35.最悪な再開
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ――――」シルドゥーリの絶叫が魔法師塔に轟く。
「な、何?」
「シルドゥーリ様の声です」絶叫が聞こえた時から上の状況は何となく、予想していたハイルは絶叫に驚く二人を宥める。
魔法で無理なら発言で雇い主をミーシャは怒涛の声を上げ、突き詰める。
「言え! 誰だ?」
「ぐあぁぁぁぁぁッ――――」
そして小さな指を鳴らすと左腕が切断され、氷魔法で止血された。
「四肢は切った。次は切断した四肢を戻して、もう一度だ!」
「がぁぁぁぁぁ……」意識はあり、今だに黙秘を続けている。
「――《身体回復》」
瞬時に切断された四肢がくっつき、再びミーシャが指を鳴らす。
「がぁぁぁぁぁッ……あぁ……」
パチン!
「ギャァァァァァッ――――」
パチン!
「アァァァガァァァァァッ――――」
「さぁ、言え!! 貴様の雇い主は誰だ!!」
「わ……わかっだ……いい、いいまず……雇い、主は……――」
その瞬間、ラキュール砂漠方面から魔法師塔に放たれた巨大な暗黒の塊が結界を破り、最上階へと突っ込んだ。
ドコォォォォォッ――――!!!
なんというタイミングの悪さ。
完全にここに狙ってきたとしか思えないほどに……おかげで最上階は半壊した。
「クソ!!」
いつの間にかミーシャの前にいたシルドゥーリは消滅していた。
「口封じか……」
又しても、いや徹底的な情報管理、こんなことがこの世界で可能な奴は二人といないだろう。
何がしたいんだ。
「……ん?」
あの巨大な暗黒が飛んできた方向を見ると人影があった。
その姿は……。
「――ナイラ・ディルリオン!!」
「師匠!! 大丈夫ですか?」とリーネの声が飛び込んできた。
さっきの衝撃音を聞いて、登って来たらしい。
「私は大丈夫だ。それより……《完全回復》」ミーシャは《絶対身体》で大丈夫だったが、ベルゼンダークは致命傷を負っていたが、上位魔法で一瞬で完治した。
「……ベルゼンダーク、私は首謀者らしき奴の所に行く。戦況を立て直すよ!」
「あぁ、わかった!」
「師匠!!」リーネがミーシャの表情に違和感を覚え、呼び止める。
「ん?」
「戻ってきてくれますか?」
その一言には色々な意味が含まれていた。
あの戦場から、過去から、二千年前から……。
リーネの一言で一点しか見ていなかったミーシャは我に返る。
「……約束する。絶対に戻ってくる! じゃあベル、後は任せた!!」
その言葉の後に壁がなくなった最上階から飛び降り、《空間移動》を発動する。
そこには黒いローブを被った人、その身体は細いことから女性だ。
ローブを被る人物をナイラだと確信し、近づこうとした時だった。
「うふふ……」と笑い声、そして黒いローブの背後に黒い影が現れ、その影が消え去るとミーシャの氷像が歪む。
「は……?」
黒いローブの女性の背後に現れたのは、ナイラだった。
じゃあ前の女性は誰だ。
そんなことより、当人が現れた。
「貴様の目的は何だ?」
「二千年をもう一度……君はさっきの表情の方がいいよと思うよ!」王国であった彼女とは雰囲気が全く違い、こっちの感情を掴み、強制的に怒りを溢れさせ、理性を失わせようとしているようだ。
「そんなこと貴様に言われても、嬉しくはない! 二千年前、我が王にねじ伏せられなかったことを有難く思え……二千年も貴様は根に持ちすぎだし、だけど私の目の前に現れた以上、殺す!!」ミーシャは怒りを露わにし、殺意をナイラに向ける。
「そう、だけど今回は私の代わりにこの子を――」と前の女性のフードをめくる。
「ッ……ら、ラズウィール!」
何で死んだはずなのに……。
確かに勇者に殺された。
だから私が……。
「貴様ぁ、ラズウィールに何をした!!」
「お前を相手にするのなら、かつての仲間を盾にした方が効果的! さぁ、ミーシャを殺せ!!」そう言い、ナイラは姿を消す。
そして二人だけとなる。
目の前にはかつての仲間であり、師匠であるラズウィールがいる。
だがかつての雰囲気ではまるでなくなっていた。
もう本人ではないことを理解したミーシャは戦う覚悟をする。
「考えるのは後だ。師匠……今の私と戦うのは初めてですね。すぐに楽にしてあげます!!」
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