22.偉大
アリュラ魔法国に住む人は魔法使いだらけだが、人口は他国より少ない。
逆に外から来た人物は目立つ。
「魔導書や魔法具、杖など魔法に関するものが売っているのが、この商店街! 他にも各国には情報を流していない魔道具の存在もあって……今回はそれも確かめに……」
「へぇ~、まだまだ知らないものが沢山あるんですね!!」
人の一生で魔法を全て理解できることはないらしい……。
魔法には膨大な歴史が存在し、今では失われた原初の魔法やらが存在しているととある魔導書には記述されてあり、それを確認するべく今存在する魔法を研究したり、古い遺物から調べたりしている。
それとは逆に新たな魔法を生み出すものや、研究者の人数は少ないもののそれが盛んと言うべきほど取り組まれており、派閥も存在する。
「師匠、ここが?」
「あぁ、魔法国を管理している上層部が住まう魔法師塔。ここには魔法の歴史が展示されていたり、極秘のものも保管されている……」
ミーシャは塔の入り口にいる魔法使いに首に下げているペンダントを見せる。
それは全てが黄金で造られており、魔法陣のような形をしている。
「こ、これは……まさか、偉大なる超級魔法使い様……どうぞ中へ」
「あぁ……」
そして塔の中に入る。
この塔の内部のあらゆる素材が高価な物質であり、装飾の多くに黄金が施されている。
入り口のすぐ目の前に螺旋階段がある。
何故か、ここに入ると気持ちが沈む。
何故か、緊張したように身体が固まる。
それをかき消すかのようにリーネが問う。
「超級魔法使い……って何ですか?」
「ん、これはこの国の管理をしている魔法使いの証だ。まぁ、このペンダントの錆を何回もとに戻したことか……この国を建国したのは五人の魔法使い……その中に当然だが私もいた」
超級魔法使い……。
これはこの魔法国が建国された時に偉大な五人の魔法使いの中で最も優れた才を持つ者に命名された肩書。
人の領域を越えた存在。
一度もその肩書が別人に命名されたことはない。
「へぇ!! 何で建国しようと?」
「理由か……そうだな。これで何か変われば……そう変化を求めていた。勇者と魔王の戦いで私の主は負け、悲しみ、だけど不老不死のせいで死ぬことはなく、私はいくつも考えた。魔王の復活や新たな誕生……だけど諦めた。そんな私が変化を求めて一人の魔法使いと知り合い、建国まで至った……」
「師匠は苦しいですか?」
「まぁ、不老不死なんだから一度くらいは死にたいと思うこともあるけど……今はそんなことはない! 生きる意味というものがあるからな!」
その言葉をリーネに向ける。
確実に彼女が今ミーシャが生きる意味であることを……。
それを理解したのか、リーネは顔を赤らめて俯いた。
この塔にはあらゆる魔導書を保管しておく巨大な図書館や魔道具の保管庫……人類の魔法の歴史を保管した場所である。
そして五階分登ると人が一つの部屋の前の壁に並んでいる。
「し、師匠……これは……?」
「これは……そうか、今日は会議か? この者達は会議に参加する魔法使いたちの側近だ」
例え側近であっても会議の参加はできない。
参加できるのは、五人とその他十人のSS級の実力を持つ者達で会議が開かれる。
これは王に従う国の形ではなく、複数の人間が頂点に君臨しており、絶対に一人で物事を決めることはないために情報漏洩を防ぐためだ。
出席する人物は死亡か、辞めない限り、同一人物であり、何らか
まぁ、ミーシャの存在はなかば伝説のように扱われているが、ミーシャ自身、管理者の仕事は少しやっている。
が、全て把握しているわけではないので、今日が会議だということは知らない。
「……ど、どうしよう? 話したい人は中にいて、だけど会議……今更出席するのもな~」
「師匠はここの管理者の一人なら、出席した方が?」
「うぐッ……」
正論を言われて、精神にダメージを負う。
だがしかし何も言うことはないし……正直めんどくさい。
無論、この姿なので舐められるし……。
考えるのと同時に会議室の前に陳列する側近等を見渡す。
「この会議は最終的に多数決、出席しない人は興味ないか、魔法開発に忙しい人だけ魔法使いという人種にとって定期的な会議は……邪魔、かな?」
そのミーシャの発言に側近等は微妙に理解できるのか、表情を歪ませる。
すると下から誰かが駆け上がってくる。
「ん……?」
「み、ミーシャ様!! お、お越しくださったのですか!?」メイド服に身を包んだ女性、ここの塔に住む管理者の使用人のハイルだ。
「あ、あぁ……ベルゼンダークにちょっと用があってね!」
「そ、そうですか……お久しぶりです」と深くお辞儀をする。
確か二年前くらいか……。
「え~と、ミーシャ様……会議には……」
「いや……出席しなくちゃだめか?」
「そ、それは……」
何か悩んでいる表情をハイルは浮かべるが、その感情は通常の悩みとは別の物だと直感した。
「何か、あるのか……」
「は、はい……ミーシャ様が姿を見せない間に出席されている数人が管理者の一人であるベルゼンダーク様に異議を申し立てたのです」
それは何かの野望の影……。
「異議? 何か不満か」
「そうですね。出席者の間の情報では数人が管理者だけが知る魔法の情報があると……」
「……へぇ~、そんなものどこから出てきたのやら……」
それを知っているのは管理者の五人……。
それを申し出たものは代々魔法を受け継いできた貴族の者。
出席者は実力と知識を認められ、選ばれている者達だが……まぁ、自身も手に入れたいという強欲な感情に入るのは珍しくもない。
だがミーシャが気になっているのは、管理者だけが知る魔法だ。
確かに存在している。
だがそれは絶対機密であり、使用も禁じられており、それに関する魔法の本は管理者自身が保有しており、図書館などには一切ない。
なのに、だ。
「わかった。抑止力として自身の地位を使おう。ハイル、また後で話を聞きたい……あと密談のセッティングを用意して!」
「了解しました!」
「後、すまないけどリーネはここで……」そう言い、リーネに小型の魔道具を渡す。
「了解です!」
そしてミーシャは会議室の扉を勢いよく開いた。
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