59.後継者
「ここは……」
「誰かと言葉を交わすのは本当に久しいことだ」
気付くとシナは白い空間にいた。
そして響くのは低い声。振り返ると白銀の巨竜が存在した。
ふと、自分の今までを思い返し、ここが竜剣の内部であることは自然と理解が出来る。
なら、目の前にいる白銀の巨竜は最初の竜王ハールゼリアであるのだろう。
「初代竜王ハールゼリア?」
「左様、君のことは知っている。シナ……竜人の娘。そしてこの状況も……我はもう寿命だ。だから最後に生命の役目を全うする」
「役目……?」
「あぁ、次の世代への継承だ。君は竜種の中でも稀の中の稀。だから君に託そうと思う」
「私に?」
「あぁ、この世界の平和を保つために……迷っている猶予などない。この力の根源を君に継承する。その力で自分の望む行いに活用するがいい」
その力の根源。
それは今、外界で暴走している膨大な魔力の発生源、竜王の核とも言える魂と同義とも呼べるものだが、竜王はそれを魔力炉として分離し、シナに扱えるものへと変化させる。
それでも成長していけば、竜王を超えるであろう竜人になることが出来るだろう。
「これが君の一つのきっかけとなる。我は世界を守るために戦い、死亡したが、神によって竜剣へと転生した。この人生が満足だったのか……いや正直、私は心の残りがあった。だがこれでもうその心残りはなくなった。誰かに継承する……この苦しみではなく、善なる者に……」
そう、これは紛れもない運命だった。
竜人という貴重種なんて望んで異様と生まれるはずがない存在が竜剣へと融合した。
竜王は満足の行く人生を起こることはできなかったが、それでも一つの事は成し遂げたいと思っていた。
生命として次世代への継承によって……。
世界創生、地形が出来上がり、源が大地から溢れ出す。
その誕生したばかりの大地から最初の生物が誕生した。
それが竜種と呼ばれる生物。
その屈強な生態、その後に生まれてくる生物に決して劣ることはなく、生物の頂点として君臨し続ける生物。
この世界が必要として生み出した世界の守護者。
その肉体的に精神的に気高く、誇りとプライドを持つ。
天空、大地ともに行き来することが可能な自由な種族。
そして初代竜王ハールゼリアは地震の心臓から力の源である魔力炉を取り出す。
それは光輝く宝玉のような見た目をしていた。
「どうだ、受け取ってくれるか?」
「……はい。ありがとうございます。私に力を授けてくれて」
シナは感謝する。
竜王の話は継承をして心の残りというものを納得するための一つの行動。
つまり完全には納得はできないが、消えていくのだ。
それが彼の人生だということをシナは受け入れられない。
そんな苦しい人生を簡単に飲み込めるかと言われたら、自分だったら絶対に不可能なことだ。
「うッ……う」
悲しい、と身体が心が反応する。
「泣くな。確かに自分でも完全に納得することはできないが、この行いは自分自身で納得すℛ咆哮へと少しでも持っていくことだ。そして君には強大な力を継承する。言い方を変えれば押し付けだ。そんなことを君は承諾してくれたんだ……それだけで私は君に感謝するよ」
「竜王様、私が後継者で本当にいいのでしょうか?」
「そうだな。少なくとも私は君を後継者として信じるに値する人物だと思っている。その気持ちを裏切ることなく、ここから歩んでくれ……竜種の戦闘に立たなくてもいい。自分がやりたいように……まずはあの魔法使いの後ろを追う所から……」
「ッ……はい、そうします」
そして白い世界は開かれる。
「魔力が!」
それと同時に顕現した竜王の影にも変化が訪れる。
『万能なる魔法使い……後継者を頼んだぞ』
「え……?」
その言葉は確かに聞こえた。
それは竜王の影からその声、意思は伝わってきたことでミーシャは瞬時に状況を理解する。
「……初代竜王ハールゼリア」
その影には確かに意思を感じる。
暴走状態であったのは、本当に限界なのだろう。
『愚者である子孫は連れて行くぞ……』
その声とともに魔力が獄炎状となり、深い傷を竜王ゼガーディアに襲い掛かる。
「ガアァァァァァッ!! ヤメロォォォォォッ!! 俺ハ、マダァァァァァァァァァァッ――――」
そう、無様な断末摩を上げながら、魔力の獄炎の中で消滅した。
本当にざまぁとしか思えない光景だ。
焼き尽くされたのは愚の竜王のみ、だがその他の竜王側についていた竜達はその初代竜王の獄炎に怯え、完全に恐れている。
愚なる権力者は消えた今、全てが終わった。
首代竜王の影は収束し、跡形もなく、消え去った。
その後にはシナが現れた。
「シナ!!」
ルナとリーネが真っ先に駆け付ける。
竜剣に取り込まれたシナは確かな変化を遂げていた。
あれは魔力を放出する炉だ。
「ミーシャ様……ごめんなさい」
あの全力攻撃により疲労状態で一歩も動けないミーシャに近寄り、シナは頭を下げる。
「いいや、しょうがない。ミスは誰にもある、からシナの方は大丈夫なの」
「はい、私は大丈夫です。ミーシャ様の方は?」
「私は……――」
おかしい、力が抜けて視界が黒く染まった。
久しぶりに全力を出したからか、深く眠るように漆黒の海に沈んでいった。
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