれに耐えたのだ。


「ッ――――」


 アウレスは相打ちかと思った。

 いや、そう覚悟しながら前へ走り、魔王の心臓に聖剣で貫いた。


「がッ……」


 聖剣によって魔王の心臓は破壊された。

 勇者が勝ったのだ。


「……」


 もう何も語ることはなく、ただ刺した魔王が自分に寄りかかりながら、消滅していくのを感じながら、魔王の死をその目に刻む。

 二千年前から抱いた願いは果たされた……だがその先は叶うことはなかった。






「ッ!!」


 ミーシャに《死神大鎌グリムリーパー》で襲い掛かったが、地面に叩き落とされる。


 それに畳み掛けるように《退魔刀カオス》が神器兵装、複製、充填で放たれる。

 その威力は絶大で地面を割るほどだ。

 さっきの事を学習して本体の位置に《空間移動スペース・ムーブメント》を発動して即座に回収して攻撃に移る。


「お前の目的はなんだ!?」


「ぐ、世界を滅ぼして新たに作り変えることだ!!」


 それが本当の計悪。『破滅の魔女』という異名はデタラメでもなく、彼女は本当に世界の破滅を望んでいた。

 その理由としては新たな世界を創造すること。

 恐らくその方法は『終焉の魔王』となったカインを利用して種族、いや勇者を滅ぼせばもう勝敗は魔王軍に偏っているため、世界をカインに滅ぼさせてアイツと共にか、分からないが、作り変えようとしているのだろう。


 ナイラの魔法技術ならそれは可能だろう。


「意味はない。面白くない。神が創り出した不良品だ!!」


 この世界に神話はただ一文だけだ。

 “この世界は神によって創造された”と書かれているだけで後は順々に種族が星から誕生していったと……。

 魔法が存在するなら、神も存在するのだろうか。


 ミーシャでさえ、そんなことは分からないし、考えることはしない。

 ただそこに存在する魔法を探求するのみだ。


「それこそ、つまらないな。いや、もっとつまらなくなるよ!!」


 大きく横に薙ぎる。

 近接戦闘は極めていないのか、ミーシャに押されている。


「何?」


「自分で望むような世界を作ったらどうなる? その時は満足だろうが、その後は? 自分の思い通りに、予想通りに、これから起こることを把握しながら――」


 訴える、というか自分の気持ちをぶつけている。


「そんな事の何か楽しい!! バカか、お前、本当にバカか!!」


「……うるさい」


 二千年の時をそれだけを考えて生きてきたナイラにとっては人生を自分を否定されたのと同じだ。

 だがミーシャも少しは思った。

 同じくらいの魔法技術を備えているミーシャは『万能』に近い存在であり、出来ることなら世界を滅ぼして、新たなに作ることだって可能だろう。


 でも、そんなことはしない。


 その理由がつまらないからだ。

 分からない方が面白いから、楽しみがあるから、それこそが人生だから……。


 二千年を生きて復讐から始まり、強さを極めた。

 魔法の到達点の一つである『絶対』『理想』……そして『万能』へと到達しても彼女の考えは変わらない。


 その反面、やることは魔法の研究しかなかった。

 それに縋り、二千年の時でナイラは『絶対』だけだったが、ミーシャは『絶対』『理想』『万能』へと到達した。


 それが今までの証であり、これからの布石である。


「だから私はお前を止める。かつての仲間達、アビルス様を利用したことを悔やむがいい――」


 ミーシャは左手を宙に向ける。

 その合図で宙が蠢く。


「ッ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」


 もうわかった。

 理解した途端、それを阻止すると走り出す。


「――《終焉審判エンド・ジャッジメント》」


 もう片手でラズウィールの魔法を発動する。

 それは『絶対』で守られているナイラには足止めにしかならないが、それで事足りる。


「――《隕石落下メテオストライク》ッ!!!」


 詠唱し、広範囲に展開された魔法陣が強く光、魔法が発動する。


 そして《聖魔剣ミアルス》を両手で握り、ミーシャも歩み出す。


 これは本当に彼女にとって人生のもう一つの転換期となった。

 もう来ないであろう二千年の名残を噛み締めながら、ナイラが振るってきた《死神大鎌グリムリーパー》を弾き、彼女の心臓に刃を立て、前へと突き出す。


 そして宙から炎を纏いながら降り注ぐ星群。

 景色が一段と明るくなり、二人は光へと消える。




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