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68.退魔の真実



 巫女が生贄となった洞窟。

 それ以前までは何の変哲のない洞窟だったのかもしれないが、魔力を扱うものならわかる。

 ここは今でも特異な魔力が漂っている。

 だがその力は限りなく、微弱であり、端的に表すなら残り痕と言った方がいいだろう。


「なるほど……」


 そんな状況な洞窟をミーシャは読み取りながら、奥へと進む。

 大地からの魔力は何一つ変わらないが、発生する魔力がその退魔という特性に反応している。

 しかしそれはただの反応である。

 でも、それだけでも退魔という特性がイレギュラーであることを証明している。


 奥へ、奥へと進む。

 退魔というものがここにあることは周囲の魔力の反応で悟ることができ、ミーシャは本当のそれを目にする。

 鉱石としてではないが、確かに退魔というものはそこに存在した。


「光と闇……」


 魔力を色として可視化できるミーシャには光である黄色と闇である紫が混ざった色彩が奥で漂っていた。

 魔力を可視化して捉える技術は魔力の精密操作を手足のように操る実力、一流の魔法使いであろうとごく一部にしか扱えない能力だ。


 あれが退魔の魔力。

 まだあったことに感謝しよう、見つからなかったら最悪自分で生み出すしかなかったが、流石にそこまで自信がなかった。

 魔王城にあった書物の中にあった退魔のことについては知識として知っていたからこうして赴いたわけだが……。


 神器製造、絶対性の魔法開発、絶対というものから派生した新たな力であるスキルの開発を行ってきたミーシャだが、新たな属性を生み出すと言った方向なら絶対という属性を生み出したが、それは極限を追い求めた結果だ。

 絶対性の力を欲し、現在の魔法理論を組み替え、風や炎、闇や光と言った確立された新たな属性を生み出したことは似ているが、それとこれとでは位置が違う。

 言ってしまえば、絶対という力の到達点とは明らかに違う。


 縦方向の答えが絶対なら、退魔というものは横に伸びる特異なものだ。


 それに現実に存在するなら、一度は確認した方が無計画に開発するより効率が良いとは馬鹿でもわかる。


「早速、やってみるか」


 魔力の精密操作は得意であるミーシャは退魔に触れる。

 色という外見、その内側に入り込んで内包する情報を読み取り、その成り立ちを知ることとなる。


 退魔の真実。


 それはイレギュラーで突発的な発生だった。

 その真実は巫女の願いが関係していた。

 彼女の願いは平和、それは当然のことだろうが、その自分の気持ちと巫女という自分の立場を理解して考えた結果の行動なのだろう。


 自分の死というものをそう簡単に差し出せる人なんて早々いない。


 だからこそ、彼女は巫女としての素質があったのだろう。

 その巫女が身体を焼かれている時に強く願ったことが退魔の発生の原因。


 それは純粋なる平和。

 客観的に見たら、ただの小ささ願いだが、巫女という肩書は奇跡を可能とするほどの存在なのか、彼女自身に要因があったのだろう。


 願いに反応し、奇跡は魔を退ける特性を持った力を生み出した。


 端的に言うなら彼女の死と引き換えに彼女の魂、生命と呼ばれるあらゆる部分が元となって退魔が生み出されたのだ。


「なるほど……正に奇跡か。この力、少しもらうよ」


 正直、全てをもらいたいが、それでは退魔の元となった彼女の意思を踏みつぶす行為だからだ。

 少しだけの退魔だけでも利用し、目的を成し遂げることが『万能の魔法使い』としての実力だろう。


「ミーシャ、様……」


 獣人少女アカリもその鋭い五感から魔力の流れと性質を感じることが出来るため、少し揺らいでいることに不安を覚えているのだ。


「大丈夫……」


『――あなたは?』


 退魔の魔力の一つを手で掬うように操作するミーシャの耳に女性の声が聞こえた。


「あなたの力、魔のために扱います――」


『そう……わかったわ。持っていきなさい』


 まだ意思か、魂が退魔の魔力の中心に宿っているのか、分からないほどに目に見えないレベルまでの話だが、一応断りを入れてミーシャはその手に退魔を受け取った。


「これで……」


 掌サイズの退魔の魔力を固体化させ、黄と紫の色が渦巻く結晶へと変わった。


「まさか、それが!」


「あぁ、退魔の鉱石だ!」


「キャァッ――」


 と隣にいるアカリの叫びが聞こえ、その方向を向くと彼女の姿はなかった。


 だが彼女の啜り泣きから後ろを振り向くと数人、黒い布を全身に纏った者達が数人いた。


「誰?」


「偉大なる魔法使いよ……我らはこの国の情報を秘匿する者、首脳、明桜会の暗躍部隊、暗黙法がその退魔の鉱石を受け取りに参った――」




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