93.VS 鮮血姫グロウリーゼ
「ここは……」
玉座の間の前の広い空間。
ここは芸術的なもので構成されている空間、玉座の間への一歩手前である。
だからこそ、ミーシャの目の前には人がいた。
赤髪に赤眼。
幹部の中では意地が悪い性格でミーシャとの関係は悪かった人物。
才能に嫉妬し、今の自分の地位を保つために熱心になっていた女。
魔王軍最高幹部・第四席。
「『鮮血姫』グロウリーゼ・ファーリン……」
ラズウィール、ゼーガ、ロヴァール同様に操られている。
「――《暗黒領域》」
まずは相手の様子を見る。
すると詠唱し、暗黒の領域を展開し、建物が黒く塗りつぶされる。
吸血鬼の身体能力と闇属性のみに特化させた魔法技術。
一点だけに特化させる方法は良くも悪くもないというのがミーシャの評価だ。
まず前提にミーシャのような全属性に適正を持つ者は世界中探しても指で数えられるほどだろう。
だが同じ時間で鍛錬し、対決するなら、一点だけに特化させた方が極められる可能性は高い。
だからこそ、闇の魔法のみに特化しているグロウリーゼも余裕とは言えないし、更に吸血鬼として持前の身体強化で肉弾戦も可能だ。
意地が悪いが、それに見合う実力者なのだ。
そして《暗黒領域》はその名の通りに領域を展開するため、ミーシャのスキルである【万能領域】のように似ている効果を持つ。
それは闇魔法の威力、効果を底上げすることができるため、序盤で領域を展開するのは安定した戦い方だ。
スキルは発動中。
まだ、この流れに倣うならカインとアビルス様がいるはずだ。
カインもどうにかなるだろうが、どうだろう。
『終焉の魔王』という存在がいるため、本当にどうなるか分からない。
「行くぞ――《天聖爆発》ッ!!」
彼女は近接遠距離ともに万能であるため、序盤から火力で押す。
「――《暗黒爆発》ッ!!」
だがそれは同じ爆発系で相殺される。
単純な火力なら、こちらが上だが、闇に特化しているためそれにも対抗できる。
これこそ《退魔刀カオス》が役に立つ。
だが、これ一本だけで勝負が決まるとは思えない。
「ふぅ~……――《天聖千鎖》・《天聖大剣》」
その全てがおとりだ。
「――《天聖切断》」
《退魔刀カオス》を用いて斬撃を放つ。
それら全てを《蹂躙暗黒》で相殺しようとするが、《天聖切断》がグロウリーゼに直撃した。
「あれ……」
退魔があまり効かない。
幹部達の存在は魔族の中でもトップクラスであるため、退魔が効かないのかもしれないが、弱体化が起きれば、弱点になる。
「――《暗黒千鎖》」
その瞬間、ミーシャの周りに漆黒の鎖が現れる。
「――《空間移動》」
そこからグロウリーゼの左方に出現するが、すぐに察知して鎖が伸びる。
「――《魔法削除》」
刀身に魔法を込めて、全方位から迫る鎖を切断する。
もうすぐだ。
だが、もう一つも考えておく。
「――《天聖領域》・《天聖千鎖》・《天聖爆発》ッ!!!」
上位魔法を三つ発動させ、一気に畳み掛ける。
それをグロウリーゼは《暗黒領域》・《暗黒千槍》・《暗黒爆発》を発動し、各自相殺する。
だが、確実なその動作、その瞬間を狙われた。
「――《空間断裂》」
空間が裂かれ、動くことはできない。
「あぁぁぁぁぁッ――」
その一瞬でミーシャは刀をグロウリーゼに突き刺した。
「ふ、ミーシャ……まさか、こんなことが……」
切り札を使わせず、打倒する。
それがグロウリーゼにとって屈辱であり、影で魔王の座を狙おうとしていたことを勘づいていたミーシャの仕返しだ。
「はい、あなたは負けました」
「くふふふ……そうだな。でも……さいご、にッ!!!」
意識が戻った彼女の表情は歪む。
それが彼女の本心であることはすぐに気づき、グロウリーゼは口を開く。
「――《暗黒崩壊》ッ!!!」
その瞬間、グロウリーゼの中にある暗黒が暴走し、崩壊の威力で広がる。
それは《暗黒爆発》のもう一つ上の魔法で最上位の威力である崩壊を織り交ぜたものだ。
「何ッ――」
グロウリーゼの胸に刀を突き刺していたミーシャも当然、暗黒による崩壊に飲み込まれた。
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