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25.檻の中の青



 魔法師塔から出て、商店街へ入る。

 

「ん~……はぁ……いつになっても疲れは感じるものなんだね~」

「それが生きるという意味なのでは?」


「……そうだね。二千年も生きていたなんてまだ自覚はないけど……」


 最初の時間は研究に没頭していたからな……。

 二千年前からの因縁からか、ずっと前の光景が浮かび上がる。

 考えれば、二千年前の人物が今生きていることがおかしいのだ。

 私は例外中の例外なら、魔王側にもう生存している人はいない……二千年なら最長寿のドラゴンでも死んでいる。

 

 なのに……。


「分からない……」とミーシャの声が漏れる。


「ん、師匠……何か言いました?」

「いや……さぁ、家に帰ろう。これから引き籠ることが多くなるからやっとリーネに魔法を教えられるよ!」


「あ、そ、そうですね! 今から楽しみです!」


 師匠として魔法の教えるのは当然だが、今まで披露していただけで教えることはなかった。

 

 だがこれから暇な時間が増えるからな。

 二人はラミーの鍛冶屋へと向かう途中でリーネの足が止まり、咄嗟にミーシャの服を掴む。


「ん……どうしたリーネ?」

「師匠、あれって……?」リーネが凝視している目線を追い、ミーシャも向く。


 そこには多くの人が群がり、檻の中を見ている。

 あれは……。

 よく見ると檻の中には人がいた。

 

「あれって、獣人ですか?」

「……いや」


 檻の中に囚われている人々……獣人やエルフもいるが、リーネとミーシャが目を付けたのは、青い一つの少女だ。

 頭部から鋭い、二本の角。

 見た目は人だが、あれは……。


「竜人、か……珍しいな」

「竜人……」


 竜人とは、ドラゴンが人型形態になった状態のことを指す。

 通常は人型などに慣れる個体はいない。

 可能であっても、戦闘力は通常の形態の方が有利な他、ドラゴンは人里には降りることはない。

 

 しかし人型でも人間に捕まることはないと思うのだが……とミーシャはまじまじの竜人の少女を凝視しているとボロボロな服を纏っている少女の胸に禍々しい紋章が浮かんでいた。

 束縛……呪いか。

 確かに何かしらの束縛とあの幼い身体、しかもまだ若いなら戦闘経験などもないのだろう。

 それで一人でいるのなら、捕まるのは自然だろう。

 奴隷は現在存在している国々の半分がこうして町中で奴隷商人が開いている。

 表になくても裏も換算すれば、やっていない国はいないだろう。


 二千年も経っても、上下関係は消えるわけはないのだと実感する。

 

「この国は奴隷商を受け入れている。酷いかもしれないが、この世には上下関係は消えない……」

「同族も……」


「……それが存在しているのなら、必要なんだろう」

「必要……ならあの子は誰に必要とされているのでしょうか?」


「……リーネはどうしたいんだ?」


 そのミーシャの問いにリーネは真っすぐと竜人の少女を見て、ミーシャを見る。

 

「私は助けたいです! 師匠、どうにか出来ませんか?」

「そうか、わかった。人助けをしよう!!」そう言い、ミーシャは大声で店番をする奴隷商人の男に近づく。


「ん、お嬢さん……ほほ~う、何かお好みの品がありましたか?」


 長年の経験か、小太りの男はミーシャの服装で奴隷を買えるほどの人物・お客だということを理解した。

 

「あの子……」ミーシャは竜人の少女を指差す。


「ん、あの世にも珍しい竜人ですか! ほぇ~お客さんお目が高いですね~!!」

「いくらだ?」


「はい! そうですね~世にも珍しい個体ですから……最高金額として金貨二万でどうでしょう?」

「……そんな金額、持ってる奴いないだろう?」


 しかも二万枚という物理的に持ち運べる量ではないが……。


「そうですね~……ですが、個体も個体なので~」

「金貨二万の価値があるものはどうだ? ダメならいいが……」


「ほう、それは何でしょうか?」ミーシャは魔導書を開き、豪華な小箱を取り出す。


「まさか……小粒の宝石では――」

「――ん……」ミーシャが取り出した小箱を宝石箱と読み、そう言い出す男の前にミーシャが差し出したのは、少女の掌より巨大な黄金に光輝く宝石だった。


「ほ、宝石が黄金にですと!?」

「これで金貨五万の価値がある! 嘘だと思えば買取屋に差し出せばいいか、口の上手いお前ならもっと高い値段で元が取れるぞ?」


「く……いいだろう!」男はそれを受け取り、二人を奥へと案内した。


 その奥には空間魔法の応用か、空間が広がり、多くの商品が入った檻が並べられている。

 

「少々お待ちください!」と男は更に奥へと入っていく。


「凄いな」ミーシャの感想はそれだ。


「こんなに……」

「あの竜人……また弟子が、いや……」


 その前にあの子は奴隷だ。

 平均より下から今、その上に戻してあげるのだ。

 見えない傷などが問題だろう。


「お待たせしました!」と男は鎖に繋いだ竜人の少女を連れて来た。


 近くで見ると檻の外から全然違った。

 黒い角に褐色の肌、薄青の長い髪に薄青の尻尾……それと……。


「オッドアイか……更に珍しいな……」そう呟き、ミーシャは竜人の少女に近づく。


 竜人の少女は少し後ろに下がるが、ミーシャの手が肩に触れる。

 丁度身長は同じだ。

 触れた瞬間、魔法を発動した。

 ――《身体回復ボディ・リカバリー》・《精神安定マインド・ステイブル


「君の名前は……」

「……シナ」


「シナ……じゃあ行こうか! リーネ、手を繋いでやって!」

「あ、はい!」リーネは慌てながら、シナに近づき、手を伸ばす。


 お互い挙動不審ながら、手を握る。


「あ、後最後に……この子についている紋章に心当たりある?」

「いや、商品状態を保つために通常、商品本体に魔法はしようしない……拘束魔法はこの鎖に付与されているからな!」


 なら、この紋章は奴隷商とは別……。

 

「そうか……ありがとう!」

「あぁ! 毎度あり!!」


 こうして、人助け……竜人の少女シナを買い取り、急ぐようにラミーの鍛冶屋へ歩くのだった。

 



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