85.勇者との因縁①
「あれは? そうか、お前は誘導役か……でも目の前に魔族は倒す!!」
「身体強化を――《聖光身体》」
マジか……。
本当に私を殺そうとしているようだ。
勇者の正義感を考えれば、ここで相手が一歩も引かなければ実力的に私が勝つだろう。
だが勇者の本当の力は、覚醒した時だ。
それであの『終焉の魔王』アビルス様を打倒してしまったのだから……。
私はここで勇者を打倒して人類の敵になるか、ここで逃げて魔王の戦力として残しておくか……。
どちらにしろ、今の私は善とは手を組めるはずがない。
元々は魔王軍最高幹部の一人、第七席なのだから……。
「いいだろう……――《大陸移動》」
「え、師匠――」
その時、リーネ、シナ、アカリ、フィムたちを“ある場所”へと転移させた。
それが一つの覚悟であり、自分の弟子達が巻き込まれないようにという配慮だ。
「来い、勇者……その腕前、見てやるよ!」
荒い口調。
彼女、ミーシャはやっぱり恨んでいるのだ。
勇者を……。
杖を浮遊させて《聖魔剣ミアルス》を顕現させて構える。
ミーシャでも勇者と戦うのは初めてだ。
「ッ――」
音速の速さでミーシャは距離をつめる。
ミーシャの心の内側にはたしかに憎しみが存在する。
そう、自分の良心が今まで抑えつけていたが、過去を振り返ると憎しみが確実に湧き上がってくる。
これは紛れもない真実だ。
「あぁぁぁッ!!」
勇者の剣撃は光の速さだ。
予測不可能、この手法のせいで最高幹部、仲間達は敗れたのか。
私は勇者という存在が魔王と対比になる存在だと認知している。
だからその強さも魔王とのような規格外なのだろうと……そう、だからこそ私は強さを求めた。
あの時、私の殆どを消した奴、その存在を自分の手で殺すために……。
どんなに規格外であろうと……。
「ハァァァッ!!!」
純白の連撃。
勇者はまだまだ未熟で動きについて行けていないが、対応はしてくるだろう。
勇者は主に剣技のみだが、光の魔法も使用してくる。
覚醒すれば、一つ一つの攻撃が嫌なものになってくる。
「――《聖光切断》」
《聖剣アルスマルナ》を大きく振り、光の斬撃を飛ばす。
これが勇者のオリジナル剣技だ。
光、聖なる力を凝縮させて放つもので魔族ならば弱点になる。
「く、すばしっこい奴だ」
「ふん、未熟者に負けるはずないだろ!!」
その隙に腹を蹴り、距離を空ける。
しかしあの剣技、未熟だが人類の仲でもトップクラスのものだ。
流石ポテンシャルの高さは規格外の勇者だ。
「――《暗黒槍》」
試しに闇の魔法を放つ。
規格外だけで他に何かないかと探りを入れている。
奴が覚醒し、本気になれば、こっちも本気に戦うだけだが、弱点を見つけておきたい。
「ふッ!!」
聖剣で砕く。
そしてミーシャへと踏み出す。
「何ッ――」
ミーシャは驚いた。
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