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26.二人の弟子



「お帰りって、え? ミーシャ、その子は?」

「人助けだ! リーネ、シナと一緒にお風呂に……」


「分かりました! さ、行こう!」

「お風呂は階段の横からだよ!」金槌を片手にそうリーネに話す。



 そして店にミーシャとラミーの二人きりになった。

 

「あれは?」

「奴隷商で買った……君と同じだ……」


「ふん……いやなことを思い出させないでよ」

「であの子は珍しい竜人であり、属性を二種類……ドラゴンには珍しい……」


「全属性行使できるミーシャも珍しいと思うけど……」

「私のことはいいって……で、リーネが可哀そうだったたし、師匠だからね!」


「……人助け、ですか」

「だけどあの人は人助けは半分は気まぐれで、半分は無駄って言ってたな……」



 それは魔王の言葉……。

 冷酷だが、信頼を寄せている同胞には優しく、この世界について色々知っていた。

 いつからか生きているか、私には分からないが、今の私みたいに生きていたのだろうか……。

 今思えば、あの方は自分のことをあまり話さなかった。

 

 それが魔王という風格なのか、そう見せようとしていたのか。

 

「ふぅ~……で、理由は人助け……ただそれだけ……私はずっと一人だったけど、リーネには仲間が必要だ」

「ふ~ん……ミーシャはこれからどうするの? リーネやシナを育てたら、どうするの?」


 そんなもの……。


「分からない……わかるはずもない……」


 この身は不老不死。

 永遠に生きるということは永遠に自身が生きる理由を見つけなくてはならないということ……永遠に苦痛に変わった生きるという行為をし続けないといけないということ……。

 生きるという行為が嫌になった瞬間、生きる屍となるだろう。

 だから何か目的をミーシャは無意識に探している。

 最終的には魔王の復活……何もなくなったら、最終的にそれにたどり着く。


「だけど今はあの二人の面倒を見ることに全力を注ぐだけ……厄介ごとからも守る!」

「ふふん、じゃあ私、あの子達のために食事を作るね!」そう言って、ラミーはやる気満々で奥へと消えていった。



 その頃、リーネはシナはお風呂場へ向かった。

 鍛冶屋に備わったお風呂場は全てが木製で、少し焦げ臭い……だけど湯沸かしは簡単である。

 浴槽の近くのレバーを下げるとお湯が湯船に溜まる。

 リーネはシナのボロボロな服を脱がし、自分も脱ぐ。


「はい、今から洗いますね~」布にお湯で濡らせ、リーネは優しくシナの身体の汚れを落としていく。


 まだシナは腕を抱え、震えていた。

 奴隷は鎖で繋がれた存在、自由を奪われ、自分の意思はなく、命令のままに従うだけ……。

 それが奴隷であり、落ちたものに救いはないかもしれない。

 だけど……。


「あ、あの……何で私を?」

「私が師匠に頼んだの……可哀そうなシナを見捨てられなくて……」


「可哀そう……そうですね。私はもう竜ではありません……生態系でもトップに立つ種族なのに……私は……」口を開いた少女は自分の無知を嘆く。


「そんなこと……」

「私は竜なのに……人間なんかに!!」


 竜種は一体の強者の竜に竜が仕えて群れたり、孤立する個体も様々だ。

 基礎値として人間数人分とされている。

 竜種もそれは自覚しているから人間を恐れることはない。


「シナはまだ竜奴隷になったとしてもそこから上がることはできます」

「そ、そんなの……」


「今のシナは奴隷じゃないよ。師匠がその紋章も消してくれるから!」

「し、師匠?」


「うん、まだ弟子入りして間もないけど師匠は世界一だから!」

「……あの人が」シナの頭にミーシャの顔が浮かぶ。


 自分の同じ歳の容姿の人だ。

 私を買った人……何で買ったか、何のためにと思ったらいつも奴隷を買う人とは全然違って、連れてきて突然身体を洗うなんて……。

 確かに私を奴隷として扱ってない。

 じゃあ私はただ救われたの……。


 自然と身体が震え、シナは抑えるように丸くなる。

 嬉しいという感情が溢れ、溺れる。

 急に震え、丸まるシナにリーネは不安を感じる。


「え、どどうしたの!? どこか痛い所は――」

「――あ、ありがとう……」


「え……」

「ありがとうございます!!」シナは涙を流しながら、感謝を叫ぶ。


「ふ、そのお礼は師匠にしてください」リーネは微笑み、後ろからシナに抱きしめると暖かい中、シナの冷え切った心がゆっくりと温まるのを感じる。



「貴方は……」

「リーネ、改めてよろしく……同じ師匠の弟子として……」


「弟子……はい、よろしくお願いします」


 

「ふ~ん、女の子同士、仲が深まるのが早いね~」

「うん、いい弟子になってくれるかな……」


 密かにお風呂場のドア越しから二人の会話をミーシャとラミーは聞いていた。

 無論、バレないように《気配遮断サイン・ブロック》と《音声遮断ボイス・ブロック》を発動済み。

 

「一緒に入ってくれば?」

「いいよ。長い間一人だったから、まだ慣れないし……」


「でも、いつかはやることにならない?」

「どうかな、そんなに好かれないかもしれないし……」


「さっき、世界一って言っていたけど?」

「……さぁね、ちょっと部屋に戻るから後はよろしく」ミーシャの周りの環境は変化していく。


 自覚し始めた万能の魔法使いはその変化を楽しんでいた。




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