11.世界ギルド本部にて
ラヴァエル聖王国は自称世界の中心国と言われており、王国より広い国土と軍事力を持っている。
その理由としては世界ギルドの一角である神典協会は聖王国が崇める神を信仰しているので、他の国に行く目的は依頼のみとなっている。
実質聖王国専用の戦力ということだ。
「うわぁ~、ここが世界ギルド……」
「相変わらず、デカいな!」
二千年前と何一つ変わっていない。
聖王国でも王城の次にデカい建物だから分かりやすいことに越したことはないが……。
ここに入るのは本能的に警戒してしまう。
無論だが自分が魔王の配下だったということは知られてはならないが、二千年も経っていれば『破滅の魔女』のような存在がいなければ別にわかるはずもないけど……。
中に入るとこれまた広いロビーに、受付の後ろには信仰神である女神アレシアの美しい黄金の象が飾られている。
受付の女性に攻略組のリーダーであるゴウスが話しかける。
少しの間、ゴウスは真剣な表情で女性に話し、女性は伝達魔法が付与された結晶で誰かに連絡を取る。
「師匠、ここで何をするんでしょうか?」
「さぁ、何も聞かされていないからね!」
見逃すわけにはいかないと上から目線で言われて、流れるままここに来ちゃったけど場合によっては何かヤバいことを持ちかけられるかもしれない。
まぁ、世界ギルドに来て何か持ちかけられるとしたら依頼とかが普通だろう。
「さぁ、こっちだ!」
受付の女性と話し終えたゴウスは、私達の先頭を進み、階段を登る。
有り余った資金から造られている建物内を進むと二枚扉の前で止まった。
「おい、ここから先には攻略組の最高責任者の自室だ」
「え!!」
「へぇ~、何で急に……」
「それは後で説明する!」そう言いゴウスは二枚扉を開けると奥のデスクに意外と若い男がいた。
「バルロ・アルロスト様、只今参りました!」
「あぁ、ご苦労だったゴウス。その二人が大迷宮のボスを倒したと言ったか?」
「はい! 自分と攻略組の半分がその戦闘を見ていました!」
「そうか……情報整理はお前に任せる。次の依頼に向けて準備をしろ」
「はッ! では失礼します!」と言い、ミーシャとリーネを置いてゴウスは攻略組最高責任者の部屋を出ていった。
は? 後は私達だけ!?
しかも情報整理って……失敗したことを怒らないようだ。
そして攻略組のトップ最高責任者が直々に対面するというこの状況、予想は当たったようだ。
「さて、突然こんな所に来てくれたお前達に感謝しよう。それで早速本題なんだが――」とバルロが言い出すのをミーシャが遮る。
「――その前に何で見てもないのに、私達がボスを倒したと納得できるの? 言っとくけどまだ成人していない私達に!?」
「あぁ、その理由はこれだ」
バルロが差し出したのは、水晶。
その中に映っていたのは、この世界ギルドの廊下を進む光景だ。
その景色はとある部屋へと入り、荒く動いた後ゴウスの顔が映る。
そういうことか……。
「彼の鎧に視覚共有の魔法を? 少し悪趣味じゃない?」
「ふん、これくらい組織には普通だ。全滅した場合でも相手の様子を収めれば、次の作戦に役立てる!」
ミーシャの指図に反論し、バルロの目線は細く鋭く変化する。
流石、攻略組のトップだな……実力主義ということか、あのボスより強い。
もし戦闘になるなら、室内では少し不利だ。
「そうですか……私達の実力を認めてくれたのは嬉しいですけど」
「あぁ、だから君達を呼んだんだ! 君達ならできると思っている……」
「……聞いてやる」
「ふん、ラキュール砂漠は知ってるか? そこに推定SS級モンスターが数か月前から現れていてな」
「あぁ、討伐して欲しいと?」
「分かってるな! 報酬は出すぞ!」
「……」
急にそんなこと……まぁ予想は当たったけど……。
場所がラキュール砂漠か……あそこはモンスターが跋扈する所で危険な場所として認知されている。
広大故に遭難者も出ている。
まぁ、だけど行ったことあるし授業にはもってこいかもね。
リーネは色々な体験させてあげたいし!
でも、少し気がかりなのが……。
「わかった。それだけ?」
「ん?」
「私達を呼んだのはそれだけなの?」
「あぁ、そうだが、不満だったか?」
「いいや、依頼は受けます。では!」
「あぁ、報告を楽しみにしているよ!」
ここが魔族を専門に討伐し、神の敵対者である魔王を憎んでいる神典協会が所属する世界ギルドに呼ばれたんだ。
あらゆることを考える。
一番は私を知っている者が関わっているということや、バルロの依頼の情報で変わってはいたが単純にモンスター討伐でも怪しい。
まぁ、さっさとここを出たのがいいのはわかる。
ミーシャはバルロの自室を出て、廊下を進む。
「師匠、私ラキュール砂漠初めてです!」
「まぁ、心配ない! 私の魔法なら熱さにも倒れることはないよ。でも水は多く買わないとね!」
「はい!」
推定SS級モンスターの討伐を依頼された魔法使いの少女二人、ミーシャは自分の中にある嫌な感じから逃げるように世界ギルドを後にした。
その姿を受付の背後にある女神アレシアの黄金の瞳が嫌な光を放ち、それは視覚共有の者であった。
「あれは……」
世界ギルドのどこかの一室。
暗闇の空間でその少女を見て、強く歯を食いしばる。
「まさか……」
その男の瞳には憎悪が炎のように燃え滾っていた。
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