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94.契約と真実



 魔王の玉座。


 そこに座する存在は世界最強である。

 そこに座する存在は世界を敵に回せる存在である。

 そこに座する存在は闇の頂点である。


 そこに座する存在は、王の資格を持つものである。


「さて、準備は整った。敵はもう目の前だぞ」


 『破滅の魔女』ナイラ・ディルリオンが魔王にそう告げる。


「あぁ、始めようか……」


 その瞬間、『終焉の魔王』の力が増大する。

 魔王の玉座の前が完全に崩壊している。


 そして玉座の間の扉が強く開かれた。


「はぁ……はぁ……」


 最強の防御魔法である《絶対身体アブソリュート・ボディ》でダメージはなし。

 

 だがここまで登るまでに流石に疲労をしている。


「え……嘘、でしょ」


 そこは玉座の間。

 そこに座している存在はミーシャの予想を覆していた。


「ミーシャ……久しぶり、だな?」


「カイン……」


 玉座に座るのはかつての『終焉の魔王』アビルス・シィル・ルヴォロワールの兄であるカイン・シィル・ルヴォロワールである。

 魔王軍最高幹部・第二席にして魔王軍副指揮官を務める。

 幹部の中でも力を求めていた人物、黒髪に妹に似た容姿の青年。


 実の妹が魔族の頂点となったことがコンプレックスだった。


 彼の二つ名は『黒灰の王』であり、漆黒を操る。


 だが、それよりも驚愕しているのはカインの中に『終焉の魔王』の力が存在していることだった。

 『終焉の魔王』の力、アビルス・シィル・ルヴォロワールの遺体はなかった。


 それは勇者によって消滅させたからだ。

 それと同時に彼女の証でもある『終焉の魔王』としての力も失ったはずだが、今の状況を考えるとあの時に力を奪った、ということだろう。


「カイン……まさか!!」


「あいつは死んだ。だから兄である俺が引き継ぐ」


 何も悪ぶれることなく、話し出す。

 いや、カインの性格を考えれば、不可能な推察でもなかった。

 力を追い求める男が、頂点に座する存在が転げ落ちたら、妹であろうとその力を奪い、自分が頂点の座につく。


「俺は『終焉の魔王』アビルスの力の一部を奪った。だが、死ぬ寸前だった俺にナイラは手助けをしてくれた。俺を頂点としてナイラの目的も達成する」


「契約か……」


 二人の意見が合致した。

 死にぞこないだが、頂点に登りたいカインと何かを成し遂げようとしているナイラ。


 この関係性から『破滅の魔女』ナイラ・ディルリオンの目的が世界征服なのかは分からなくなった。

 頂点の座についたカインの目的は魔王である目的と同じなのだろう。


 そして彼が今、魔王として存在しているということは魔王の資格があったということだ。


「そう、だから私達は契約を結んだ。世界征服を……」


 ナイラが遂に姿を現した。


「目的が一致しているの?」


「ん、あぁ、そうだ」


 いや、嘘をついているのはバレバレだ。

 カインの性格上、頭の良い方ではなく、カインの望みを叶える方針と自分の目的が平行線になっているから利用しているだけだろう。


 でも、それでも魔王クラスを利用するということは世界征服ではないのが驚きだ。


「で、どうする気?」


「知れたことを……このまま魔王の力を拡大させて、二千年前の敗北のリベンジだ!」


 ナイラではなく、カインが答えた。


「……分かった。もう、分かったよ」


 怒りは当然として哀れみもある。


 その中でも一番強い思いは、もう終わりにしたいという気持ちだった。

 彼女にとって目の前にいる存在は非常に歪だ。


 だから、もうこんなものは見たくない。


「――もう、終わりにしよう!!!」




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