96.VS 黒灰にして終焉の魔王カイン②
俺は他の奴等と同じく強くなりたかった。
妹も同じ道を目指した。
その結果、俺は頂点には至れなかった。
それが、それが……俺は、俺は……納得できなかった。
だから……俺に奴が契約を持ちかけた時、俺は迷わず、それを承諾した。
俺が生まれた時から願ったことが遂に手の中に……。
「がはッ――」
流石の神器を兵器として扱う戦法は『終焉の魔王』の身体に効いただろう。
明らかに吐血している。
「ふッ――」
その大きな隙を見逃すことはないミーシャは《聖魔剣ミアルス》を手に斬りかかる。
これまで蓄積された思いが殺意へと変換された激しい感情、そこから解き放たれる神速の斬撃。
カインの実力とミーシャの実力はハッキリ言って素の戦闘技術、戦闘能力はミーシャの方が上だ。
ただ『終焉の魔王』の力を手にしても扱う者次第ということだ。
実力が高ければ、良く扱えるし、悪ければ、上手く使えないだろう。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
隙をつかれて身体を切り刻まれる。
痛みに押されるが、それを押し返して力を放つ。
ドゴォンッと強い衝撃が走り、ミーシャは吹き飛ばされる。
「ぐッ、ぐあッ……」
剣を地面に刺し、半壊している城へと落ちずに堪える。
「ぐッ……クソ、まだまだか」
自分の持てる力を出しつつあるが、やはりまだ打倒できる可能性は半分も届いていない状況だ。
ミーシャの魔力量は『終焉の魔王』に次ぐ魔力量を誇る。
「ん……け、結構速いな?」
ミーシャは後方から何かが何者かが来るのを期待していた。
「お前……魔王の手下じゃないのか?」
そう、勇者アウレスだ。
恐らく魔王に対抗できる唯一の存在だ。
「そうだよ。これで分かってくれた?」
「ん……まだ確信はないが、今は魔王を倒すことだ!!」
流石、正義感が人間の中で最高の野郎。
目の前にいるのは明確な悪であり、勇者が存在する起因でもある魔王だから自然の流れだろう。
「じゃあ、そっちは頼むよ」
ぶっちゃけ、カインに関してはそこまでだ。
二千年前、『終焉の魔王』がアビルス様だった時には反逆することもなく、ただ結果的に自分が死にぞこないとなり、ナイラが手を貸したからであり、この原因はあの女だ。
だからカインにはそこまでない。
二千年分の怒りは、全て奴にぶつける。
「おい、お前はどこにいくんだ?」
「私はこの事態の元凶を殺しに行くの!!」
「まだ、お前との関係は終わっていないからな!!」
「あっそ……あ、その前に――《天聖身体》」
一応、支援をしておく。
これで負けたら、元も子もないからな。
『終焉の魔王』カイン・シィル・ルヴォロワールの事は勇者に任せてミーシャは姿を消した『破滅の魔女』ナイラ・ディルリオンへと向かう。
「どこに行った?」
「リーネ達は、大丈夫か……え~と……」
見つけた。
予想外だっただろうか。
だがもう逃がすわけがないだろう。
「さぁ、『破滅の魔女』ナイラ・ディルリオン。終わりにしよう――」
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