73.鬼の居場所
「――《存在探知》・《魔力探知》」
探知系魔法を発動し、真っ直ぐ進む。
流石と言うべきか、あの巨体の鬼が森の中に消えた。
突撃するという行動から魔法は使用できないことが証明されたが、さっきまで数百の数だったが、半分以上が死んだ。
その生き残りの数でも数十はいるはずだが、目視で見えない。
「何だろう……ん?」
靄が見える。
しかも色付きだ。
目が変になったのかと一瞬思ったが、これは《魔力探知》から通して瞳に映ったものだ。
この探知結果、空間に靡くようなもの、この形は……。
「結界だな」
ミーシャの経験から導き出されたのは結界がこの森に展開されている。
魔力の反応、大きさについてはあからさまに魔力を放出する攻撃系が分かりやすいが、それ以外、防御系や瞬間移動、結界などの展開は精密な操作が可能なら、凄腕であろうとバレることはない。
バレずにやるなら、魔法国の議員なら、頑張る程度だ。結界は攻撃系の領域や広範囲と似ているが、端的に言うなら、境界を築くことで空間系だ。
内と外を定め、両方に影響を及ぼす。
例えば、空間を歪曲するものなら、外から内に入れば、その内側は外の空間より広大であり、外から見たら、何も変化はない。
「このレベル……鬼の首領」
そう呟くが、その可能性は低いと断じる。
鬼の首領だけが特殊な個体なら、話は別だが、他の個体と倣うなら魔法使用はできない。
でも、結界が展開されている。結界は空間系魔法だが、隠蔽系なら中位魔法――《隠蔽結界》があるが、それでも見破ることはできるが、精密な魔力操作で展開すれば、気付かれないことも可能だ。
精密な魔力の操作というのは、端的に言うなら魔法というものを身体の一部として感覚で捉えるレベルの事を言う。
それが可能なら、魔法展開後の操作や魔法の開発、魔力の消費操作などが出来るかどうかのラインだ。
そのレベルは魔王の幹部やもちろん魔王クラスだ。
「まぁ、このレベルでも良くできている」
ミーシャレベルの《魔力探知》でも色付き靄しかとらえられないなら、それはレベルが高いと言える。
探知系にはそれだけだが、森の中にいるというのに自然みがない。
この状況を解決するなら、精密な魔力操作で自然という雰囲気がかき消されたと思われる。
勘違いされるが魔力は自然に漂っているため、自然に近いものだと思われるが、一つの仮説で自然と魔力は全く密接に関わってはいない。
自然とは魔力のような力ではなく、何も力が加わっていない環境だ。
そして自然みが感じられない。
もう間違いはないだろう。
まず結界を破り、再び展開されるのを防ぐ。
地形から見れば、鬼族の居場所は山奥だということは誰だってわかるが、今まで存在が消えていた原因は結界のせいだ。
そして見つけた。
そこは何もないが、彼女の眼前には境界が展開されている。
それは鬼の里。
長年で里へと発展したが、その中心には塔が築き上げられている。
ミーシャほどの実力者なら、中位魔法――《魔法鑑定》を使用すれば、自分と同等であろうと魔法を見破ることが出来る。
「さぁ、始めようか……――《魔法削除》」
その瞬間、鬼の里を囲む結界が消滅し、『万能の魔法使い』であるミーシャは進行を開始した。
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