34.もう一度の
「あれは、大規模だな。みんな飛来する攻撃魔法に気を付けて!」上空に展開された大規模な攻撃魔法がアリュラ魔法国に降り注ぐ。
紫色の魔法陣、あれは呪いも含んでいるだろう。
「――《絶対身体》・《呪詛耐性》」移動の中、全員に魔法をかけ、魔法師塔へと向かう。
ドコォォォォォッ――――!!
魔法師塔が集中的に攻撃されている。
確かに魔法師塔には貴重な本やら道具やらが保管されている。
まぁ、奪う価値はあるかもしれないが、魔法師塔には防御魔法が張られているから大抵の攻撃でも破ることはできない。
なんて言ったって、私が張ったんだから!
そんなことよりまずはベルゼンダークの所に行かなくちゃ!
大規模魔法の激しい音が鳴り響く中、魔法師塔の入り口にハイルの姿があった。
「ハイル! 大丈夫か!?」
「み、ミーシャ様……」力のない声を漏らし、壁に寄りかかっていた身体が床に倒れる。
「ハイル! ここは結界内なのに何で傷が!!」
彼女は身体全体に傷を負っていた。
魔法師塔の中を見ると彼女が歩いてきた場所が地に染まっていた。
しかし魔法師塔は何ともない、ということは内部に敵が……
「ミーシャ様……それよりシルドゥーリ様が……」
「シルドゥーリ? あいつが……」
甘かったか。
記憶を抜く範囲をもっと拡大すればよかった……正に偽原魔法の記憶だけ抜いても、主か雇われ主に駆けつけるのも予想がつく。
「クソ!!――《身体回復》・《疑似恩恵付与》」
ミーシャの魔法で傷が治ったハイルはすぐに立ち上がる。
「ミーシャ様、シルドゥーリ様が魔法師塔に乗り込み、貴方様を……」
「私を?」ハイルの表情で察し、すぐに行動に移す。
「リーネ、シナ、ラミー! ここで待ってて!!」
「師匠!!」三人を置いていき、階段を駆け上がる。
私が目的なら前に出るまで……。
そして今度こそ、裏で操っている奴を突き止める!!
「はぁ――はぁ――」
管理者の自室がある最上階に向かうとベルゼンダークの声が聞こえた。
「貴様、我々を裏切ったことを思い知れ!!」
「私は……私は……」
ミーシャは声が聞こえるベルゼンダークの自室を覗くとシルドゥーリが束縛魔法でベルゼンダークを縛り付けていた。
「貴様……何故裏切った?」
「私は……あの方に――」
「――お前の探している相手は、私だろ?」
「ッ――――」
「み、ミーシャ!!」
「あぁ、お前ぇぇぇぇぇッ――――《精神掌握》ッ!!」
まさか、雇い主の記憶をもらったのか!?
本当に甘かったな。
「ッ――――」魔法をかけるリルドゥーリ、ミーシャは右手を上げようとしたが、突如と身体が停止した。
「み、ミーシャ……」超級魔法使いはシルドゥーリの前で突如、静止した。
「クフフフ……アハハハハハ!! 超級魔法使いすらも掌握することができる!!」
「クソォォォォォッ!!」
「さぁ、これで私は……クフフ、前から思っていたが、こんな娘が超級魔法使いだとは……」何を思ったのかミーシャに近づき、その頬に触れる。
第四偽原魔法――《精神掌握》は相手の精神を掌握し、他の精神系より桁違いな効力である。
操る範囲は制限はなく、魅了や洗脳まで可能だ。
この魔法をかけられたら、最後だ。
「クフフ、主に届ける前に私が……だがその前にお前を――」再びベルゼンダークの咆哮へ進もうとしたが、シルドゥーリが止まる。
振り返るとミーシャが何故かシルドゥーリの服を掴んでいた。
「お、最初は自分がいいと……そうか! ならお望みのままに――――」
その瞬間、シルドゥーリの顔が歪み、ベルゼンダークから見て、左側に吹っ飛んだ。
「ぐはあッ……な、何だ? 何が起きて……」
「貴様に何も望んでいないし、この魔法を作ったのは私だ。超級魔法使いである私が魔法に対して対策していないと思ったか?」
「貴様が触れた分ともう二度と敵を逃がさないという私情を込めた蹴りだ。じゃあまず貴様の雇い主から聞こうか?」
「ぐ……な、何故だ。この魔法は現在存在する魔法の頂点と言えるものだぞ!! 何故お前に――」話を聞いていなかったのか、関係ないことを言い出す。
ミーシャはパチンと指を鳴らす。
「あぁぁぁぁぁッ――――」無詠唱で闇魔法が発動し、シルドゥーリの足を切断する。
「さぁ、言え! 貴様の雇い主は誰だ?」
「あぁぁぁぁぁ……ぐ……」痛みに耐えながら、確実に黙秘している。
会議で記憶を覗いたが、雇い主の姿が黒く染まっていた。
上位魔法――《記憶情報》は相手の記憶を覗ぎ見ることだから相手が憶えていなくても、その記憶も見える。
なのに黒く染まっているということは魔法で何かしら妨害されている可能性がある。
なら、発言させるまで!!
「言え!!」
再び指が鳴り、今後は右手首を切断し、氷魔法で止血する。
「ギャァァァァァッ――――」エントランスまで聞こえるほどの絶叫。
敵には容赦しないミーシャの怒涛の声と襲撃も重なり、更に揺れが生じる。
「ふッ……やっぱり君はそうでなくちゃ――」
誰かが呟く。
ミーシャを知り、その表情を一度見たことがある存在が……。
そしてミーシャは最悪な出会いを果たす。
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