79.魔法使いの動向
「そうゆうことがあった……」
ミーシャはどっと疲労している。
身体的にではなく、精神的に疲れを感じているのだ。
「よくよく考えたら、二千年の時間で世界各地を渡り、何かをしていたのだろう」
何か必要なことなのか、分からないが奴が動き出すことは確実だし、そのタイミングも近いだろう。
全てが繋がっているのなら……。
「なぁ、ミーシャ。君の見解はどうなんだ?」
「……かつて二千年前、魔族の頂点である終焉の魔王が猛威を振るった時代に魔王とは別で名を馳せていた人物が私と同じように今も生きている。そいつの名は破滅の魔女ナイラ・ディルリオン……私がこの前まで王国の宮廷魔法使いになっていた時に城の中で遭遇し、誰かに会っていた」
その言葉には説得力があった。
いやミーシャを知っているならば、当然のことだろう。
「奴の目的は世界征服か、分からないが世界に影響を及ぼすことは確かだ」
「その根拠は?」
「魔王と共に名を馳せていた奴等は全員、世界の支配権を争っていた。あの枠組みの中でただ一つの名になれば、強大な力の存在になるのは自然な流れだろう」
二千年前の人物。
だが奴に対して思うことは、どうやって不老となったのか。不老を可能する術としてはミーシャが口にした不老の石があるが、それを作り出したのは魔法を研究していく過程で不老の研究も二の次で進めていた過程にて偶然が生み出した結果だ。
「さぁて、どうするか……退魔を手に入れたから目的は達成した。なら、もう破滅の魔女の領地へと向かおうと思う」
「マジか……本当に行くのか」
「結局は行かなければならない。かつての仲間、家族同然の人達の死体を操って、こちらに仕掛けてきたんだ。動機は余りあるほどにある。奴の目的もある程度、分かっている。だから私は行く」
そのミーシャはずっと前から覚悟を決めていた。
もう生涯の中で最大の敵だろう破滅の魔女ナイラ・ディルリオンの戦いを……。
「だから二人は嫌なら――」
「――師匠!!」
リーネが大声を出す。
ミーシャは二人の真剣な顔をただ黙ってみる。
「私達も戦います。弟子として師匠の後をついて行きます!!」
「私も力になります!!」
「でも、相手は魔王軍の幹部。もう死んでいるけど、その力は全盛期の力を行使する。それほどの者を相手に出来る人なんて私しかいない」
「師匠、でもそれでも……。私は師匠と行きます。離れ離れも嫌だけど、師匠の役に立ちたいです」
「私も……ミーシャさんの力になりたいです! もし、敵地で死んでもついて行きます!!」
リーネとシナはミーシャの腕を掴み、懇願する。
少女は自分の立場をしっかりと理解している。
ミーシャと比べたら、石ころな力しか持っていないことも理解している。
だけど、それでも……世界最強の強さを持つ『万能の魔法使い』であるミーシャの弟子と離れることはせず、役に立ちたい。
もし、そこで死んでも……。
ミーシャという自分を救ってくれた人の役に立ちたい。
その気持ちは伝わっている。
けど、危険すぎるんだ。
でも、ミーシャも心の底では一人では不安なのだ。
「分かった。全力で支援する。それでも命の危険は伴う。それでもいいなら、一緒に来てくれる?」
涙を流すミーシャ。
リーネとシナは返事をして三人は抱き着き合う。
「おい、お前も行け、アカリ」
「え、私もですか?」
キイチロウは弟子のような存在であるアカリに言う。
彼女にも天才にして万能である魔法使いの元で経験を積ませたいという思いがあるのだ。
キイチロウ・デルゲンハルトは剣技を編み出した過程でアドバイスをされたが、そんなものだけで彼女の凄さを感じたほどに彼女は世界全体で見ても素晴らしい人物だ。
「いいか、ミーシャ」
「いいの、アカリ?」
「はい。私も弟子として……」
急なことだが、リーネと出会ったミーシャは少しアカリのこともリーネと歳が近いことも関係しているのだろう。
「で、いつ出発するんだ?」
「……明日にでも」
世界は少しずつ変化し、ミーシャは遂に最大の敵へと動き出す。
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