76.VS 鬼の首領②
「何だ……」
ダメージは《絶対身体》で無効だが、意識、身体の状態が異常と化している。
でも、おかしい。
ミーシャのオリジナル魔法で絶対系の一つ。
上位魔法――《絶対身体》はあらゆる攻撃、状態異常を無効化する絶対な身体を意味する魔法だ。
有り体に言うなら、自分に向けられた力を一切の影響を受けない。
だが突破する方法はある。
絶対な身体、その内側にあるものと共通しているものなら話は別だ。
奴が武器に使っているのは血液、人間であるミーシャの体内に流れているものと同じものであり、《絶対身体》を発動してもその壁を超えるものがある。
それが空気だ。
呼吸は何も変わらず、行える。
身体から血が流れるように……でも抜け道、同じ血液なら……。
「これは……」
中位魔法――《魔法鑑定》
それは呪い、呪詛だ。
――《呪詛解除》・《呪詛耐性》
すぐに対策する。
同じ生物として身体が無敵であっても体内に入り込んでしまえば、効果が発揮される。
魔族の亜種。
そう、例えてはいるが、魔族と人間の半々と言ったものだろう。
完全に異なる生物なら、そんな抜け道は存在しない。
「――《対象束縛》・《閃光大剣》」
ミーシャの前に五つの魔法陣が展開され、光の大剣が射出される。
魔法で束縛された鬼の首領に光の大剣が突き刺さる。
「があああああぁぁぁぁぁッ――」
断末魔。
距離を空けているが、耳を塞ぎたくなるほどの迫力だ。
「――《疑似恩恵付与》」
身体強化と闇と呪いの耐性を向上させる。
光系上位魔法でダメージを与えた鬼の首領だが、鮮血魔法で治療も可能なのか。本当に魔法は高価が抜群ではないのか、まぁあの速さなら、避けられるのがオチだが、なら、確実な方法で……。
「ハァァッ――」
地面を蹴り、一瞬にして鬼の首領との間合いを詰めて一撃を食らわせる。
だが避けられる。
自分にとって致命的な弱点なら、警戒度は最高だろう。
なら、別の隙を……。
「――《輝光矢》」
光が迫る。
「ッ――」
鬼の首領は横に避ける。
だがその光の矢は追尾効果が付与されているため、軌道を変えて迫る。
「クソッ!!」
言葉を吐く。
そして進んだ方向に魔力反応を感じ、振り向く。
追われている光より、致命的な弱点を持つ魔法使いを警戒するべきだ。
「残念」
ただ一言、口にした瞬間、鬼の首領は刻まれた。
「がぁッ――」
腕を落とした。
それでも鬼族の頂点の身体能力はそれだけで留まったが、致命的なものであることには変わりなく、自分は腕を落とされたが、相手はもう鮮血の呪いを解消して五体満足と迫ってくる。
この状況は圧倒的に不利であり、もう気を抜いたら首を取られるだろう。
「はぁッ――」
息を吐き、少し気を揺るすと全身が恐怖に染まる。
そう、これが緊張という殻で感じ取ることが出来なかった感情、いわゆる本音だ。
重圧に掛かったように身体が重くなり、足に不可がかかるが、それを堪え、片腕を抑えている手を離す。
そこには大量に流れる自分の血。
そう、これが自分の武器……絶滅寸前からここまで繁栄した力、種族のため、自分のために負けたくない。
「はッ――」
吹っ切れた。
自分が持つ最終手段を右手に込める。
「来るか」
今までで最大の魔力反応。
これが鬼の首領にとって切り札であることは確実だろう。
「――《鮮血新星》」
彼女の手に集められた血液の球体が光を放ち、光の速さでミーシャに迫る。
「カオスッ!!」
《退魔刀カオス》に魔力を流し、光輝く刀で鬼の首領の切り札である鮮血の球体を両断した。
一閃。
赤色の光、そして大爆発が起こる。
その規模の魔力反応はなかったが、無理やり詰め込み、その反動を利用したのだろう。
更に鮮血の威力はただの液体ではなく、当たれば人体を切り刻むことが出来るほどだ。
「今のは、良かった。流石、鬼の首領だな」
血まみれであるが、無傷のミーシャが手に持つ刀は鬼の首領の胸を貫いており、勝負は決着を迎えた。
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