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「アルト!!私、今日から賢者になる!!」


 そう言って僕の師匠であるメリッサが叫んできた。


「師匠、何度も言ってますよね?扉は静かに開閉して下さいって」


「うっ・・・ごめんなさい・・・じゃなくて!!」


「なんですか?」


「・・・そんな怖い顔しないで・・・・本当に悪かったと思ってるから」


「それなら構いませんが・・・で?なんでしたっけ?賢者になりたいって聞こえましたが?」


「そう!賢者になるの!」


「ちなみに聞きますが、『賢者』がどう言った職種か解ってますか?」


「えっ?賢者って叡智を称えた存在でしょ?」


「間違いではないですが・・・」


 僕は、はぁ…とため息をついた。

 付きたくなったんじゃなくて、実際についた。


 なぜかと言えば、師匠は魔導師だ。

 正確には、『魔女で魔導師』になる。

 何が違うかって言うと、『魔女』はまじないや薬、薬草学に長けた存在になる。

 次に『魔導師』だがこちらは、魔術、呪術、幻術等を修めた者になる。

 そして魔女・魔法使いと言われる存在は総じて長寿だ。


 師匠も既に千歳を越えている。

 そう、魔女・魔法使いと言われる人達は人の姿をした人外だ。

 そんな、膨大な知識を修めてる師匠は『賢者』と言っても過言じゃない。

 寧ろ、賢者と呼ばれる存在よりも賢者だ。


 が、師匠は『賢者』になりたいとか言い始めた。

 バカなんだろうか??

 前から専門的なこと以外はバカだとは思っていたが・・・まさかここまでなんて思ってなかった。

 これならまだ『料理人になりたい!』とか言い出した方がましだ。


 因みに、師匠は衣食住の衣以外はてんでダメだ。

 一人で生活出来ない。ほっておけば、ここは腐海になるだろう。

 てか、僕が来るまで腐海だった・・・。

 思い出しただけで鳥肌が・・・・・。


 まぁそれは置いておいて、先の言葉の通り師匠は賢者になりたいらしい。


「それで、賢者になりたい師匠はどうやって、賢者になるつもりですか?」


 まぁ最もな事を言う。

 どうするつもりなのか?


「今、私って魔女で魔導士なわけでしょ?だからね、錬金術を極める事にしたの!」


「因みに何で錬金術になるんですか?」


「え?錬金術って真理に近いでしょ?理を理解することは賢者の必須科目だと思うの!」


「まぁ・・・言いたいことはなんとなく分かりますが、十分今でも理に近い所に居るじゃないですか。第一、錬金術って何かを生み出すことに長けているんですよ?ちゃんとした分量を量ったり、混ぜたりするんですよ?料理が出来ない師匠には致命的だと思うんですけど?」


「うっ・・・・そうか・・・錬金術って料理に似てる所があった・・・・」


 と、師匠と僕は言っているが、薬学も量ったり混ぜたりする。コレは内緒だ。

 気が付かないままならそれに越したことはない。

 面倒だから。

 それでもまだ諦め切れないのか、未だにうんうん唸っている師匠を見つめる。


 本当にこの人は昔から変わらない。

 そう、昔から。


「はっ!!!そうだ!賢者って周りから認められるには、それなりの功績を残せばいいよね!魔導士が賢者を兼任してた時代があったわけだし!」


 ・・・・なんだか話がイヤな方向に向かって行く。


「何らかの功績っていえば、魔王退治とかだよね!よし!魔王を倒そう!」


「師匠!話が飛躍過ぎます!!第一、魔王は随分と前に滅ぼされてます!」


「あれ?そうだっけ?でも、その後直ぐにまた魔王が現れたよね?」


「まぁ・・・そうですね。正確には、『魔王を倒した勇者が魔王に転職』したんですけど」


「なんで?」


「人間の心理と言ったものでしょうね。魔王を倒した勇者は、魔王よりも強いわけですよ。表向きは英雄と呼ばれますけど、国王以下国民まで次に支配するのは勇者じゃないか?って思ったんでしょ。今度は勇者に刺客が向けられたわけですから、勇者なんてやってられないでしょう。それに勇者も人間ですからもう既にこの世にはいません。因みに、勇者に乞われてちょこちょこ助言してましたよね?師匠」


「・・・・そうだっけ?随分前の事だから・・・記憶にございません」


 そうだと思いました・・・。

 だってその事を僕が知っているのを不思議がらないほどですから・・・。


「じゃぁ現在、魔王は不在?」


「そうですね」


「でも、魔物はいるよね?それに魔族も」


「居ますね、現在はお互いの領土を不可侵とすることで魔族との争いはありません。魔物は別ですけど」


「じゃあ魔物退治をしよう!ついでに世界を見て回ろうよ!ここ最近は家に引きこもってたし」


「その提案に乗るのは些か不満ではありますが、脱・引きこもりには賛成です」


「なら、決定だ!まずは手始めに冒険者になろう!」


 こうして、僕と師匠は住み慣れた家を離れて冒険者をすることになった。


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