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44.ハウレスレイブ侵入



 竜たちが住まう山脈ハウレスレイブの道中、シナは自分の出生について知り得ることだけを語った。

 シナの親はミーシャが予想した通りに初代竜王の血を引き継ぐ個体であり、そんな貴重な個体と自覚している父は次々と雌個体に手を出す生物的には良いが、竜王という知性あるものの性格としては最低なものだった。


 そしてシナは表の子供ではなく、隠し子であり、何故シナのような個体が生まれたのかと言うと人間と交わったからだと言う。

 今まで魔法の研究に時間を費やしたが、それと同じく知識を溜めこんでるミーシャは知識を探る。

 

「そんなことって出来るんですが?」

「まぁ、やり方の問題もあるが、不可能じゃないな」


 あらゆる方法でそれは可能だ。

 世界から生まれた子供という括りに当てはめるなら、竜と人間は兄弟姉妹と言えるだろう。

 知性を持ち、言語も共通しているのが、証拠だととある本に記載されていた。

 

「そもそもシナは竜の個体の中でも非常に珍しいもので、竜は最初ということもあり、人間の魔法属性の適正のように複数ではなく、一つしか適正がなく、それを極めていくことになる」

「ほう、でも竜ってそれでも強いですよね?」


「あぁ、基礎値が種族の中で一番だからね。目的としては分からないが、後継者かそれ以外か……。まぁ、行って見ればわかることだし!」


 竜の住まう山脈ハウレスレイブは植物はなく、不毛の地である。

 魔王の領地の次に危険とされる場所で他種族が近づくことはない。

 その理由は単純な強さと命の保証がないからだ。

 そんなこんなで歩いていると魔王領を出て、遠くにハウレスレイブ山脈が見える。


「じゃあ正面から入るから私から離れないでね!」

「はい!」

「分かりました!」


 空間系の中で移動法として用いられているのは、《空間移動スペース・ムーブメント》だが、移動距離が長いものはラキュール砂漠に行く時に使用した《大陸移動コンティネント・ムーブ》が文字通り、大陸間を移動できる距離を誇る。

 しかしその扱いは難しい。

 移動範囲内の空間を移動可能である《空間移動スペース・ムーブメント》に対して、上位互換である《大陸移動コンティネント・ムーブ》は視界に見える範囲内であり、使い方で長距離を移動できる。

 他にも移動する魔法の中には予めポイントを設置したことでその地点に移動できるものもある。

 

 だからある程度、ハウレスレイブ山脈が見える距離まで進む必要があった。

 《大陸移動コンティネント・ムーブ》の弱点として視界が不良の時は目先の状況などが分からず、失敗するため使用はできないが、《空間移動スペース・ムーブメント》は《空間支配スペース・ドミネイション》で周囲の空間を感知できる。


 つまりここからハウレスレイブ山脈の入り口まで飛べるということだ。


「――《大陸移動コンティネント・ムーブ》」ミーシャが魔法を詠唱した途端、視界が白く染まり、いつの間にかミーシャ達は不毛の大地の上にいた。


 この山脈周辺は肌寒く、死の世界などと呼ばれている。

 竜はこの気温でも生息しており、竜は丁度いいのかもしれない。


「ここが、ハウレスレイブ山脈……」

「あの有名な巨大樹と同じ高度らしい……その頂上に何かあるのか、ないのか……」

「帰って、きた……」


「シナ、もう一度聞くけど覚悟は出来ている?」

「はい! だけど一つお願いが……私のお母さんを……」


「お母さん、まだ……」

「はい、私を逃がしてくれた……」


「分かった。最初はお母さんを探そう。そういえばシナはどこから逃げたの?」

「正面です。あの時は現竜王の後継者として……あの人が……」


「正式な後継者がいて……まぁ、詳しい話はまず中に入ってから!」


 

 冷たい空気が漂う山脈にミーシャ達はゆっくりと足を踏み入れた。

 その内部は更に冷気が増している。

 竜の住まう場所は山脈であるが、正確には山の中に大迷宮が築かれていた。


「竜の住まう場所……こんな風になっているんだ~」

「うわぁ~迷宮ですね!」

「ここがハウレスレイブ、です。これは世界各地に存在する大迷宮に似て、その広さは大迷宮と同じくらいです」


「まさか、そんな広さの最奥に?」

「はい、竜王がいます」


「しかしここの匂い……」ミーシャは鼻を曲げる。


 流石、竜が住まう場所だ。

 戦っている時は夢中になっていて気付かなかったが、殺し尽くした後に漂ってきた匂いが大迷宮に入った途端にその匂いが鼻に突く。

 ここはあれより一段と強い。


「く、臭いですか?」とシナは恐る恐るミーシャに聞き、自分の匂いを確認する。


「いや、ただ嗅いだことのない匂いだから……それにシナは竜じゃなくて竜人だから匂いは私達と似ているでしょ」

「そ、そうですか? なら良かったです!」シナは自分にもミーシャが鼻を曲げた匂いが漂っているのかと心配になっていたのだろう。


 そしてミーシャ達は大迷宮級の広さがあるハウレスレイブ山脈の奥へと歩き出すのだった。




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