13.ラキュール砂漠
「よし、ラキュール砂漠に行こう!」魔法書から地図を取り出し、広げる。
ラキュール砂漠はラヴァエル聖王国の東側だ。
「足で行くんですか?」
「当たり前と言いたいけど、女の子の足で行ける距離じゃないし、それに今回の任務は砂漠にたどり着くことじゃなくてその広大な砂漠の中にいる推定SS級モンスターを探さないといけないからね!」
完全にダルそうに地図を魔法書にしまい杖を構える。
「じゃあ手っ取り早く、上位魔法――《大陸移動》」とミーシャが杖を掲げ、唱えると二人の姿が消えた。
「うわ!」
「……移動は成功だ! さて、次に」
あっという間にラキュール砂漠の前に二人は現れた。
リーネは着地に失敗し、砂漠の地面に顔が埋もれる。
ミーシャはこれからラキュール砂漠に入るため、対策を施す。
「――《熱耐性》・《絶対身体》・《存在探知》……これくらいか? 熱は感じないし、ここにモンスターの動いた痕跡はないし……リーネ、行くよ!」
「は、はい! ってか、師匠。さっきのって上位の瞬間移動系ですか!?」
「ん? そうだけど、私に使えない魔法はないの!」
風邪は吹いていないから周囲の視界は良好だ。
さて、立ち寄る者が居ないと言われるラキュール砂漠にいるモンスターの討伐と言う話だけど……。
ミーシャの中には気になることがある。
それは根本的なこと……。
その時だった。
「師匠、何で誰も立ち寄らない危険なラキュール砂漠にいるモンスターを倒さないといけないんですか? ここに住んでいるなら誰にも危害を加えようと思えませんし、別に強いモンスターがいるからって殺すなんてそれは人間の勝手ですよね?」
それに気づくとは冴えているのかどうか分からないが、確かにその通りだ。
「あぁ、私も同意見だ。もし砂漠を出て、人がいる場所を襲ったら討伐対象になるが、人が立ち寄らない場所に潜んでいるなら必要ないと思ったのだが……先に言うけど、この件には裏があるな」
「裏! ですか……」とリーネは驚く。
そこまでは頭が回らなかったか……。
「普通に考えてみればわかる。私達の戦闘を見て、すぐにこの依頼を持ちかけた。つまり世界ギルドには手に負えないということ……でもその依頼内容が聖王国の隣と言っても距離があるラキュール砂漠内に生息するモンスターの討伐……でも王国の冒険者ギルドにはそんなものはなかった。と言うことは極秘ということであり、聖王国が得する内容……」
「得することですか……モンスターを倒せば……あ!」
「そう、大迷宮のモンスターと同じお宝が手に入るというものだったら、そのモンスターが生息する所は砂の大地の中にある遺跡ということ……」
「何で、そんな分かったように――」
「歴史を見ればわかる。ここは一体は元々緑の大地があったけど呪いと呼ばれる蔓延によって生命は死に絶え、大地も死んだ。それは二千年以上前の話、しかも人は長年近づかないせいでモンスターが跋扈し、遭難者は餌と化す。長年閉ざされた場所、絶対に興味を引く何かある……ッ!」
急に風が吹いてきた。
それによって砂が舞い上がり、突然視界が悪くなる。
警告のようにも捉えられる。
「師匠、裏があるのなら私達のせいでとかならないですか?」
「……それも考えたが、拒否すれば何かあったかもしれない。さっきの違和感、本当なら誰かに異様に見られていた」
「え!」
「任務遂行を見届けるためか、或いは……」
「でも、この景色じゃ……」
もう既に暴風となり、視界が閉ざされる。
魔法をかけたとは言え、《熱耐性》・《絶対身体》だけだ。
身体に損傷はあり得ないとしても、暴風で飛ばされそうだ。
「クソ、待って! 魔法をかける。――《絶対障壁》」
すると風の影響を受けなくなった。
「す、凄いです!」
「これで風の影響は受けなくなったけど……どこに行けば……」
「とりあえず、進みましょう! 何かあるかもしれません!」
「そうだな!」
いくら探索魔法でも目的の場所は分からない。
場所を見つけるために歩くしかないので、二人は砂漠の中を歩きながら目的地を探すのだった。
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