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51.氷の迷宮



 ハウレスレイブ山脈の奥に存在する氷に包まれた山脈の一角。

 今代の竜王から独裁のような形となり、不満がある者は奈落、そしてこの迷宮に移動させられた。

 この迷宮は『四大竜』の一角である氷竜の異名を持つ青銀の竜が住まう場所。


「ふん、もしも奈落から出ようとそこはあいつの縄張りの中……どうせ食われるか、氷漬けにされるかのどちらか……まぁ、俺が手を下すまでもない」


竜王は余裕の表情で述べる。


「お願い! ミーシャ様とリーネを帰して!!」


「ふん、馬鹿が。元々貴様は我から生まれた存在、なら貴様は初めから我の所有物だ。そんな存在が我に願いだと……身の程を弁えろ!!」


「ッ――――」


巨大な腕がシナに迫るが寸前で止め、地面に叩きつけ、亀裂が入る。


「残念ながら、あそこに移動したんだ。もう死んだよ……もう貴様は諦めて、生贄となればいいんだよ。フハハハ!!」


 高らかに竜王は笑う。

 もう全てが手の内である現状、竜王はもう既に自分の勝利に浸る。


 胸が苦しく抑える。シナは責任を感じていた。

 竜王の娘である自分が悪いと生まれてきた自分が悪いとそもそも生まれて来なければよかったと……苦しい、悲しい感情の中で思考は悪い方向へと向かっていく。


「……うッ、ミーシャ様……ごめんなさい」


 そしてシナは泣き崩れてしまった。






 その頃、ミーシャ達は氷の迷宮を進んでいた。


「はぁ、はぁ……拡大魔法――《空間支配スペース・ドミネイション》……よし、次は《罠探知トラップ・ディテクション》・《存在完治イグジスタンス・ディテクション》・《気配遮断サイン・ブロック》・《音声遮断ボイス・ブロック》・《視認不可インビジブル》・《絶対身体アブソリュート・ボディ》」


「ありがとうございます。師匠」


 ミーシャは徹底的に魔法を付与する。

 拡大魔法を重ねて発動した――《空間支配スペース・ドミネイション》で周囲の構造は理解できる。

  

 そして――


「探知魔法――《正道探知コレクト・ディテクション》」


 これは迷宮探索には役立たないが、正規ルートを示してくれるものだ。

 ミーシャにとっては必須の魔法だ。

 しかしこの魔法は上位魔法であり、大抵の冒険者には使用できず、迷うのがお決まりとなっている。


「右だ!」


「左だ!」


 流石に魔法があれば迷うことはない。

 しかしこの氷の迷宮は微かに魔力を感じる。

 微かの正体は氷から発生している……ということは、この氷は自然にできたものではない。

 最初の迷宮は如何にも人工的だったのに魔力が枯渇していたのなら、今回も迷宮は微かに魔力があり、意図的にいやこんな広範囲に氷漬けにできるのなら……あの竜王と同じくらいの実力を持つ者。


 あの竜王の適正属性は氷ではなかった。


「え~と、随分広いな。《正道探知コレクト・ディテクション》を使用していてもまだ出口に着かないなんて……」


「はぁ、はぁ……本当にそうですね。でも早くしないとシナが」


「あぁ、分かっている。進むよ!」


 もしこの先に『四大竜』の一角がいるのなら、まぁ、戦いしかないだろう。

 竜王の仲間なのなら問答無用だろう。

 しかしこの迷宮はただ進むだけじゃなかった。


「ッ! 冷気が……」氷の通路の先から冷気が漏れている。


 この冷気、魔力で発生している。

 なら、この先に……『四大竜』の一角が……。

 ミーシャとリーネは前へ走る。


 今は助けることだけを考えて……。




 そして――


「ほう、これはまた珍しい来訪者だな。まさかこんな者達を送ってくれるとは奴には手には負えないか……」


 氷の通路を抜けた先はとても広い空間だった。

 真っ白な円形の床に天井は存在しているのか分からないほどに高い壁にその上には真っ白な光が空間を照らす。

 空間の中央に居座る青銀の竜はあのクソ竜とは違い、品があるような口調でその姿は凛々しいものだ。


「貴方が『四大竜』の一角で間違いない?」


「左様。我が『四大竜』の一角である。それで君達は何なのかな? 我が冷気に触れても何ともないなどと今までの存在とは明らかに違う。そしてあの奈落から出てきたのも、また然り」


「それほどの実力が私にはある。それの証明にされば嬉しいけど、今はこんな所にいる場合じゃないの! 竜王に私の弟子が捕まったから取り返さなくちゃいけないから!」


「ほう、あの竜人の……」


「何か知っているなら話してくれ! あの子が捕まった理由を!」


「君は気付いていないのか? ここがどのような場所で、地下に何が眠っているのかを……」


 その言葉を聞き、ミーシャの頭に一つの事が浮かぶ。


「竜剣、か」


「左様。奴は竜人の娘なら竜剣を制すると思っている」


「竜剣を制する? そんなことあの剣を持った勇者でも負担は絶大だったのに!」


「あぁ、だから人間と竜の子供である娘が必要だったのだ」


青銀の竜の言葉には納得ができる。

 生まれた時からシナは利用され、逃げ出したが連れ戻された。


 あの剣を握り、もし制しても……ならその後は……。


「竜剣を制した後はどうするんだ?」


「……無論、奴がその力を手に入れる。竜剣を手にし、抜く。そこまでが娘の役目であり、恐らくだがあの女が何とかするのだろうが……」


「女……?」


言葉の最後に出てきた女という単語にミーシャは反応する。


「女って言うのは……」


「……魔女だな。我らと同等かそれ以上の力を秘めていた女よ。竜王にそれ持ち掛けた張本人だ」


「その女の姿は……」


「お~確か、赤紫色の髪に白い肌……確か名は、ナイラとか言っていたな」


「ッ――――」



 ナイラ、ナイラ・ディルリオン。

 その名はラズウィールの件から殺意に変わった。

 二千年生きている理由についてはある程度予想がつくし、目的も……。

 

「ほう、その殺意……中々のものだな。それだけ憎い相手なのだろうな」


「で……」


「ん?」


「で、ここを出たいんだけど……教えてくれないかな?」


「ふ、ふふふ……それは否、我はここの領域の支配する者。ここを通りたくば……我を打倒するのが当たり前だろう」


「そう……殺されたいなら、さっさと言えばいいのに……殺意を湧かして、受けて立つとか……こっちも存分に戦えますよ! リーネ、通路に居て、魔法をかけてあるから平気だと思うから」


「分かりました。気を付けてください、師匠!」



 そして氷の迷宮の最奥で一体と一人が対峙する。


「では、改めて我は『四大竜』の一角である氷竜ヴィーゼである!」


「私は『万能の魔法使い』ミーシャ、悪いが、すぐに終わらせる!」


 こうして又しても別の存在との戦いの火蓋が切って落とされたのだ。



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