50.オリジナル魔法
「クソ、しつこいな!」
「どんどん迫ってきます!」ミーシャとリーネは更に下へと落ちたが、奴の移動速度は生物じゃない存在だから成せるものだ。
「チッ、これじゃきりがない!」魔力を感知するなら、消せばいいことだが……それは魔法の効果であって、永遠ではないから効果が消えたと同時にまた追ってくるだろう。
なら、このまま一番下まで行けば――
「グオォォォォォッ!!」
「えぇぇい――《光の一撃》!!」杖を向け、魔法を発動する。
少しでも魔力を捕食で距離を開けられれば、後は下の環境に願うしかない!
「師匠、まだ追ってきます!」
「後はここに賭ける!」ミーシャ達は更に奈落へと至った。
そしてここはやっぱり世界から発生する魔力で溢れている。
これなら――
「魔力を食べるアイツ、でもここから居場所を晦ますことはできる!!――《蹂躙する暗黒》!!!」ミーシャは周囲を地形を砕き、更に魔力を放出させる。
魔力で居場所を特定するのなら、その魔力が溢れている場所なら姿を消せる。
それにただ晦ましだけじゃない。
私が伊達に二千年生きていないという証拠を見せてやる!
「これが私の二千年に生み出した努力の結晶の一部!」
今までも使ってきた絶対系魔法の一つだ。
そしてこの状況はその魔法が最大限に発揮する。
その絶対魔法の開発過程はまずは全く新しい魔力の開発から行い、結果絶対的な効果を持つ魔力を見つけ、魔法として組み上げた結果できたものだ。
その魔力の変化は属性云々ではなく、思えばこれと似たようなものだった。
つまり私の”オリジナル魔法”がここから最大に発揮する。
「――《絶対領域》!!」黒い煙に杖を向け、絶対魔法を発動する。
絶対魔法の一つである《絶対領域》はその名の通りに絶対の領域を展開する魔法だ。
その絶対とは外の敵から守ったり、逆に領域に内に敵を閉じ込めたり、領域に向けて発動した魔法の効果は絶対なるなどの効果がある。
今回は閉じ込めるだけではなく、消滅させる。
絶対魔法の開発の中でも開発した魔法はそれだけではない!
この魔法の威力は凄まじく、今までの戦闘では事足りたが、今回の特殊な敵に放つには丁度いいものだ。
「黒い獣よ、消え去れ!――《絶対消滅》!!」
その魔法を発動した途端、白い光が領域内に溢れ出し、凄まじい衝撃と共に黒い獣の姿が消え去っていく。
一点に魔力を集中させ、空間を捻じ曲げ、対象を跡形もなく消滅させる現存する魔法の中で最大の威力を誇る魔法。
この威力は上位魔法の防御ですら意味をなさないだろう。
そして声も轟くことなく、白い光に包まれた黒い獣は跡形もなく消滅した。
「ふぅ~……ここに魔力があって助かった~」威力は絶大であるからか、その消費魔力は魔法の中でも凄まじいものだが、ミーシャが保有する魔力の三分の一くらいは持っていかれる。
一点に威力を集中しているためこの消費で済んだが、広範囲に拡大したなら一発で全魔力を消費し、ここ一帯が消滅するだろう。
「師匠! 大丈夫ですか?」
「あぁ、リーネは無事か?」
「はい、大丈夫です!」
「よし、じゃあシナを助けに――」
その時だった。
ゴゴゴゴゴッ!!!
とこの辺一帯が大きく揺れた。
「な、何だ?」周囲の魔力を使い過ぎたのかと少し不安になるミーシャだが、揺れるだけで辺りに変化はない。
こんな地下深くで揺れとなると、更に下が発生源だろうが、今はどうでもいい。
「行くよ、リーネ!」
「はい!」ミーシャは《飛行》を発動し、奈落の入り口を目指す。
この奈落は恐らくあの竜王の性格上、裏切りや自分に反対するものを処刑する場所だったのかもしれないな。
それにしては血生臭くもないという点では処刑場とは言えないが……全部アイツが食ったのだろう。
絶対魔法――《絶対消滅》を発動せざる負えない存在なのだから、恐らく上位竜でも敵わなかった。
「まさかとは思うが、あいつのせいでここに魔力が……いやあり得ないか」
あいつは接触したものの魔力を喰っていた。
なら空気中も同じだか、ここから出たのなら竜が全滅していてもおかしくはないが……。
まぁ、それも出て見ればわかるか。
ここがどこなのかが、分かれば……。
そしてミーシャ達は奈落から脱出した。
「え……」
「ぶるるる……寒いです」
奈落を出ると辺りは氷に染まり、白い景色だった。
竜王と対峙した迷宮ではなにことは確かだ。
「ここは、どこだ!」ミーシャは周囲を見渡すが、空を覆い尽くすほどの地形のおかげで確認の取れようがないが、ここが山の中だと言うことは分かる。
竜種の生存範囲であるハウレスレイブ山脈の中だろうが、遠くから見た時は氷なんて見えなかった。
つまりは正面の裏ということか。
「全く、自分は戦わず、遠くへ飛ばすとか……めんどくさい方法をやってくれたな」ミーシャは状況を整理し、ますますあの竜王がムカついてきた。
自身で戦うことはせず、同胞が死のうと笑い、自分以外は駒であるという認識。
少なくともこの世の悪であった魔王ですらそんな性格ではなかった。
あんな性格なら魔王軍がとっくにやられて、いや自滅していた。
つまりあのような性格な王が収める国はすぐに滅びる。
このまま待っていても滅びは確定のようだが、シナがいるんだ。
そうはいかない。
「氷の場所、確か『四大竜』がいたな。まさかその一角じゃ……とりあえず、急ごう。注意は怠らないように!!――《冷気耐性》」
「はい!!」
ミーシャとリーネは無事、奈落から脱出したが、ここはもう既に竜王の手の内だと言うことにはまだ気づかない。
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