#99 一方、蟹狩り
・・・ここはいったいどこ?せせらぎの音で目を覚ますと辺りには船員さん達もいた。どこかの島に漂着したと思っていたけどどうも違うみたい。空に限りがありその外周状には魚が泳いでいたのと辺りは全く見慣れない光景が広がっていた。とりあえず状況を整理しよう。確か私達はヒルドリアを探すために航海していたはず。その途中でソールとキュミーとはぐれてしまって、その後船そのものが・・・
「あっ!そういえばブレインペアレンツ号は!?」
私や船員さん達がここにいるならどこかに船があるは、・・・遠くに真っ二つに折れて浜辺に打ち上げられているのを確認した。同時にシーウェーブさん達も発見し駆け寄る。何かが擦れた後とか外傷が多少あったのでシーウェーブさん以外に回復術をかける。全員に処置を施したところで若干砂浜に埋まっていたシーウェーブさんが起き上がってきた。
「な、なんだぁ・・・砂だらけじゃねぇか」
「良かった目が覚めたんですね」
「おぉウェルンちゃんか。そうか俺には回復術かけられないからなしょうがないわな」
「見たところどこかに漂着したみたいで...」
「うん?見たところ地上ではないしここが海底ってところか?」
流石はシーウェーブさんだ。そう言われると確かにここが海底という場所な気がしてきた。応急処置も終わりベルさんとネモも意識を取り戻した。身体を起き上がらせたので今分かったことを説明していく。
「とりあえずここなら食い物には困らねぇだろうからな。ここを拠点にしつつ周辺を調べに行くのがいいか?」
「私も賛成です。幸いにも意識を失って身体が休まったようなので私は行けますね」
「ああ言われてみればみんな顔色良くなってるもんな。よしじゃあとりあえずシーウェーブ達にここら一帯の整備してもらってる間に3人で探索しに行くか」
「もしかしたらソールとキュミーもどこかにいるかもしれないからね」
「それでは参りましょうか」
私達3人は森林地帯らしきところへと足を踏み入れていく。辺りの木に見える何かは触ってみるとそれこそサンゴのような手触りをしている。そこから生えている葉っぱのようなものは乾燥した海藻のような感じがした。特に魔物や魔獣が出てくる気配はないのでどんどんと進んでいく。視界が晴れクレーターのような場所に辿り着いた。その中心には朽ちた船がありその辺りには少し大きめのカニがたくさんいた。
「ここら一帯だけなんでか森じゃないんだな」
「そうですねまるであの船がここに落ちてきたような」
「ちょっと調べてみようよ、それとあのカニもしかしたら・・・」
「そうだな、あれだけたくさんいればしばらく食糧にも困らないかもしれないな。まぁそれとは別にあのカニが拠点まで来たらめんどくさいからな」
各々が戦闘態勢を整えていく、いつもと違って人数が少ないけどあれぐらいなら倒せるはずだ。ベルゴフさんは1人で飛び出していく。私はネモと一緒に別の方向に飛び出してクレーターを滑りながら聖術を形成していく。
「{バーティカルライト}!」
「{ソニックアロー}!」
2人で息を合わせて同じ敵を狙って1匹ずつカニを倒していく。なんでここまで息が合うのかというと2人だけで接敵する可能性も考慮してあらかじめ合図を決めていたのだ。私が{バーティカルライト}の形状を変えて剣にした際に剣先が向いている敵に攻撃をする。私の聖術は誘導性が高く回避をしたとしても隙が生まれやすいのでそこをネモに狙ってもらうのだ。と次々と倒していると朽ちた船の名からわらわらとカニが出てきた。
「流石に多くない!?」
「ですね想定以上に多いですね。ウェンもう少しペースを上げるよ!」
「うん任せて!」
と意気込んだが急に目の前から大きな音と土埃が上がった。そういえば私達のパーティで一番強い人がいるのを忘れてた。ベルゴフさんは正直いつも手を抜いているようにも見えるぐらいにいつも余裕がある。
「いやー意外と硬くないもんだな。おかげで加減が難しいのなんの」
「にしてもやりすぎですよほとんど粉々じゃないですか!」
「カニがもったいないよ・・・」
「うっ...まぁまぁ怪我がなくて良かったじゃないかガッハッハッハ!」
加減のことを考えるのがめんどくさくて大雑把に攻撃してしまうことがたまにキズかもしれない。確かかなり前に斧を使わずに薪を手刀で作ろうとして粉々にしていたのを思い出す。本人曰く力加減は出来てもどうも闘気は込める量が難しくどうしても過剰になってしまうらしい。
「にしてもカニが出てきすぎじゃないか?いったいこの中には何があるってんだ?」
「この船かなり立派ですよね。それこそ私達が乗っていたような王家の船のようにも、」
「ねぇあそこに見える旗ってもしかしてヒルドリアの旗じゃない?」
私が指を差す先には過去に見てきた、王家の紋章に似た刺繍が施されたボロボロな水色の旗が掲げられていた。まだ日も高いので私達は船内の探索をすることにした。船底の横穴から中に侵入していくとそこには赤グロく脈打つおぞましい光景が広がっていたのだ。
「なにこれまるで身体の中を通ってるみたい」
「そうですね、これはおそらく相当巨大な魔物によって中を魔力で汚染されたと言ったところですかね?」
「今のところ気配は感じねぇが気をつけろよ嬢ちゃん達。あちこちから魔力を感じて流石に気味が悪いからな」
慎重に進んでいくがベルゴフさんの言う通り何かに襲われることはなかった。だが道中身体を喰われた形跡のあるフィンシー族の死体が道端に転がっていた。先程船から出てきた私はカニを食べる気が少し失せた。
「そこの道の先に気配を感じるが生きてるのかこれ?」
「どういうことですか?」
ベルゴフさんと共に開けたところに辿り着くと壁に括りつけられた。すでに力尽きているように見えるフィンシー族がいた。その真ん中には黄緑色の液で満たされたポッドのような中に手首を触手で縛られた男性。だがそれ以上にこの空間は私にとっては刺激的かもしれない。だって周りにいる男性も真ん中の人も服を着てないんだもん!ネモも顔を背けているしこれはしょうがないことだよね!




