16.VS 蛇神ヴァルテス①
その瞬間、《蹂躙する暗黒》が放たれ、大蛇に命中する。
「ギャァァァァァッ――――!!!」
「まだまだぁぁぁッ――――《重力操作》ッ!!」
瞬時に闇属性上位魔法を発動させ、絶叫し起き上がった大蛇が突如地面に押し付けられる。
「ガッ……ガァァァァァッ!!」
上位魔法――《重力操作》の効果は重力を操る。
通常の重力の力を何倍にも上げたため大蛇は地面に束縛されるように動かない。
ミーシャはまだ魔法を発動させる。
「――《閃光の大剣》ッ!!」ミーシャの周囲に光の魔法陣が展開し、そこから巨大な光の剣が閃光の速さで大蛇を貫く。
「ガァァァァァッ――――!!!」
再び響き渡る大蛇の絶叫。
そして大蛇の目がギロリと開いた瞬間、ミーシャが発動した《重力操作》の効果が切れ、大蛇が起き上がる。
「ギャァァァァァァァァァァッ――――!!!」三度目の絶叫から大蛇が保有する魔力が強い衝撃と共に放出される。
「うわッ!」
「きゃぁッ!」衝撃は受けないが、叫びは耳に響く。
クソッ!
上位魔法の効果を自力で切るなんて……。
ミーシャはリーネの近くに着地し、合流する。
「オ前タチカ、我ノ命ヲ狙ウ者ハ!」
「え! モンスターが言葉を話すなんて!!」
「やっぱり、対話は可能みたいだ」
だが先に攻撃したのはミーシャ達であるためこれ以上の対話は難しいだろう。
それにモンスターと対話だけで済むケースはゼロに近いし、今回の任務はこいつの討伐だ。
「我ハ、蛇神ヴァルテス! 人ノ子ヨ。我ニ攻撃シタカラニハ死ヲ送ッテヤロウ!!」
「蛇神とは、また嘘のような二つ名ですね!!」ミーシャは挑発する。
蛇神と名乗ったからには相応の強さがあることの証拠であり、ミーシャは強い相手との戦いでは心が躍るのだ。
好戦的な性格なのは、魔王の配下だからという理由もある。
今の彼女に敵はいない。
いや二千年も歩き回って敗北は一度もない。
彼女と本気で戦える存在は今は破滅の魔女くらいだろう。
「ホウ、ソノ度胸ダケハ褒メテヤロウ。デハ行クゾ!!」そう言うと蛇神ヴァルテスは瞳をギョロリと開いた。
その時だった。
ミーシャとリーネに何かが身体を貫く感覚を感じた。
「なッ――」
「えッ――」
蛇神……。
本で読んだことがあるが、その目は魔眼となっているとか……。
モンスターの中で自然と魔眼を持つ個体が蛇の中でも特殊か長寿の個体だとされる。
熟練者なら討伐対象がモンスターだと聞いて、まずは嫌な想像をする。
呪いの象徴でもあり、厄介ということが似合う存在だ。
そして二人の身体は固まる。
そう、物理的に……。
「クソ、石化の魔眼だ」
「あぁぁぁ! 師匠、足がぁ!」魔眼の効果は相手と目を合わせたことでの発動、だがその効果はじわじわと侵食するが、一度見られたら侵食スピードなど関係なく、対象を覆い尽くす。
もう既に足を越え、腰、胴体へ石化が侵食していく。
その時――
「――《呪詛解除》・《疑似恩恵付与》・《魔眼耐性》」と呪いの解除と仮初だが恩恵を付与する。
そして石化は消えた。
「ホウ、ナカナカノ実力ヲ持ツ者……シカシイチイチ魔法ヲ唱エテイテハ我ニハ勝テマイ!」
蛇神ヴァルテスは口を大きく開け、口内に力を凝縮する。
「まずい!!」
「え!!」ミーシャはリーネを抱き上げ、城の外へともうスピードに走る。
「マジか……クソぉぉぉ!!」
「師匠! あれは何ですか!?」
「あの膨大な魔力、流石に距離を取らないと……蛇の特性は知っていたけどデカ蛇との対戦は情けないけど初見なんだ! だけど……やられるわけじゃない!!」
数十メートル離れ、そこで止まる。
そして蛇神ヴァルテスは息を吐くかのように凝縮した力を吐いた。
「――――」
「キャァッ――――」
それは一瞬、漆黒の力が波動の波となり、一瞬にして城、町、そしてミーシャ達を飲み込んだ。
これがSSS級モンスターの力。
飲み込まれた町は黒い力に侵食され、だんだんと崩れていく。
そしてものの数分で建物の上は崩れ、砂の町であった風景が漆黒の力へと侵食する光景へと変わった。
「フン、タワイモナイ。コレデ終ワリカ……」そう呟き、蛇神は漆黒の街並みから目を反らす。
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