90.VS 黒騎士ロヴァール①
魔王城で暮らした経験のあるミーシャだが、全く目的の場所へと辿り着かない。
自分の場所は絶対にあっている。
全方位に伸びる四つの道が交差する場所、魔王城はその大きさから知らない者からしたら、迷路のような構造をしている。
侵入者の対処でもあるが、魔王城を造った奴の理由は知らない。
ミーシャも当初は迷いっぱなしだったが、一年も暮らせば、すぐに把握できるようになった。
そんなミーシャが迷っている。
だが、それは明らかにこの場所がおかしいという証拠だ。
「これって……――《魔法鑑定》」
強大すぎた魔法。
大きな規模であるため、すぐには分からない。
自然というか、元にあったものに溶け込んで魔法が発動している。
「――《空間歪曲》」
文字通り、既存の形、空間を歪ませる。
迷路が迷路に、というよりかはその範囲の空間を歪ませることで動いているが、その場所へと戻ってしまう。
「――《魔法削除》」
これで魔法の効果が消えた。
魔王城に《空間歪曲》が仕掛けられていたのか、でも身に覚えがない。
通路を通り、螺旋階段を上げる。
魔王が居座る場所、玉座の間は魔王城の最上階だ。
だがそう簡単には辿り着くことはできない。
その勘は当たる。
なぜなら、奴の音がするからだ。
ガチャガチャと金属が当たる重い音が聞こえる。
それは鎧であり、その地点に存在する魔力量から誰なのか分かっている。
魔王軍最高幹部・第三席『黒騎士』であるロヴァール・シュロントだ。
螺旋階段を途中まで上がり、横に隣接する小さな塔へと道へと歩く。
ラズウィール曰くはただのオブジェクトって言っていた。
確かに小さな塔だが、ぶっちゃけ使っていない。
そこまでの道に一人の人物がいた。
「……」
「ロヴァールさん……」
剣技においては幹部一の実力だ。
即座に漆黒の剣を抜き、ミーシャへと走り出す。
「ぐッ……」
重い一撃、身体強化を施したはずだ。
でも、それが完全ではないのか……でも時間が経てば、絶対有利戦法が効いてくるだろう。
「ハァァァッ!!!」
漆黒の剣を弾く。
彼、『黒騎士』ロヴァールはミーシャにおいて剣の師匠だ。
その技術は余裕で世界最強レベルと言っていいだろう。
まぁ、自分と同じく幹部クラスを相手に余裕ができるわけがないのだ。
「ミーシャ、参る!!」
ロヴァールの剣技は魔法ですら斬って実質、無効化してしまうのだ。
彼の斬るという行為は文字通り、魔法、事象を斬ることが可能で、ミーシャが危険と判断しているのは彼の剣もそうだが、彼が振るう斬るという行為だ。
ラズウィールのような魔法を主流で戦う者は距離を保ち、戦うほどに彼の剣撃は注意しなければいけない。
「ふぅ~ッ――」
呼吸を整えて彼に立ち向かう。
彼の弟子にして、魔法と同じく剣の技術の鍛錬も怠ることはなかった今のミーシャの剣撃は全盛期に近いロヴァールの動きを目で追え、渡り合えている。
「ぐッ――」
生きていないはずだが、その動きは今のミーシャを苦戦させてくる。
彼が纏っている鎧はミーシャが持つ神器級の《聖魔剣ミアルス》でも全力でないと肉体まで刃が届かせることはできないが、漆黒の鎧は魔、闇で製造されているため、あの武器が役に立つ。
「――《対象束縛》」
大きな隙、それだけで決着がつく。
一度、距離を空けて空間から新しい武器を取り出す。
「《武器召喚・《退魔刀カオス》》――」
虚空から新しい武器を召喚し、ミアルスを引っ込める。
ミーシャの《対象束縛》に対抗し、剣を振るって効果を解除する。
「まだまだですか……私も、ここで止まるわけにはいかないので!!」
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