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53.VS 氷竜ヴィーゼ②



 私が強さを求めたようになったのは、魔王様に拾われた時から……。

 私が万能を求めるようになったのは、魔王様が勇者にとって消滅した時から……。


 私は自立して『万能』を目指した。


 まずはあらゆる魔法を極めて、魔法の探求に熱中した。属性系統から入り、確率されている上位魔法を会得し、魔法の研究を行う。

 絶対性を持つ魔法を開発した。

 何で不老不死なのかは王の側近一人に賢者の石と命名された永遠の命を手に入れられる石を最後に託されたからだ。


「ぐああッ……」


 死の力が全身に広がり、巨体を覆っていた高密度の魔力に漆黒の亀裂が入る。


「あぁぁぁぁぁッ!!!」


 自分の力を全力で振るう度にこの基礎を築いてくれた人達が思い浮かぶ。

 グギギギと氷が軋む音が響く。

 私が力を極めた理由……最初は魔王復活のためだったが、今は少し違う。

 正直、もう諦めている。

 次の魔王が誕生すると思うが、もう私のことなんて知らない。

 私も元は人間、だから人族の皮に立つかもしれない。


 でも、今は弟子の一人を救うために――


「食らえ!! ヴィーゼッ!!!」


 両手に力を入れ、亀裂の入った魔力壁に純白の刀身を食い込ませる。

 この魔法壁を絶対に破るという渾身の覚悟を抱き、善魔力を体と都心に流す。

 バキッ……半透明の魔力壁に入った亀裂が乖離し、砕ける。


「ッ――――」


 魔力壁が破れ、《聖魔剣ミアルス》の地位撃が竜の頭部に炸裂した。

 絶叫にもならない強い波動が氷の迷宮に轟く。




 竜種は世界創生から最初に誕生した生物である。

 原初の竜、後に竜種を統べる存在が誕生した。


 現在でも強大な力を持つ竜種。

 その竜種の中でも上位竜の頂点である四大竜は天変地異を起こる力を持ち、国家一つを相手取れる戦闘力を持つ。

 竜種が世界にとって正当な存在だ。


 正当というなら勇者、魔王は正当なのだろう。

 魔王は代々、魔族の中から魔王の素質を持つ者が生まれる。

 魔族において魔王という存在は力ある者なら目指そうとする目標であるため魔王の適性を持つ者と強者で度々争いが起こる。


 それに対抗する存在、勇者も人間の中から素質を備える者が誕生する。

 それが人間の希望であり、神に選ばれた者。

 勇者は完成した魔王に対抗できる唯一の存在。


 だから……魔王が負けるのは必然だったのかもしれない。

 それが世界の理なら、本当に悲しい。

 あの戦いは決められた敗北だったのだろうかと私はふと考えてしまう。


『お前、名前は?』


 私は帝国周辺の小さな集落で生まれた。

 帝国軍は軍事力を高めることという名目で私の集落は襲われたが、そのタイミングを見計らった魔王軍に滅ぼされた。


 その時に私は魔王の側近、『冷酷の魔帝』ラズウィールと出会った。

 二つ名のように冷酷な表情で私に名を聞いてきた。


『君は才能があるな』


 彼女の言葉は正しかった。

 魔王軍に勧誘する前に『終焉の魔王』アビルス・シィル・ルヴォロワールと出会い、最初こそは冷たく接されたが、私が成長する度に対応が穏やかになった。

 魔王様は冷酷な表情とは半譚にその容姿は幼かった。


 私の居場所は魔王軍だった。

 だがあの日、人族との全面戦争を起こった日に勇者は魔王城へと乗り込んで来た。

 城内を突っ走り、玉座へと辿り着くには時間はかからなかった。

 城外で軍に指示をしていた最高幹部、城内にいた最高幹部、ミーシャを除いた全員が勇者によって殺されてしまった。


 あれは卑怯だ。

 だが『終焉の魔王』アビルス・シィル・ルヴォワールは容易く殺せるほど甘くはなかった。

 彼女が持つ魔王としての証、威厳、恐怖されるのはこの世界で最も悍ましく、最強と謳われた力を持っているからだ。


 それはあらゆる物に終わりを齎す力、終焉の力。

 二つ名の通りに食らった対象を消滅させる絶対破壊エネルギー。

 でも結果は敗北だった。

 残された私は復讐を決め、強さを求めたが、この強さを手に入れた時には勇者は寿命が尽き、死んでいた。

 とっくの昔に……。

 絶対性を持つ魔法なら、勇者にも対抗できる。


 だがもう正直、復讐が叶わなかった時点で私は諦めたのだ。


「はぁ……はぁ……」


「ググッ、強者の中の強者だったか……その力、人を容易に超えているな」


「ふふ、当たり前でしょ。私は万能なんだから!」


 私が前に進むことができる理由は弟子、守るべき人がいるからだ。


 突き進む理由なんてそれで十分だ。




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