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告白 16

 瞬間、雪子はすぐに身をかがめ、ソファの背に隠れた。素早く視線を展開し、窓の外を見る。

 カーテンの隙間からは、いつもの美しい夜景。

 つまり、停電はここだけと言う事だ。

 こんな日に……。雪子は舌打ちしたい気持ちをぐっと抑え、全身の神経を尖らせる。暗闇でものを見る目にも自信はあったが、暗闇では視覚より全身に張りめぐらせるセンサーの様な神経の方がずっと信頼が置けた。

 父との訓練は、なにも昼日中ばかりではなかった。窓のない暗闇で、殴り合う。時には刃物や警棒などの武器も使用する。そんな訓練は普通の子が親と週末にデパートへ出かけるのと同じくらいの回数はこなしていた。

 玄関から続く、台所とリビングの間の扉が軋むのが微かに聞えた。

 人の気配はしない。

 空気の揺れも、相手の呼吸音もしない。

 しかし、雪子にははっきりとこの場に第三者が侵入しているのをしっかりと感じとれていた。

 それは、敢えて言うのなら、相手の視線の気配だろうか。

 雪子は興奮を抑え、密かに呼吸を整えた。

 恐怖はない。そう、あるのは興奮に変わりそうな高揚感と……。

 楽しみだ。

 それを実感した時、雪子は思わず笑みを零した。そう、今、自分はこの状況を楽しんでいる。

 考えても見ろ、この日だからいいのかもしれない。

 相手がなにもかはまだ分からない、ただの物取りかもしれないし、諜報活動に関わる者かもしれない。

 ただ、少なくともこの家に人間がいるのを知っていて、ブレーカーを落とすという侵入方法を選んできている。もちろん鍵はかけていたから、鍵も破っての事だ。

 おおよそ、好意的な訪問者だとは思えない。

 て、ことは……実力を思う存分に発揮していい相手と言う事だ。

 雪子は唇を舐めた。

 そうだ、父に示そう。自分が真に彼の傍らにいる者としてふさわしい事を。この侵入者を片付け、父に差し出すのだ。

 きっと、喜んでくれる。そして、あの大きくて綺麗な手で自分を……。

 空気が裂けた音がしたのはその時だった。

 雪子の僅か5cm先のカーペットに穴が開く。

 焦げくさい匂いの後に追いかけて来たのは、火薬の匂い。サイレンサーだ!

 雪子は体を真っ二つに折るように身を伏せるとソファーを蹴った。その身は肩の高さほどまでの厚みとなり、スルリ、テーブルの下に滑り込む。

 雪子の影を追いかけるようにその数瞬後、再びカーペットに穴が開いた。

 相手は上にいる。

 照射角度からすぐに相手の位置を計算するも、プロなら打ってすぐに移動する事はわかっていた。

 しかも、相手のこの攻撃は威嚇だ。しとめるのなら二度、続けて打ってくる。その方が殺傷率が格段に上がるからだ。

 カーテンが揺れる気配がした。

 もう、相手は気配を殺そうとはしていない。こちらの力量を見極めるかのような距離だ。

 窓際に相手が立っている。

 テーブルとの距離は約2m、まだ手足の短い自分には少し骨な距離だ。

 しかし、負ける気は全くしなかった。

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